アバンディア 、GSK全世界で販促停止へ 欧米での対応受け
公開日時 2010/09/27 04:00
経口2型糖尿病治療薬アバンディア(一般名:ロシグリタゾン、グラクソ・スミスクライン)について23日、米FDAは処方制限を強化し、欧州医薬品庁(EMA)は同剤の承認取り消しを決定した。同剤は、服用患者での心血管イベントのリスク上昇の疑いが指摘されていた。今回の欧米2当局の決定を受け、グラクソ・スミスクライン(GSK)は全世界でアバンディアの販売促進活動を停止すると表明。07年に表面化したアバンディアに関する問題に一定の結論が得られたことになる。
アバンディアは1999年に発売された。その後、2007年5月21日付のThe NEW ENGLAND Journal Of Medicineに、Nissen氏とWolski氏が連名で発表した42試験を対象にしたメタ解析の結果から、ロシグリタゾンの投与により心筋梗塞の発症リスクが高まると指摘した。これを受けて同年7月末に開催されたFDA諮問委員会では、22対1でアバンディアの販売続行を支持したが、同時に心血管イベントリスクを上昇させる疑いがあるとの黒枠警告を付記することを決定した。
しかし、その後もリスクがベネフィットを上回るのではないかとの指摘は続いた。2010年7月に開催されたアバンディアの安全性を評価するFDAの内分泌代謝薬諮問委員会・医薬品安全性リスク管理諮問委員会合同委員会では、20対12(棄権1)で再び販売継続が支持された。だが、販売継続に賛成した委員でも多くが警告強化を主張しており、FDAの最終判断が注目されていた。
今回FDAは、GSKに対してアバンディアのリスク緩和戦略(REMS)とそれに基づく処方アクセス制限計画の策定を要求することを決定した。具体的には、今後アバンディアの新規投与患者は、同じチアゾリジン系のアクトス(一般名:ピオグリタゾン、武田薬品)も含めたアバンディア以外の薬剤で血糖コントロールが得られない場合にのみ限られることになる。また、こうした新規患者に対してはアバンディアの心血管リスクなどに関する説明を行い、処方同意書の取得が行われることになる見通し。ただ、従来からアバンディアを服用し、血糖コントロールが得られている患者では服用継続が認められる。
一方、FDAはアバンディアには心血管イベントリスクの上昇が認められないとしたGSK主導の長期大規模臨床試験「RECORD」に関して、その内容を再評価するための独立委員会の設置と心血管リスク評価のために実施しているアクトスとの比較対照試験「TIDE」の中止も求めた。
◎欧州では数カ月以内にアバンディアの流通停止へ
これに対して一挙に承認取り消し決定まで至ったEMAだが、過去3年間の臨床試験や既存試験のメタ解析などから「アバンディアは心血管イベントを上昇させ、もはやリスクを上回るベネフィットはない」との結論に至ったとしている。この決定によりヨーロッパ内では数カ月以内にアバンディアの流通は完全に停止される見込み。
EMAは今回の決定について「たとえアバンディアを市場から撤退させることになろうとも深刻なアンメット・メディカル・ニーズを引き起こすことはない」との見解も表明。アバンディアを服用している患者に対して医師と早急に代替治療方策を求めている。
FDAのマーガレット・ハンブルグ長官は、FDAとEMAの判断に相違があったことについて、両規制当局が過去にアバンディアに関して合同の検討委員会を設けてきたことを明らかにするとともに、「EMAにはFDAのREMSのような枠組みはないためだろう」との見方を示している。
合剤を含めたアバンディア関連商品の2009年の全世界での売上高は7億7100万ポンド。このうち1億7100万ポンドがヨーロッパ域内での売上であり、全売上高の22%を占める。
GSKの販促活動停止が出荷停止も含むかどうか現時点では定かではないが、アメリカ市場の動向や第3世界への波及効果なども考えると、アバンディアの大幅なプレゼンス低下は避けられない見通しだ。