【ASCO特別版】TORG0809 第II期から第IIIA期の非小細胞肺がんの術後療法 ドセタキセル+シスプラチン併用後のS-1の維持化学療法は忍容可能
公開日時 2012/06/06 06:51
完全に切除した第II期から第IIIA期の非小細胞肺がん(NSCLS)において、ドセタキセル(DOC)とシスプラチン(CDDP)併用後に、維持化学療法として経口抗がん剤のS-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)を投与する治療戦略の実現可能性を検討した結果、予め設定した完遂割合には到達しなかったものの、毒性は忍容可能なレベルであることがわかった。国立がん研究センター東病院呼吸器腫瘍科呼吸器内科病棟医長の仁保誠治氏らの研究グループが実施した臨床第2相オープンラベル多施設試験「TORG0809」の結果、明らかになった。6月1日から開幕した米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)のポスターセッションで、3日報告された。
DOC とCDDPの併用は、第II期と第IIIA期のNSCLSに対する術後補助化学療法として、臨床第2相無作為化試験TORG0503で検討されており、カルボプラチンとパクリタキセルの併用を上回る2年間無再発生存を示している。今回の試験は、同併用の治療効果をさらに高めるため、同併用後に維持化学療法としてS-1を導入し、実行可能な治療法であるかどうかを検討したものだ。S-1は、進行性NSCLS患者の一次治療として単剤療法を検討した第2相試験で22%の奏効率を示しており、またカルボプラチンとの併用では、パクリタキセルとカルボプラチンの併用に対して非劣性を示している。
対象は、20~74歳の完全に切除した第II期~第IIIA期のNSCLS患者129例。ECOG PSが0~1で、術後10週間以内であることを登録条件とした。
DOC(60mg/m2、1日目)とCDDP (80mg/m2、1日目)の同時併用を3週か4週おきに投与するサイクルを3サイクル行った後、維持化学療法としてS-1(体表面積に合わせ40mg~60mg、bid、14日間連続投与)を3週1サイクルとして、6ヶ月以上(最高1年)投与した。
同治療法が実行可能かどうかは、治療の完遂割合により定義することとし、95%信頼区間(CI)の下限が50%以上に至った場合、実行可能とした。また治療中止の基準は、再発、DOC+CDDP併用終了後8週間以内に維持療法を開始できなかった場合、維持療法の遅延が4週間を上回る場合、忍容不可能な毒性、患者による治療の拒否とした。
年齢(中央値)は63歳、64%が男性で、83%がECOS 0、62%がIIA期、25%がIIB期、13%がIIA期、78%が腺がんであった。
S-1維持化学療法の1サイクル目の時点で治療を継続していた割合は82.2%で、3サイクル目では66.7%、6サイクル目には55.8%となり、最終的に完遂できた割合は51.2%であった。この場合の95%CIは42.54-59.79%で、実行可能の定義である下限50%以上は達成できなかった。
治療中止の理由は、再発(DOC+CDDP併用 1例、S-1 6例)、毒性(15例、17例)、毒性による患者の治療拒否(7例、15例)などだった。
DOC+CDDP併用期でグレード3以上に至った毒性は、好中球減少が最も多く78.5%、次いで低ナトリウム血症(17.7%)、食欲不振(16.9%)、下痢(11.5%)、発熱性好中球減少(7.7%)が続いた。一方S-1維持化学療法期のグレード3以上の毒性は、貧血(7.3%)、好中球減少(3.7%)、食欲不振(3.7%)などで、予測より低い割合であったが、グレード1または2の毒性が、治療中止を導いた形になった。
なお、同試験では有効性評価項目として無再発生存(RFS)を設定しているが、まだ追跡期間が短く、イベント数が少ないため、評価には不十分とされた。現在のところ追跡期間は19.1カ月で、1年間RFSは78.2%(95%CI:69.5 – 84.7)、2年間RFSは57.9%(95%CI:46.8 – 67.5)だった。今後も継続して追跡を行うという。
研究グループは、「試験では同治療戦略の実行可能基準を満たすことができなかったが、毒性は忍容可能な範囲だった」とした。その上で、「完遂割合を向上させるには、S-1維持療法の休薬期間を1週間から2週間に延長するなど、投与スケジュールの変更が必要かもしれない」としている。