中医協・薬価専門部会 新制度案は秋から本格論議 財源問題が浮上
公開日時 2009/08/06 04:02
中医協・薬価専門部会は8月5日、日本製薬団体連合会が提案する新薬価制度について秋以降、制度設計に必要な各論も含め検討を本格化させることになった。しかし、診療側の日本医師会委員は、新薬の薬価を維持する特例を柱とした新制度案には一定の財源が必要になると見て、年末の診療報酬改定の財源確保と絡め、導入には依然難色を示す。今後は制度設計の議論と並行して、財源問題で日医と業界側がどう折り合いをつけるかという課題が浮上した。
これまで委員が新制度の導入の必要性について、さらなる説明が必要だと業界側に対応を求めていたことから5日は、国内メーカーを代表して武田薬品の長谷川閑史社長(写真右から2人目)と、外資メーカーを代表してヤンセンファーマの関口康会長(写真右)が招かれ、ヒアリングを行った。
両者は、医療のために新薬をいち早く出し、開発費を早期に回収、再投資し、その中でドラッグラグ問題の解消を進めるには、治験環境、審査の強化と併せて新薬の薬価を維持し、早期の投資回収を可能にする薬価維持特例の導入が必要だと訴えた。関口会長は、断続的に薬価が引き下げられる日本は新薬開発・販売面の投資効率が劣り、市場の魅力が低いと見られている現状を説明、制度改革の必要性を強調した。
未承認薬・未承認効能問題の解消にも資するとし、業界としても未承認薬等開発支援センターも設立したが、長谷川社長は「開発にどこも手を挙げない場合、どこかの大手が結果としてやらざるを得ないと、腹を括っている」と問題解消に向けた決意を表明した。
業界側の説明に対し、支払側委員は肯定的な見方を示し、小島茂委員(連合総合政策局長)は、長谷川社長の決意を評価。未承認薬問題は大きな問題だとして診療報酬改定の基本方針を策定する社会保障審議会でも議論するよう厚労省に求めた。診療側の山本信夫委員(日本薬剤師会副会長)は、新制度導入の必要性に一定の理解を示し、完全実施ではなく試験実施して効果を検証していく方法も一案だとした。試行は以前、支払側の対馬忠明委員(健保連専務理事)も提案している。
一方で、診療側の日医委員は引き続き、新制度導入に難色を示した。中川俊男委員(日医常任理事)は、新制度案は「新たな財源が必要になる」と指摘し、地域医療崩壊の危機の方がより切迫し財源確保の必要度が高いことを示唆した上で「新制度の導入は極めて困難」と主張。業界側とは並行線をたどった。
遠藤久夫部会長(学習院大学経済学部教授)は最後に、制度導入の必要性に加え、厚労省が7月15日の部会に提示した新制度の論点案も含めて「総合的に議論する必要がある」とまとめ、秋以降に議論を本格化させることになった。その中で、新たな財政シミュレーションの必要性も指摘。新制度案にどの程度の財源が必要になるかも明らかにしながら議論を進める意向を示した。業界側は、診療報酬改定で引き上げを求める日医と財源をにらみつつ、効果的な制度設計論議をすることを迫られそうだ。