安堵できない米ヘルスケア改革 データモニターの医薬品市場分析
公開日時 2010/03/26 04:00
市場調査の英データモニターは3月25日、米国での皆保険を目指すヘルスケア改革法の医薬品市場への影響についての分析結果を、日本法人を通じて発表した。分析したのはヘルスケア部門戦略アナリストのティヤナ・イグニヤトビッチ氏で、短期的にはマイナス、2015年以降は、保険加入者の増加とそれに伴う医薬品消費量の増大でマイナス影響が緩和されると指摘。しかし、医療保険コストの増大に伴う政府の薬剤価格への介入などの可能性もあるとしている。
同氏は、医薬品消費量の増大など改革が業界にプラスとの見方に対し、「短期・長期の不安要素も潜んでいる」との認識を示した。短期的には、「業界コストの上昇に加え、割引やキャッシュバックを余儀なくさせられることで、マーケットの落ち込みにつながる可能性がある」と指摘。それに主力品が相次ぐ特許切れとなる「2010年問題」の減収が追い討ちをかけ、今回の改革は「最悪のタイミング」だという。
15年以降は、保険加入者の増加とそれに伴う医薬品消費量の増大により収益が伸び始めることで「マイナスの影響も緩和される」との見通しを示した。「中期的には恩恵がもたらされる」とはいうものの、政府・保険会社の医療費負担増は、市場全体を抑える力にもなりうるとし「財政を圧迫することになれば、医薬品の再輸入やメディケア・パートDの価格交渉など、業界にとって不利な対策が導入される可能性も否定できない」とした。
ジェネリック市場についても、保険加入者像やコスト抑制へのプレッシャーの高まりでは「大きなプラス」とする一方で、生物製剤には12年という独占期間が与えられたことは懸念事項だとしている。