透明性GL 情報開示後の疑念の高まり 医師側に懸念も 日本医学会シンポで
公開日時 2012/11/26 04:01
日本医学会分科会利益相反会議によるシンポジウム「医学研究における産学連携の透明化とCOIマネージメント」が11月22日、日本医師会館で開催され、日本製薬工業協会が策定した「透明性ガイドライン」(GL)の運用も焦点となった。GLに基づく情報開示は13年度から行われ、製薬企業に対する同会議の調査によると、12年度決算から半年以内の開示が回答63社中50社。しかし、シンポジストほかフロアの医師からは、GLでは製薬企業からの講師謝礼や原稿執筆料が医師個人毎に開示される方針にあることから、開示後にマスコミ報道などで、必要性が十分に理解されないまま、製薬企業と医師との関係に疑念が高まることを懸念する意見も出た。
シンポジストの川崎医科大学の加来浩平糖尿病・代謝・内分泌内科教授は、GLに対し業界の自主基準という位置付けだが、実施による影響は個々の医師に活動に及ぶことから、医療者・研究者側との共同策定すべきものと指摘し、「一方的かつ拙速に策定」したと強く批判。さらに、医師個人毎の講師謝礼などの情報も利益相反状態の有無に関係なく開示する内容だとして「COIマネジメントの概念から逸脱している」とも指摘し、GLの「実効化は一時凍結すべきである」と訴えた。同教授は、有識者を交えた第3者機関により議論し、GLを策定することを求めた。
フロアからは2人の医師が意見を述べ、透明性の流れは止められないとしながらも、特定の製薬企業と特定の医師の経済的つながりが注目され「学会の医師がマスコミの餌食」になった場合の対応に苦慮していることや、「興味本位で取り上げられ、ネガティブに広まっていくことを懸念している」との意見が上がった。
それらを受けフロアで傍聴していた日本製薬工業協会の仲谷博明専務理事が発言を求め、新薬を研究・開発していくには産学連携が必要であり、一定のルールに基づき対価の支払いをしていることを、一般の人たちにも理解を促すため、来春から全国紙などで広報していくことを説明、理解を求めた。
日本医学会の曽根三郎利益相反委員会委員長は、日本医学会、日本医師会、全国医学部長病院長会議、日本製薬工業協会の4者によって互いの考えや取り組みの理解を共有する場を持ちたいとの意向を表明した。終了後、曽根委員長は、本誌に「透明性の確保の必要性は異論はない。ただ、お互いにGLの意義や内容について十分に情報共有してこなかったことから、不信や懸念が生じている。できるだけ共有をし、透明性を確保し、良い研究をし、良い薬を社会に還元できるようにしていなかなければならない」と話した。