メディパルHDとシミック オーファンドラッグ扱う合弁会社 12年6月に設立
公開日時 2011/10/24 04:02
医薬品卸最大手のメディパルホールディングスとCRO最大手のシミックは10月21日、オーファンドラッグの製造販売業を営む合弁会社オーファンパシフィックを2012年6月に設立することで合意したと発表した。合弁会社は製造販売承認を保有し、これに基づく製造販売薬事業務や営業販売管理業務を行うが、実質的な開発・申請・承認取得・製造などはシミックグループに、販売・流通などはメディパルグループにそれぞれ委託する。
また、合弁会社では他社のオーファンドラッグの販売受託事業も展開する。シミックの中村和男社長はこの日の会見で、「(一般的にオーファンドラッグは)製薬メーカーによる既存スキームでは赤字ビジネスだが、このスキームであれば利益が出るのではないか。社会貢献に加え、当社は製薬メーカーの価値最大化を考えている」と話した。
◎MR資格持つMSを活用 ビジネス黒字化の一助に
合弁会社の資本金は1億円。出資比率はシミックが51%、メディパルが49%。代表者は未定。収益確保が難しいとされるオーファンドラッグだが、この新しいビジネスモデルによって合弁会社設立4年目には黒字化を達成させる計画だ。
シミックは現在、▽急性ポリフィリン症治療薬ヒトヘミン(一般名、国内患者数約40~50人)▽尿素サイクル異常症治療薬フェニル酪酸ナトリウム(同、約200人)▽遺伝性血管性浮腫治療薬エカランタイド(同、約1000人)――の3品目を開発中で、2012年上旬~13年に承認申請する予定。これら3品目の承認取得後の販売・情報提供・市販後調査・流通管理などはメディパルが担う。
メディパルにはMR資格を持つMS(同社では“AR”(=Assist Representatives)と呼称)が約100人いる。メディパルHDの熊倉貞武社長は会見で、「今回のビジネスモデルを考えたのでARを作った。ARはMR活動とMS活動の両方ができ、コストの柔軟性が高い」と述べ、ARの存在が今回のビジネスモデルが成立する工夫のひとつとの考えを示した。一般的に製薬メーカーに比べて医薬品卸の人件費が安いことも念頭にあったのかもしれない。
また、熊倉社長は、「(医薬品卸にとって)新薬創出加算品のようなスペシャリティ製品は収益の足を引っ張っていたが、今回のビジネスモデルでは逆に収益を生むという変化は大きい」「オーファンドラッグを全ての医薬品卸が扱って、価格競争というのは無駄な話。当社1社だけの流通であれば価格競争は起きず、薬価も維持できる」とも語った。合弁会社の仕切価戦略は不明だが、今回のスキームによって収益を確保でき、オーファンドラッグの安定的な供給が確保されるとの見方を示した。