アボットのヒュミラ特許係争勝訴にリリーが基盤固め
公開日時 2011/03/11 04:00
米アボットラボラトリーズとジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)がアボットの抗体医薬ヒュミラ(アダリムマブ)の特許をめぐり争っていた裁判で、米控訴裁判所巡回裁判所は、アボットのヒュミラがJ&Jの特許を侵害したため167億ドルの支払いを命じられていた前判決を覆し、J&Jの特許は無効との判決を下した。
この特許係争では、J&JはTNF-αをバインドする抗体および抗体フラグメントの特許を主張、ニューヨーク大学(NYU)と同社が特許を申請、NYUがJ&J子会社セントコア・オーソ・バイオテクに同特許の独占実施権を供与した。
巡回裁判所は、セントコアがC領域とヒトV領域をもつキメラ抗体(インフリキシマブ)を開発したが、アボットが完全ヒトモノクローナル抗体のヒュミラを発売した後、それについて完全ヒト抗体の主張を行ったと指摘。同裁判所は、「問題は、J&Jの特許がヒトV領域について書面による十分な記述がなかったことで、特許内容について公開していなかったことにある」と指摘した。そのうえで、裁判所は、「完全ヒトTNF-α抗体を持っていたというのは、願望であり、1994年にはセントコアは完全ヒトモノクローナル抗体を発明していなかった」」と結論付けた。
今回、「書面による記述」がポイントとなったが、イーライリリーがRegents of the University of California(RUC)とインスリンを生産するための遺伝子組み換えプラスミドおよび微生物に関する特許係争でRUCが「書面による記述」が不十分だったため、RUCの特許が無効とされ、リリーが勝訴した前例があった。リリーはアボットの今日の勝訴の基盤を作っていたといえそうだ。
(The Pink Sheet 2月28日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから