透析患者にTAXUS使用でMACCEの発生頻度を減少
公開日時 2011/09/14 04:00
多施設レトロスペクティブ試験 KCJL HD-レジストリーの結果から
透析患者での経皮的冠動脈ステント留置術(PCI)での薬剤溶出ステント(DES)選択では、第2世代パクリタキセル溶出ステント(TAXUS)を使用すると、他のDES使用時に比べて、主要脳心血管イベント(MACCE)の発生、とりわけ標的病変再血行再建術(TLR)の施行を減少させる可能性がある。近江八幡市立総合医療センター循環器内科副部長の全完氏が、多施設レトロスペクティブ試験KCJL HD-レジストリーの結果を7月23日、「Late Breaking Clinical Study 」セッションで報告した。
KCJL HD-レジストリーは、2008年1月~11年3月まで関西地区の13施設から、文書同意を得た20歳以上のPCI適応の冠動脈病変を有する維持透析患者(腹膜透析を含む)252例、466病変を対象とした。
ステント別では、シセロリムス溶出ステント(SES)53例134病変、第一世代パクリタキセル溶出ステント(PES-E)26例74病変、第2世代パクリタキセル溶出ステント(PES-L)44例104病変、ゾタロリムス溶出ステント(ZES)17例42病変、エベロリムス溶出ステント(EES)35例75病変、ベアメタルステント(BMS)20例34病変、2種類以上DESおよびDES+BMS57例。
患者背景は、高血圧合併率がZES群、糖尿病合併率がPES-E群、末梢動脈疾患罹患率がPES-E群とPES-L群で、それぞれ有意に高かった。また、アンギオグラフィの評価で20mm以上の冠動脈病変保有率がPES-L群とZES群、石灰化病変保有率がPES-L群で有意に高く、さらにステント加圧はPES-E群で有意に低値、ステント径では2.5mmがSES群、EES群で有意に高率、総ステント長はPES-L群、BMS群で有意に短かった。
PCI成功率はSES群97.0%、PES-E群97.3%、PES-L群93.3%、ZES群97.6%、EES群92.0%、BMS群97.1%で、各群とも90%を超えていた。
全氏「透析患者でのMACCE、とりわけTLRを減少させる唯一のステント」
MACCE発生率はSES群46.3%、PES-E群40.7%、PES-L群22.7%、ZES群31.3%、EES群40.0%、BMS群55.0%で、PES-L群は最も低率で良好な結果であり、SES群(p=0.015)、BMS群(p=0.02)との比較で有意に低率だった。
二分化再狭窄率はSES群31.8%、PES-E群33.3%、PES-L群17.5%、ZES群21.6%、EES群25.7%、BMS群46.9%で、最も低率なPES-L群はSES群(p=0.013)、PES-E群(p=0.017)、BMS群(p=0.0007)と比べて有意差が認められた。
また、TLR施行率はSES群27.1%、PES-E群23.2%、PES-L群10.7%、ZES群21.6%、EES群22.9%、BMS群43.8%で、最も良好な結果が出たPES-L群は、ZES群以外のSES群(p=0.0018)、PES-E群(p=0.027)、EES群(p=0.03)、BMS群(p<0.0001)に比べて有意に低率。さらに標的血管再血行再建(TVR)施行率でもSES群31.8%、PES-E群29.0%、PES-L群17.5%、ZES群21.6%、EES群25.7%、BMS群46.9%で、PES-L群はSES群(p=0.013)、BMS群(p=0.0007)と比べ有意に低率だった。
これらのことから全氏は「レトロスペクティブな研究で、症例数も少なく、患者背景のバラツキもあるものの、PES-Lは透析患者でのMACCE、とりわけTLRを減少させる観点からは、唯一選択できるステントであることを示唆している」との見解を示した。