ノバルティス ルセンティスで効能追加を申請 RVOに伴う黄斑浮腫による視力障害などで
公開日時 2012/10/30 04:01
ノバルティス ファーマは10月29日、加齢黄斑変性症治療薬ルセンティス(一般名:ラニビズマブ(遺伝子組換え))について、▽網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫による視力障害▽病的近視に伴う脈絡膜新生血管による視力障害――に関する効能追加を申請したと発表した。いずれも承認されれば、薬物療法では国内初の適応となる。ルセンティスは遺伝子組み換え技術により創製された抗VEGFヒト化モノクローナル抗体のFab断片。
網膜静脈閉塞症(RVO)は、網膜の静脈が血栓で詰まることで血管内の圧力が上がり、網膜内に血液成分が漏れ出して浮腫や出血が起こることで視力が突然低下する眼疾患。「目の脳卒中」とも呼ばれる。発症率は40歳以上の2~3%とのデータもある。血液成分が漏れ出す原因のひとつとして、血管の透過性を強力に亢進させるタンパク質の一種であるVEGFの関与が考えられている。
静脈が詰まった場所によって、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)と網膜中心静脈閉塞症(CRVO)の2種類ある。レーザー光凝固療法や手術療法などが世界的に行われているが、治療効果が確立されているのは、BRVOに伴う黄斑浮腫に対するレーザー光凝固療法だけ。CRVOに伴う黄斑浮腫では「効果が確立された治療法は国内外ともにない」(同社)という。
一方、病的近視(PM)は、眼底までの奥行が異常に長く伸びることによって強い近視となるだけでなく、進行すると眼底出血による視力障害などが現れる状態のこと。PMでは、網膜が薄く引き伸ばされることや、それによって網膜に切れ目ができるなどして、異常な血管である脈絡膜新生血管(CNV)が発生する場合がある。このCNVが発生すると、最終的に失明に至る場合もあるが、現在は国内外ともに確立した治療法はないという。PMでCNVが発生する原因のひとつに、強力な血管新生作用を示すVEGFの関与が考えられている。
これら病態に対してルセンティスは、VEGFの血管透過性亢進作用を阻害し、RVOにおける網膜の静脈からの血液や血液成分の漏出を抑制する。また、VEGFの血管新生作用を阻害することで、PMにおけるCNVの発生や進展を抑制する。