ファイザー エスタブリッシュ医薬品事業 1000人体制で7月から本格始動
公開日時 2011/06/28 04:02
ファイザーは6月27日、長期収載品と後発品で構成する「エスタブリッシュ医薬品」の事業部門を7月から約1000人で組織し、エスタブリッシュ医薬品の情報提供活動をインターネットによるe-ディテーリングとMRの双方で積極的に展開していくと発表した。エスタブリッシュ医薬品の情報活動はコスト効率の観点から、多くのMRを介さない情報活動を模索するのが一般的。これに対して同社は▽長期収載品の競争力の最大化▽後発品上市時のディテール数の確保――に加え、長く市場で使われているエスタブリッシュ医薬品であるがゆえに、例えば若い医師に製品情報が十分行き届いていないケースもあるとして、MRによる情報活動のニーズがあると判断した。
同社のエスタブリッシュ医薬品の定義は、「特許期間が満了した化合物で、長期の臨床使用経験に基づき効果と安全性の評価が確立されており、今後も長く使われていく標準的な治療薬」としている。自社の長期収載品と、▽一定の売上規模がある▽処方せん枚数も多い▽臨床医の評価が高い――といった成分の後発品を手掛けて、日本の標準的治療薬をラインアップしていくビジネスモデルというわけだ。7月には長期収載品約80製品に加え、同事業部門初の後発品となるカルバペネム系抗生物質製剤メロペネム点滴静注用の販売も始める。
同社の場合、特許が切れた自社品の収益は、その次の会計年度(ファイザーの場合、毎年12月~)からエスタブリッシュ医薬品事業部門に計上する仕組み。ただ同社主力のCa拮抗薬ノルバスクに加え、同じく主力の高脂血症治療薬リピトールが今年11月に後発品参入が確実な情勢にあるため、7月にMRの事業部門間の異動を行うことにした。このためリピトールも、ひと足早くエスタブリッシュ医薬品事業部門が手掛けることになった。
同社のMRは3000人体制だが、新薬3事業部門(プライマリー・ケア、スペシャリティ・ケア、オンコロジー)やエスタブリッシュ医薬品事業部門のMR数の内訳は非開示。この日の説明会でも7月以降のエスタブリッシュ医薬品事業部門の具体的なMR数は明かさなかったが、同部門でDPC病院を中心に展開中のコントラクトMRと、新薬部門の開業医担当MRの異動により、「GPとHP全てをカバーできる。事業部門全員で1000人体制になる」(松森浩士・エスタブリッシュ医薬品事業部門長:写真)と説明した。この大半がMRとみられる。
◎エスタブリッシュ医薬品 ベテラン医師から若手医師に“匠の伝承”なされていない
松森部門長は説明会で、エスタブリッシュ医薬品におけるMR活動の必要性に触れた。プロモーション活動強化の側面のほかに、「かなり長く使われている医薬品は専門領域の医師であればよくご存知だが、“匠の伝承”というか、使い方のさじ加減をベテラン医師から若手医師に伝わりにくくなっている。“このような時に使用する”ということがわかっていても、実際に使用する際に本当にこれで良いのだろうか、という情報ニーズが若手医師にはある。我々は、まだよくご存知ない医師に情報を伝達する必要がある」と話した。
また、この日の説明会でプレゼンテーションした順天堂大学医学部の小林弘幸教授も、「明らかに20年前と現在とでは医療の忙しさが比べものにならない。上下の医師同士で時間を共有して持てなくなった」「昔は当直の空き時間などにこういう薬はこういう使い方が良いとの話をしていたが、労働基準も大変厳しくなったこともあり、上下の医師の関係が以前に比べて薄くなっている」などと話し、多忙なため医師間の情報交換や情報共有が難しい現状を訴えた。同大の場合、e-ラーニングや日常の診療時に強制的に研修を組み入れるなどして医師の知識レベルの安定化を図っているという。このような自助努力をしているものの、「(エスタブリッシュ製品についても)新薬と同じようにMRによる情報提供があると安心感がある。MRによる情報提供が定期的に行われることは我々には大きい」と話し、エスタブリッシュ医薬品であってもMRによる情報活動は必要との見方を示した。
先発品企業MRの情報活動は新薬に重きを置いており、市場でより長く使われている長期収載品の情報提供はほとんど行っていない。このことも若手医師の情報不足の背景のひとつとの指摘があるが、医学教育の問題と見る向きもある。7月以降のファイザー・エスタブリッシュ事業部門に対する評価や実績が注目される。
【エスタブリッシュ医薬品事業部門で扱う主な長期収載品】
循環器領域
▽リピトール▽ノルバスク▽カルデナリン▽ノルペース▽アルダクトンA▽セーブデンス
感染症領域
▽ユナシン-S▽スルペラゾン▽ダラシンS▽ジフルカン
中枢神経領域
▽ソラナックス▽ハルシオン▽デジレル
ステロイド
▽ソル・メドロール▽ソル・コーテフ
リウマチ領域
▽リウマトレックス