【ATSリポート】ブデソニド/ホルモテロール配合剤 人種によらず喘息患者へのベネフィット示す
公開日時 2011/05/24 03:01
吸入ステロイド薬(ICS)のブデソニド(BUD)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)のホルモテロール(FM)の配合剤(BUD/FM)による治療は、様々な人種や重症度の持続型喘息患者において、BUD単剤治療を上回る喘息イベント発症抑制効果があることが、4つの無作為化された臨床試験の解析結果から、明らかになった。特に、中等症から重症の患者で強い傾向がみられた。米Boys Town National Research HospitalのKevin R. Murphy氏らの研究グループが、米デンバーで5月13~18日まで開催中の米胸部学会(ATS)のポスターセッションで、15日発表した。
喘息の重症度、治療薬への反応性には人種差があることが知られ、特に黒人やヒスパニック系の患者では治療効果が得にくいと指摘されているが、黒人やヒスパニック系を対象にしたICS/LABA配合剤の、有効性と安全性を検討した臨床試験は少ないのが現状だ。
研究グループは、米国で実施されたベースラインの重症度や人種が異なる4つの無作為化臨床試験結果を解析し、BUD/FMとBUD単剤で、喘息のイベント発症抑制効果などが人種や重症度により差が生じるかについて検討した。
試験のうち、3試験はそれぞれ白人、黒人、ヒスパニック系の中等症から重症喘息患者を対象にしたものであり、白人、ヒスパニック系患者を対象にした試験では、BUD/FM pMDI(320/9μg 1回1吸入 1日2回)かBUD pMDI(320μg 1回1吸入 1日2回)の2群に、黒人を対象にした試験ではBUD/FM pMDI(320/9μg 1回1吸入 1日2回)かBUD DPI(360μg 1回1吸入 1日2回)に割り付けられていた。残りの1試験は軽症持続型から中等症の白人患者を対象に、BUD/FM pMDI(160/9μg 1回1吸入 1日2回)かBUD pMDI(160μg 1回1吸入 1日2回)に割り付けられていた。
喘息イベントは、①朝の投与前FEV1(1秒量)が無作為化から20%以上低下したか、正常予測値の40%未満に低下②7日間のうち3日以上アルブテロール(短時間作用性β2刺激薬)を12回吸入③7日間以内に3日以上、朝のピークフロー値(mPEF)がベースラインから20%以上低下④レスキュー療法が必要な喘息による夜間覚醒が2晩以上⑤緊急受診、入院もしくはプロトコルに含まれない喘息治療薬を必要とする臨床増悪――と事前に定義した。
◎中等症から重症患者で強い効果示す
解析の結果、全ての試験において、喘息イベントが1回以上発生した被験者の割合は、BUD/FM群がBUD群よりも低かった(軽症から中等症の白人対象:18.7% vs. 21.5%、中等症から重症の白人:29.8% vs. 44.0%、中等症から重症の黒人:37.3% vs. 45.3%、中等症から重症のヒスパニック系:25.2% vs. 31.7%)。このうち、中等症から重症の白人を対象にした試験では、有意な群間差が確認された(P値<0.05)。イベントの中で最も多かったのは、夜間覚醒であった。
また1回以上の喘息イベントが原因で治療を中止した割合は、軽症から中等症の白人患者を対象にした試験では、両群間に大きな差はみられなかったが(7.3% vs. 6.6%)、中等症から重症患者を対象とした試験では、人種に関係なくBUD/FM群がBUD群よりも低かった(白人:10.5% vs. 20.2%、黒人:11.8% vs. 18.9%、ヒスパニック系:3.1% vs. 6.5%)。
研究グループは、BUD/FMでは、「重症度によらず、白人、黒人、ヒスパニック系のどの被験者においても、喘息のイベント発症率に対してBUD単剤より高いベネフィットが見られ、特に中等症から重症の患者で最も顕著であった」とし、「これらのデータは様々な重症度や人種での喘息管理の達成における、同レジメンの有効性を支持するものである」と結論付けた。