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【ESMO特別版】BRAF変異の進行メラノーマ BRAF阻害剤とMEK阻害剤の併用有用性示す

公開日時 2012/10/04 05:50

BRAF変異を有する進行メラノーマでは、BRAF阻害剤dabrafenibとMEK阻害剤trametinibの併用により、無増悪生存期間(PFS)の中央値が有意に延長することGeorgina.V.Long氏が分かった。それとともに、BRAF阻害剤の有害事象である発がん毒性が低減することも分かった。同剤の無作為化臨床第2相試験の結果から示された。9月27日~10月2日までオーストリア・ウイーンで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO2012)で9月28日に開かれた、「Preferred Paper Session(Melanoma)」で、Melanoma Institute Australia/ The University of Sydney Westmead HosptalのGeorgina.V.Long氏が、発表した。(医学ライター/リポーター 中西美荷)


◎ MEK阻害剤 増殖シグナル伝達の出口を遮断


進行メラノーマのうち、BRAF変異陽性例は約半数を占めるとされている。BRAFは、転写や細胞増殖、細胞死の抑制など、さまざまなシグナル伝達にかかわる蛋白である“RAS”の下流にある。活性化したRASは、RAFと会合し、下流のMEKをリン酸化して活性化。さらに下流のERKをリン酸化して活性化することで、増殖、生存、浸潤、転移などのシグナルが伝達される(RAF経路=MAPK経路)。BRAFの変異によって、シグナルが恒常的に異常に活性化され、伝達され続けることが、腫瘍増殖の原因と考えられている。


試験では、BRAF阻害剤とMEK阻害剤trametinibの併用により、BRAFに加え、より下流にあるMEKを同時に阻害してシグナル経路の出口を塞ぐことで、さらなる治療効果を得ることの有効性・安全性を検討した。


対象は、脳転移を有する場合は3カ月以上安定しているBRAF変異陽性の転移性メラノーマ患者162例。BRAF阻害剤とMEK阻害剤未治療で、既治療は1ライン以下とした。①dabrafenib150mg1日2回単剤治療群(以下、単剤群)54例②dabrafenib150mg1日2回+trametinib 1mg1日1回群54例(以下、trametinib1mg併用群)③dabrafenib150mg+1日2回+trametinib 2mg1日1回群(trametinib 2mg併用群)54例――の3群に無作為化して、治療効果を検討した。主要評価項目は、臨床効果(無増悪生存期間(PFS)、奏効率(OSS)、奏効期間(DoR))と、発ガン毒性(皮膚の扁平上皮がん[cuSCC]発生率)とした。副次評価項目は、他の安全性指標と全生存期間(OS)を検討した。なお、単剤群は、増悪後にtrametinib 2mg併用群へのクロスオーバーを可とした。


◎PFSはtrametinib 2mg併用で41%に


追跡期間(中央値)14カ月におけるPFS(中央値)は、単剤群で5.8カ月に対し、trametinib 1mg併用群で9.2カ月(単剤群に対するHR:0.56、95%CI:0.37-0.87、p=0.005)、trametinib 2mg併用群では9.4カ月(HR:0.39, 95%CI:0.25-0.62、p<0.0001)と有意に延長した。また12カ月時点での無病悪生存率(PFS)は、単剤群の9%に対し、trametinib 1mg併用群26%、trametinib 2mg併用群41%だった。


OS(中央値)は3群ともに未達で、有意差は認められなかった。ただし、単剤群では80%(43例/54例)がtrametinib 2mg併用群にクロスオーバーしている。なお、trametinib 2mg併用群の12カ月時点のOSは79%だった。


奏効率(ORR)は、単剤群で54%(29例)、 trametinib 1mg併用群では50%(27例)、trametinib 2mg併用群では76%(41例)で、2mg併用群は単剤群に比べ、有意に高い結果となった。奏効期間(DoR)も単剤群の5.6カ月(95%CI:4.5-7.4)に対し、trametinib 2mg併用群では10.5カ月(95%CI:7.4-14.9)で、延長がみられた。また、trametinib 2mg併用群ではPD(進行)が1例もみられなかった。


◎皮膚毒性低率も発熱は高率に


発がん毒性(皮膚毒性)であるSCC/ケラントアカントーマ発現率は、単剤群19%(10例)、trametinib 1mg併用群で2%(1例、p=0.004)、2mg併用群では7%(4例、p=0.009)で、trametinib併用により有意に抑制されていた。すべてのグレードで20%以上に発現した副作用として、最も頻度が高かったのは発熱(38.5℃以上)で、単剤群では23%だったのに対して、併用群では60%以上報告された。


Long氏はBRAF阻害剤、MEK阻害剤併用療法について、有効性の高さを強調した上で、「単剤と比べ、抗腫瘍効果を増大させ、特異的な発がん性有害事象を減少させた初のキナーゼ2剤の併用療法」と結論付けた。有害事象については、発がん毒性(皮膚毒性)の原因がBRAF阻害時に認められるMAPK経路の逆説的な活性化にあると指摘。MEK阻害剤の併用により、この活性化を抑制することで、副作用が低減したとの考えを示した。ただし、発熱については副腎皮質ホルモンの投与による対処、予防が可能だったとした上で、今後、作用機序について検討していく必要があるとの考えも示した。


なお、現在、単剤群とtrametinib 2mg併用群の安全性・有効性を比較・検討する臨床第3相試験が進行中。また、進行メラノーマの標準療法であるベブラフェニブとtrametinib 2mg併用群を比較する臨床第3相試験も患者登録中という。

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