岐阜大大学院教授 低リスク安定労作性狭心症の先行治療を薬物療法に
公開日時 2006/03/27 23:00
岐阜大学大学院医学研究科再生医科学の藤原久義教授は3月24日の日本循環器
学会総会・学術集会で、低リスク安定労作性狭心症患者に対するPCI(冠動脈
インターベンション)療法と薬物療法の長期予後改善効果を比較した試験結果
として、両者に差がなかったことを発表。PCIの治療コストは薬物療法に比べ
初年度で4倍強も高いなどの理由から、先行治療として薬物療法に切り替える
必要性を指摘した。低リスク安定労作性狭心症患者の治療法をめぐっては、欧
米のガイドラインでは、初期治療として薬物療法が行われている一方で、国内
では根拠となるデータがないままほとんどの施設でPCIが行われているのが現
状という。
藤原氏らが発表した試験「J-SAP1」はレトロスペクティブに全国34施設で低
リスク安定労作性狭心症患者382人を対象に3.5年の長期予後に関して、薬物先
行療法180人、PCI先行療法182人を対象に検討した。心疾患死亡と心疾患死亡
+非致死性急性冠症候群の頻度は、薬物先行療法1.6%と2.1%に対し、PCI先
行療法群では2.6%と4.7%で有意差はなかった。また、1年後の狭心症症状の
改善度は両群同様で差はなかったという。
藤原氏は試験は無作為ではあるが、レトロスペクティブに行われた点を課題と
して挙げたうえで、一般的症例群を反映していない可能性があると指摘。現在、
登録時からプロスペクティブに無作為比較試験として「J-SAP2」を実施中で、
その結果が今後3ヵ月~6ヵ月後にまとまることを報告するとともに、それら
の結果を踏まえたうえで、ガイドライン改定に反映させることも示唆した。