第一三共のKen Kellerグローバルオンコロジービジネスヘッドは2月26日の「2024年度オンコロジー事業説明会」で、抗体薬物複合体（ADC）・エンハーツの24年売上収益が37億米ドルを超え、4つの適応症で上市した全ての国・地域でリーダーシップの地位を確立したと報告した。Keller氏は、2025年～26年のハイライトに触れ、HER2陽性乳がんの1次治療、ネオアジュバントHER2陽性乳がん、 アジュバントHER2陽性乳がん対象の各臨床試験の結果が得られると強調。「これら重要な試験結果により早期治療ラインかつ、より広い適応症の獲得を目指すことになる」と述べ、更なる成長への強い期待感を滲ませた。

「エンハーツは標準治療薬となり、パラダイムシフトを起こす製品だ」－。Keller氏は強調する。同社がこれまで取り組んだ「DESTINY臨床開発プログラム」で6つの適応症を取得した。また、米FDAが定める「画期的新薬指定」（Breakthrough Therapy Designation）に8件、ニューイングランドジャーナル（NEJM）に6件、さらに19件のNCCN（National Comprehensive Cancer Network ）ガイドラインの推奨をこれまでに獲得している。その結果、取得した乳がん、肺がん、胃がん、固形がんの4適応症で13.1万人の患者に使用されている。

◎DESTINY-Breast「09」、「11」、「05」に期待　より早期の疾患治療に移行する

Keller氏は2025年以降の開発状況について、HER2陽性転移性乳がん (1次治療)の対象の「DESTINY-Breast09」、HER2陽性乳がんのネオアジュバント対象の「DESTINY-Breast11」、HER2陽性乳がんのアジュバント対象の「DESTINY-Breast05」の各試験をあげ、「これらの臨床試験によりエンハーツはより早期の疾患治療に移行し、乳がん患者さんに更に大きな影響を与えることになる」と述べた。

また、HER2陽性胃がん (２次治療)対象の「DESTINY-Gastric04」やHER2遺伝子変異NSCLC (1次治療)」にも期待を寄せた。さらに、2027年以降については、HER2陽性胃がん (1次治療)対象の「DESTINY-Gastric05」試験、HER2発現胆道がん (1次治療)対象の「DESTINY-BTC01」、HER2発現卵巣がん (一時治療)対象の「DESTINY-Ovarian01」について、新しい適応症候補になり得るとの見方を示し、早期治療の標準治療薬になり得るとの期待感を表明した。

◎「25～26年に対象患者数は約3倍に増加し、9つの適応症取得の可能性がある」

一方で、オンコロジーポートフォリオの拡大として期待するダトロウェイ（Dato-DXd/DS-1062）について、HR陽性かつHER2低発現または陰性転移性乳がん (2次/3次治療)対象の「TROPION-Breast01」が日米で承認取得したのに続き、2025年中の欧州医薬品庁による承認勧告を目指しているとした。また、EGFR変異, 前治療歴（EGFR標的療法を含む）あり(2次/3次治療)対象の「TROPION-Lung05」が、生物学的製剤承認申請が米国食品医薬品局（FDA）にて受理され、また優先審査の指定にも期待感を示した。

このほか、PD-1/PD-L1阻害剤治療対象外のTNBC (1次治療)対象の「TROPION-Breast02」と、AGAなし, Durvalumab併用(1次治療)対象の「AVANZAR」については、25年中に臨床試験の結果が見込まれるとした。Keller氏は、「25～26年に対象患者数は約3倍に増加し、9つの適応症取得の可能性がある」と期待を込めた。

◎眞鍋会長兼CEO「グローバル創薬イノベーターになる2025年の目標達成に全力尽くす」

眞鍋淳代表取締役会長兼CEOは説明会冒頭の挨拶で、「私達はオンコロジー領域で競争優位性を持つグローバル・創薬イノベーターになるという2025年の目標達成に全力を尽くすとともに、オンコロジー領域で世界トップ10に入るという2030年ビジョンに向けて更なる成長へとシフトしていく」と強調。「新たな治療を必要としているより多く患者に一刻も早く革新的な製品をお届けできるよう挑戦を続けていく」と宣言した。