武田薬品は11月４日、2012年３月期第２四半期（４－９月）決算を発表した。主力品の日本市場の通期売上計画を修正し、２型糖尿病治療薬でインスリン抵抗性改善薬アクトスは期初計画に対して100億円減の売上340億円を目標に再設定する一方、DPP-4阻害薬ネシーナは期初計画に対して90億円増の売上165億円を目標に掲げた。糖尿病治療のパラダイムシフトが起こっていることを印象付けた格好だ。

アクトスは６月に後発品が国内初上市されたことに加え、同月に因果関係ははっきりしないものの、膀胱がんリスクとの関連性が指摘された。アクトスにとってはいずれもネガティブな影響があり、第２四半期までの国内売上は前年同期比22.3％減の189億円となった。一方、新規機序の２型糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬には４成分が上市され、市場競争も激化している。ネシーナの第２四半期までの国内売上は53億円となった。同社は「アクトスでマイナス100億円だから、ネシーナでプラス90億円という意味ではない」とし、アクトスにマイナス影響が見られ始める一方で、医師の治療の選択肢としてDPP-4阻害薬の存在感が増したためと説明した。

◎国内のタケプロン好調　低用量アスピリンとの併用可も後押し

また、国内の医療用医薬品事業の売上高は2960億円で前年同期比4.4％増だった。ネシーナや抗がん剤ベクティビックスといった前年に新発売した製品群が好調だったほか、低用量アスピリンとの併用が可能になった抗潰瘍薬タケプロンが前年同期比10.3％増と２ケタ成長したことも大きかった。タケプロンの売上は376億円、通期では770億円を見込む。なお、ARBブロプレスは、単剤は約９％の減収となる一方、配合剤は２倍増だった。

そのほか、今後数年間に承認を計画している主なパイプラインも公表し、日本市場については、▽糖尿病治療薬のグルコース依存性インスリン分泌促進薬TAK-875が2015年度中に承認取得▽酸関連疾患に用いるカリウムイオン競合型アシッドブロッカーTAK-438が13年度中に承認申請、14～15年度に承認取得▽多重作用メカニズム型抗うつ薬LuAA21004が13年度中に承認申請――としている。

◎ナイコメッド買収完了　武田薬品の製品を新興国に投入

同社の連結業績は為替円高による売上の目減りが大きく影響して減収減益となった。通期予想もこの日、円高や９月末に完全子会社化したナイコメッド社の買収影響を加味した数値を公表した。買収に伴う各種会計処理で２ケタ減益を見込むが、武田薬品はナイコメッド社買収で欧州市場と成長著しい新興国市場の事業基盤を得た。ここに武田薬品の胃食道逆流症用薬TAK-390MRや降圧剤TAK-491、ネシーナ、前立腺がん治療薬TAK-700、腎性貧血用薬peginesatide――などを投入することで、2014年度頃から少なくとも年間300億円のコストシナジーを実現できると説明した。

【連結業績（前年同期比）　通期予想（前年同期比）】
売上高7025億200万円（1.6％減）　1兆5400億円（8.5％増）
営業利益2110億4600万円（4.8％減）　2700億円（26.4％減）
経常利益2095億5100万円（7.1％減）　2700億円（27.3％減）
純利益1356億6000万円（5.9％減）　1700億円（31.4％減）

【国際戦略製品売上高（10年度実績） 通期予想（10年度実績）、億円】
ピオグリタゾン1710(1956) 3170 (3879)
ランソプラゾール623(752) 1210 (1336)
カンデサルタン1123(1089) 2180 (2180)
リュープロレリン609(560) 1180 (1164)

【国内売上高（10年度実績）　通期予想（10年度実績）、億円】
ブロプレス709(677) 1440(1380)
　うち、エカード64(44) 130(104)
　うち、ユニシア77(10) 195(47)
タケプロン376(341) 770 (709)
リュープリン338(326) 665(659)
エンブレル208(184) -(384)
アクトス189(244) 340 (479)
ベイスン136(169) 260(322)
ベネット87(88) 170(176)
ベクティビックス81(22) 165(94)
ネシーナ53(11) 165 (16)
乾燥弱毒性麻しん風しん混合ワクチン「タケダ」51(50) 75(83)
セルタッチ41(46) 85(87)
ロゼレム9(5) 30(10)
レミニール9(-) -(5)
注）アライアンス先の開示方針により一部非開示。