がんという、遺伝子が行き着いた一つの悲しい結末
公開日時 2008/09/30 00:00
がんの入門書たった1.3cmの厚さしかない『がん遺伝子の発見――がん解明の同時代史』(黒木登志夫著、中公新書)は、なりは小さいが、私たち素人ががんとは何かを知ろうとするとき、先ず最初に手にすべき本である。これほどはっきり断言できるのは、①著者が素人にも理解できるようにと工夫、努力を重ね、それが見事に成功していること、②執筆の時点までに明らかになったがん研究の最新の成果が盛り込まれていること、そして、この本が出版されてからいささか歳月が経過しているが、管見の限りでは、その後、この本を超える入門書に出会えていないこと、③がん研究上の発見にまつわる人間臭いエピソード、裏話が臨場感豊かに描かれていること――この3点のためである。MRが、今、この本を読んでおくか否かによって、今後のがん研究理解に相当の...