中医協・薬価専門部会 ドラッグラグ解消の手法 薬価維持特例が適切か疑問
公開日時 2009/11/24 04:01
中医協の薬価専門部会が11月20日に開かれ、新メンバーとなって初めて業界提案の薬価維持特例を議論した。業界側はドラッグラグの解消などに向けて維持特例が必要と説明。これに委員からは、ラグ解消の必要性は相次いで表明されたが、▽厳しい医療財政の中で一時的でも薬価が高止まりする維持特例をいま導入する必要性があるのか▽維持特例で本当にラグが解消されるのか――など導入に慎重な意見も相次いだ。遠藤久夫部会長(学習院大教授)は委員の意見を受けて、維持特例による効果や医療費への影響について、「やや不確実性が高すぎる」と述べ、業界に効果や影響を裏付けるものを提出するよう求めた。
新メンバーで発言が注目された診療側の安達秀樹委員(京都府医師会副会長)は、「ラグ解消の必要はわかる」と述べたが、「(維持特例は)治療薬がいま必要な人が負担する仕組みだが、健康な人も一定の確率で罹患する可能性もある。国の基金でラグなどに対応するのが正しいのではないか」と語り、ラグ問題は医療費ではない財源で対応すべきものとの認識を示した。維持特例は医療費に影響を及ぼす可能性があるため、違う財源でラグ対応すべきとのねらいもあるとみられる。邉見公雄委員(全国公私病院連盟副会長)も「タイトな医療財政の中で、(維持特例が)なぜいま必要なのか」と強調し、医療崩壊が指摘される外科などに優先的に医療費を配分すべき時期にあるとの姿勢を見せた。安達、邉見両委員は維持特例による財政影響にも懐疑的な見方を示した。
一方、支払い側の白川修二委員(健保連常務理事)は、維持特例で得た収益で研究開発を加速させ、国際競争力の強化、アンメット・メディカル・ニーズ対応、ラグ対応すると業界が主張していることに関し、「(主張を)担保できるのか。株主配当に回すと疑われてもしょうがない」と述べ、業界の主張を裏付けるものを求めた。また、支払い側の北村光一委員(日本経団連社会保障委員会部会長代理)は「維持特例で日本市場の魅力が高まるのか」、公益の牛丸聡委員(早稲田大教授)は「維持特例は最終的に国民・患者のメリットになるのか」と維持特例導入のねらいを質すなど、制度設計の議論まで至らなかった。
また、邉見委員は、製薬業界が維持特例を提案したこと自体に疑問を投げかけた。アンメット・メディカル・ニーズの高い薬剤開発やラグのある薬剤の開発促進は、「医師の応召義務と同じぐらいの製薬企業の社会的使命だ」とし、「維持特例は、子供が宿題をやるからこづかいをくれと言っているのと等しい。本来やらないといけないことではないか」と語気を強めた。これに厚労省保険局の磯部総一郎薬剤管理官が、「ラグなどがなぜ起こるのかを考えると、企業の論理から、『採算性が悪いから』と考えざるを得ない」と説明し、強いインセンティブを導入しなければラグ問題は解決し難いとの認識を示す場面もあった。(写真は、左から専門委員の長野氏、禰宜氏、松谷氏)