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デバイスの進歩がもたらすベネフィット  (2/2)

公開日時 2012/08/03 05:00
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CAS治療成績向上桑山直也氏
新規デバイス、診断技術の進歩が貢献

 

富山大学附属病院 脳神経外科准教授
桑山直也氏に聞く

 

新たな遠位塞栓防止用のデバイスの認可、術前診断の進歩などにより、頸動脈ステント留置術(CAS)の治療成績は近年、大きく向上してきている。CASをめぐる歴史的背景と、最近のCAS治療をめぐる現状について、富山大学附属病院脳神経外科准教授の桑山直也氏に話を聞いた。

 

国内では、保険収載前の2000年前後からCASの経験は積まれてきました。頸動脈の血管形成術及びCAS中に飛散した血栓等の塞栓物質(デブリ)を補足・除去する、遠位塞栓防止用のデバイスとしては、バルーンタイプのPercuSurge Guard Wireが主流でした。図


2003年には、CAS治療の現状をめぐる、前向き登録研究「JCAS(Japan Carotid Atherosclerosis Study)」が実施され、30日のMAEは、CEA群3.2%(14例/443例)、CAS群3.5%(11例/317例)でした。脳卒中の発生率もCAS治療群は内科療法群に比べ、有意に低いことなどが分かり、CASの治療成績が良好であることが示されたわけです。CEAのハイリスク症例を対象に北米で実施された、「SAPPHIRE(Stenting and Angioplasty with Protection in Patients at High Risk for Endarterectomy)」研究でも、CASの治療成績がCEAに劣らないことも示されました。


このような中で、2008年4月に頸動脈ステントシステム(PRECISE、ANGIOGUARD XP)が認可されました。遠位塞栓防止用デバイスは、バルーンではなく、フィルタータイプ(ANGIOGUARD XP)でした。しかし、このデバイス下での経験が乏しかったこともあり、市販後成績調査でも、周術期1年の合併症発生率はやや高率でした。

 



“CASハイリスク症例”の見極めが重要に表1 表2



その後、術前の診断技術の進歩や、デバイスの進歩により合併症は大きく減少してきました。


CASは、循環器系、呼吸器系の合併症がある症例や、解剖学的に高位の病変、CEA後の再狭窄がみられた症例など、CEAハイリスク症例が対象となります。ただ、この中には、“CASハイリスク”とも言うべき症例も含まれています。代表的なのが、アプローチルートに解離や血栓がある症例、コレステロール結晶塞栓症の原因となる大動脈の粥状硬化が強い症例、デブリのリスクが高い不安定プラークの症例などです。不安定プラークについては、超音波検査によるエコー法に加え、MRIとMRアンギオグラフィー(TOF−MRA)を用いて、プラークの質を評価することが可能になってきました。


診断技術が進歩することで、これらCASハイリスク症例を見極めることができるようになった意義は大きいと言えます。

 



J-CABANA 術後1年での有害事象発生率は2.1%

 

2010年には、新たなデバイスとしてFilter Wire EZが承認されました。市販後使用成績調査の「J-CABANA(Japan Carotid Stenting Boston Scientific Surveillance Program)」は、194例のCAS施行患者のPMSです。CASにはフィルタータイプの遠位塞栓防止用デバイスFilter Wire EZとクローズドセルタイプステントCarotid Wallsetent Monorailが使用されました。術後1年までの複合イベント(主要有害事象:死亡、脳卒中、心筋梗塞、デバイス関連有害イベント)の発生率は2.1%でした。以前のデバイスと比べ、圧倒的に良好な治療成績となっています。さらに、不安定プラークのCASにおいては、proximal balloonを用いて、頸動脈の血流を逆転させるなどの方法も用いられており、今後のさらなる治療成績向上が期待されます。


周術期の血栓症予防では、治療の1週間前からアスピリンとクロピドグレルの抗血小板薬の2剤併用を行っています。ただし、MATCHでは、投与開始3~6カ月後に出血イベントの増加がみられることが報告されています。出血イベントは避けたいので、患者さんの状態が安定していれば、手術の3カ月後から、出血リスクの低いクロピドグレル1剤の投与に切り替えています。また、スタチン投与などで、プラークの安定化をはかることも有用なのではないかと考えています。今後は、CASの方法だけでなく、周術期の薬物療法も、患者個人に合わせたテーラーメードの治療戦略を立てることが必要ではないかと考えています。

 

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