ノバルティスは、14年までに全世界で1000億ドル超へ市場拡大が見込まれているがん領域への重点シフトを強めている。
同社のがん領域の全世界売上規模は、08年ベースでアストラ・ゼネカと並び約43億ドルで第3位だが、約141億ドルでトップを走るロシュからは大きく水をあけられているのが現状。また、08年の全世界売上高37億ドルである同社の慢性骨髄性白血病(CML)治療薬グリベック(一般名・イマチニブ)が15年には特許切れになるなど、苦戦を強いられるのは確実だが、07年に上市した慢性骨髄性白血病治療薬・タシグナ(一般名・ニロチニブ)やASA40をはじめとする複数の開発中の薬剤により、がん領域強化に努めたい方針。
直近の戦略としては、上市済みのタシグナのCMLでのファーストライン使用と多発性骨髄腫による骨病変や固形癌骨転移による骨病変治療に使用されているゾメタ(一般名・ゾレドロン酸)の特定タイプの乳がんに対するアジュバント使用の適応拡大申請が見込まれている。
タシグナでは、現在の適応がグリベック抵抗性CMLというセカンドラインでの適応で、08年の全世界売上高も8900万ドルとグリベックに遠く及ばない。これらのことから、グリベック対照大規模無作為化比較試験「ENESTnd」での良好な成績などを礎に、早期にファーストライン治療薬に押し上げ、既にグリベック投与を受けている患者からの切り替えと新規患者の取り込みを図りたい考えだ。同時にノバルティスは11月末に米ナスダック上場のInCyte(本社・デラウェア州ウィルミングトン)から現在フェーズ3で骨髄線維症を適応とするJAK1/JAK2阻害薬INCB18424のアメリカ外での開発販売権を取得し、血液がん分野の強化に取り組んでいる。
その一方で巨大市場規模ながら従来同社のプレゼンスが低かった固形がん分野では、07年にイギリスのAntisoma.plc(本社・ロンドン)から導入した小分子血管破壊薬ASA404に大きな期待を寄せている。ASA404は非小細胞肺がんを適応とし、現在化学療法と併用したフェーズ3の「ATTRACT-1」と「ATTRACT-2」が進行中。ノバルティスのオンコロジー事業部のグローバル責任者であるDavid Epstein氏は「ASA404は当社のポートフォリオの中で最も大きな位置づけを占める製品の1つになりうるだろう」との見通しを語っている。
(The Pink Sheet 12月14日号より)