アバスチン AMD治療で安全性懸念残るも広く使用
公開日時 2012/05/29 04:00
滲出型加齢黄斑変性症(Wet-AMD)に対するアバスチン(適応外使用)では重篤な副作用発現率はルセンティスの32%に比べ、40%と高率となり、安全性に懸念が残っていると報じられた。学術専門誌「Ophthalmology」に2剤を比較、追跡した結果が掲載された。
およそ1000例のアバスチンとルセンティスを比較した試験結果は、NIH(米国立衛生研究所)がスポンサーとなっているCATT Studyと呼ばれ、本来、2剤の有効性を比較するもので、特定の副作用が関係あるかを発見するためではなかった。
しかし、2年間の間にアバスチン治療群では重篤な副作用が40%、ルセンティス治療群では32%の発現となった。1年目はアバスチンが24%、ルセンティスが19%だった。同論文の研究者は、「初年度報告されたアバスチン群の高率な副作用発現は2年度も累積危険度は1.3倍で同程度」と報告したうえで、「全臓器のなかで、2剤の間で最も安全性での不均衡があるのは消化器系だった」と指摘した。さらに、「副作用件数は少ないが、この分野は全身投与アバスチンについても懸念のある領域だった」と分析した。
NIHのプレスリリースは、CATT試験の被験者の年齢(中間値)は80歳以上で入院が高率になったことは、高齢者集団で慢性あるいは急性疾患が通常であることの結果だとしている。しかし、ノバルティスは、リリースで、動脈血栓イベント、全身性出血、うっ血心不全、静脈血栓イベント、血管死などの抗VEGF治療による副作用がアバスチン服用群でしばしば発現した事実を明らかにしている。
ノバルティスの開発担当グローバルヘッドのTim Wright氏は、「このデータは、重篤な眼および全身副作用の全体的リスクが、未承認のベバシズマブ(アバスチン)ではルセンティスに比べて高いことを示唆するエビデンスが増加しているが、それに追加されるものだ」と話している。
両剤については費用対効果も注目されている。両剤の「頓用」(PRN)では、ルセンティスの1か月投与と同じ程度の効果があるとされ、アバスチンはそれほどでもないとされている。ルセンティスは、wet-AMDには月1回投与とラベルに規定されている。しかし、ジェネンテクは、4月にFDAにPRN投与の承認申請を行った。
CATT試験のルセンティスを投与された患者は、PRNとして、初年度は平均7回、2年目は6回の注射を受けていた。初年度ルセンティスで回復した視力は2年目は頓用で維持された。2年目に6回注射したアバスチンのPRNでは視力がわずかに低下した。
ジェネンテクの観察を追跡すると、医師は現在、ルセンティスを月1回投与より少なく処方し、2年間で13回を示している。このことは、実際の治療コストがスケジュール通りの24か月投与より少なくなりことを意味している。薬剤そのものコストは月1950ドルで、これに受診毎の診察料と注射料が加算される。年6回投与とすると年間平均コストは11700ドルとなる。
これでもアバスチンの適応外使用と比べるとかなり高い。アバスチンは薬剤師の調合によるマイクロドースが使用可能で、1ドースあたり僅か50ドルだ。同研究では、アバスチンを必要とした患者はルセンティスよりも2年間で1回以上注射を要し、計14回になったとしている。
CATT試験委員長のDaniel Martin医師(クリーブランドクリニック、コール眼研究所長)は、NIHのリリースで、「アバスチンのPRN治療は、1か月投与よりもやや効果が弱くても患者にそれを止めさせないし、医師の選択を変えさせないだろう」と示唆した。Wet-AMDには、アバスチンが最も広く使用されている。
(The Pink Sheet 5月7日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから