【SABCS速報】DCISスコア年内にも臨床応用へ Oncotype DXで再発リスクを予測
公開日時 2011/12/12 06:00
非浸潤性乳管がん(DCIS)の局所再発リスクを予測する“DCISスコア”が、米国では年内にも臨床応用が可能になりそうだ。多遺伝子検査“Oncotype DX(Genomic Health社)”の12遺伝子を活用する。米国サンアントニオで開催中の第34回サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で8日、Einstein Medical CenterのLawrence J. Solin 氏が発表した。
Oncotype DX(Genomic Health社)は、21遺伝子を解析することで、再発リスクの大きさと、早期浸潤乳癌の術後補助(アジュバント)療法として化学療法を行うべきかどうかを示す検査だ。
DCISは2010年、米国で約4万5000人が診断されている。一般に症状はなく、マンモグラフィーで診断される。乳房温存術が柱で、75%の患者に実施されている。アジュバント療法として、放射線療法(RT)、タモキシフェンの投与が、局所再発リスクを低下させることが知られているが、生存率を改善するというエビデンスはまだないのが現状だ。また、アジュバント療法を行う必要のない患者を選択するための、臨床および病理学的因子は確立されていない。
Solin氏らは、1997年から2000年にかけて行われたECOG E5194試験で、外科的切除(マージン3mm以上)のみを行い、アジュバントRTを行っていないDCIS患者670例(タモキシフェン投与例:228例)での検討から、5年局所再発率が、年齢、グレード、組織サイズによって異なることを報告している。
今回、同試験でOncotype DXを実施していた患者327例(同試験登録数の49%)を、Genomic Health社が開発したDCISスコアにより、低リスク、中等リスク、高リスクの3段階に分類。同側乳房イベント(IBE)との関係から、DCISスコアの妥当性を検証した。追跡期間(中央値)は8.8年だった。
◎DCISスコアとIBE率に有意な相関
IBEは46例(同側のDCIS局所再発:20例、浸潤性乳がん:26例)に発生した。10年IBE率は、中央施設での病理レビューによって評価した低/中等リスクでは15.4%だったのに対し、高リスクでは15.1%だった。浸潤性IBE率はそれぞれ5.6%、9.8%だった。各施設での実施と専門家によるグレード評価には、不一致が認められたという。
DCISスコア別の10年IBE率は、低リスク(246例)で12.0%[95%CI; 8.1- 17.6]、中等リスク(45例)で24.5%[95%CI; 13.8-41.1]、高リスク(36例)で27.3%[95%CI; 15.2-45.9]。
浸潤性IBE率は、低リスク群で5.1%[95%CI; 2.8- 9.5]、中等リスク群で8.9%[95%CI; 2.9- 25.8]、高リスク群で19.1%[95%CI; 9.0- 37.7]だった。タモキシフェン使用あるいは切除マージン陰性の幅を補正すると、DCISスコアとIBEとの間に、有意な相関がみられた(HR:2.34/50ユニット[95%CI 1.15-4.59]、p=0.02)。
また多変量解析でIBEとの相関が有意に認められた因子としては、閉経の状態(HR:0.49[ 95%CI: 0.27-0.90]、 p=0.02)、腫瘍サイズ(HR :1.52/5mm[95%CI:1.11-2.01]、 p=0.01)、DCISスコア(HR:2.41[95%CI: 1.15- 4.89] p=0.02)であった。
◎Solin氏 「DCISスコアは個別化治療に有用な新たな臨床ツール」
Solin氏は、「DCISスコアで3/4を占めた低リスク患者で、不要な放射線療法を避けることが可能になる。一方、高リスク患者に対しては、アジュバント療法として放射線療法やタモキシフェン投与を行うなど、より積極的な治療を考慮すべき」と述べ、DCISスコアを活用することで、リスクに応じた治療法選択が可能となることを強調した。ただし、中等リスクの患者に対する治療方針はまだ明確になっておらず、今後の課題とした。
その上で、「DCISスコアは、DCISの再発リスクを識別しうる初めての多遺伝子検査であり、DCISの個別化治療において、新たな臨床ツールになりうる」と結論付けた。