本誌編集者座談会 2012年の製薬業界を振り返る (1/2)
公開日時 2012/11/29 00:00
転換点を迎えたMR活動
「MR+e」の更なる進化系に期待
Monthlyミクス編集部は2012年の1年間を通じ、変わりゆく国内製薬市場、生誕100周年を迎えたMRの今後の役割と機能、さらにはWebなどのITツールを活用したeプロモーションなどを取材してきた。本誌編集者座談会では、この1年を振り返りながら、取材のバックステージや、誌面に書ききれなかったエピソードなどを担当編集者の視点を交えて紹介したい。
◆医薬品マーケットはどのように変化したか
沼田 先ごろ、製薬各社の2013年3月期中間決算が発表になりました。特許切れした先発品がGE(ジェネリック)品の市場浸食で売上を落としたり、最近に上市された新薬の売上の伸びが予想を下回ったりと、市場環境もこれまでと違った動きを見せていますね。
神尾 リピトールなど生活習慣領域の大型品や、DPC病院を中心に使用され、購入額が高くなるラジカットなどが苦戦し、ものすごい落ち方をしました。これまでオンコロジー領域はGEに切り替わりにくいといわれていましたが、こちらもあまり関係ないようですね。背景には、先発品の特許が切れた際、医療機関でGEへの切り替えを検討しないことがなくなったことがあると思います。
酒田 今年4月の診療報酬改定における一般名処方や長期収載品の引き下げ措置などの影響も大きいです。まだ政府目標のGE数量シェア30%には届きませんが、まさに政府の思惑通りに進んでいますよ。
これまでは長期収載品市場とGEの市場は二分されていた感がありますが、ここ最近の診療報酬改定による後発品の使用促進策でGEの浸透スピードが更に上がり、互いに価格競争が起き、「低薬価品市場」が形成されつつあることを実感することが多かったです。その印象が、今回の中間決算の数字でも確認できました。個人的にはもう少し長期収載品の粘りがあると思っていたのですが・・・。
望月 ブロックバスターを持つメーカーにとって、どの製品で売上を維持するかが課題となってきましたね。これから上市される新薬で補うことも難しいと思います。現在の開発品がこれまでの生活習慣病領域から、オンコロジーなどに開発領域がシフトしてきているためです。これまで、レッド・オーシャン、ブルー・オーシャンという言葉も汎用されてきましたが、領域だけで割り切れる問題でもなくなってきました。各領域の開発から置き去りにされたアンメット・メディカルニーズに特化した開発が進んでいます。ミクス編集部がまとめた開発パイプラインリストをみても、その傾向が読みとれました。
神尾 新薬開発という意味ではジャヌビアに代表されるようにファーストインクラスに入ることを目指すという方向性も重要度が増すでしょう。ここ最近の新薬をみても、ファーストインクラスとそうでない2番手以降の新薬とで明暗が分かれたケースも多いように記憶しています。
2013年はMR数をめぐる議論が本格化?
酒田 ブロックバスターの特許切れによって、企業収益が減少傾向になり、しかも新薬でもカバーできないとなると、経営的には社内の営業リソースをどう配分するかの議論は避けられないでしょう。医療現場で進んでいる個別化医療は、メーカーの経営戦略に大きく影響していきますね。コストという観点では、MRの数をめぐる議論が本格化するのは避けられないでしょう。
望月 今後の新薬開発に際しては、1つの適応で売上を牽引するのではなく、開発の初期段階から複数の適応を取得することを見据えたストラテジーがこれまで以上に求められることになると思います。臨床現場では、薬剤を用いる医師の患者指向が高まる中にあって、オンコロジーだけでなく、すべての領域で個別化に向けた動きが高まっています。そのドクターニーズに、どれだけ応えられるか。より実地臨床に合った、具体的な投与患者像が浮き彫りとなる臨床試験の実施が求められることとなりそうです。
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