ファクターⅩa阻害剤・アピキサバン 日本を含む全世界でACSの二次予防開発中止へ
公開日時 2010/11/22 04:02
ファクターⅩa阻害剤・アピキサバンの急性冠症候群(ACS)の二次予防の適応をめぐる開発が、日本を含む全世界で中止となることが本誌取材で明らかになった。同適応をめぐっては、米・ブリストル・マイヤーズ スクイブと米ファイザーが共同開発を進めていた。
米・ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)は、11月18日付で、国際共同臨床第3相試験(P3)「APPRAISE-2(Apixaban for Prevention of Acute Ischemic Events-2)」を中止したと発表した。これは、アピキサバン投与群で出血リスクが高まっていると独立データモニタリング委員会が勧告したことに基づく。
APPRAISE-2・Steering CommitteeのCo-ChairであるDuke Clinical Research InstituteのRobert Harrington氏は、「抗血小板療法を受けている高リスクのACS患者に限り、試験の中止を勧告した」と説明しており、同剤が開発を進める他の適応についての影響はないとの見方を示している。
同剤は、全世界6万人の患者を対象に「EXPANSE プログラム」と名付けた8本のP3を終了、または実施中。心房細動の脳卒中発症予防をめぐっては、2本のP3を実施している。アスピリンと効果と安全性を比較した「AVERROES」がすでに今年8月の欧州心臓病学会(ESC)で結果が公表され、ワルファリンと比較した「ARISTOTLE」も進行中。BMSのBrain Daniels上級副社長も、「我々は他の患者集団での開発は、今後も継続していく」とコメントしている。
◎すでに抗血小板療法を受けているハイリスク患者が対象に
APPRAISE-2は、ACS発症後の患者を対象に、抗血小板療法に、アピキサバンを追加投与することで、心血管死、非致死性心筋梗塞、虚血性脳卒中を予防できるか検討することを目的に実施された。日本を含む世界40カ国で実施し、1万800人を登録目標に、2009年3月から試験をスタートしていた。
対象は、臨床的に安定したACS発症から7日以内の、18歳以上のハイリスク患者。標準療法である抗血小板療法(アスピリン単独、またはアスピリン+クロピドグレル)に、①アピキサバン5mg1日2回群②プラセボ投与群――を追加投与し、効果と安全性を比較する。主要評価項目は、初発のイベント(心血管死亡+心筋梗塞+虚血性脳卒中)までの期間。
日本の開発については、本誌の取材に対し、正式な手続きを経て、開発が中止になることを明らかにした。日本では、欧米と同用量だが、別試験である臨床第2相試験(P2)「APPRAISE JAPAN」を実施中。P3から国際共同臨床試験である「APPRAISE-2」に参画し、患者登録を進めているところだった。今回のデータモニタリング委員会の勧告を受け、P2、P3ともに中止となる。
今後、同社は同試験の解析結果について明らかにする予定としている。