NPhA・原氏 一社流通での「安定供給」製薬企業の責務問う 情報提供に企業HP活用も一考
公開日時 2025/01/17 05:29
厚労省の流改懇の構成員を務める日本保険薬局協会(NPhA)の原靖明医薬品流通・OTC検討委員会副委員長は1月16日、本誌取材に応じ、一社流通品の「安定供給」をめぐる課題認識を示した。特に、製薬企業の中には、安定供給に対する意識が薄く、卸に丸投げしていると取られかねない企業もあると指摘。「“卸に任せて終わり”、ではなく最後まで見届ける必要がある。製品を患者に届ける仕組みを構築することまでが、メーカーの責務だ」と強調した。厚労省の流通改善ガイドラインでは、一社流通の理由を説明することが求められているが、NPhAの調査では殆どの薬局が説明を受けていないことも浮き彫りになった。原氏は、「一社流通品とその理由をわかりやすく企業のホームページにわかりやすくアップする」ことも一考とした。
◎NPhA調査・一社流通による患者影響は7割 「結果的に困るのは国民」
一社流通をめぐっては厚労省の「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」では、「一社流通を行うメーカーは、自ら又は卸売業者と協力し、その理由について、保険医療機関・保険薬局に対して丁寧に情報提供を行うこと。また、一社流通を行うメーカー及び卸売業者は、その医薬品の安定供給を行うこと」とされている。
同日公表されたNPhAの調査では、メーカー・卸から一社流通とした、製薬企業・卸から理由の説明を受けたことがある薬局は約7%にとどまることが明らかになった。さらに、一社流通であるために、納品が遅延し、服用継続が中断されるなど、患者の治療に影響を来しているとの回答も7割に上っている。原氏はこの点に問題意識を露わにする。「薬局がこれだけ困っているということは、病院も同様に困っている。結果的に困るのは国民だ」と話し、“安定供給”への意識の重要さを強調する。
◎長期収載品が販売移管で一社流通になるケースも
“一社流通”の定義について、厚労省は医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会に「医薬品メーカーが自社の医薬品を医薬品卸1社(同一グループも1社に含む)に限定して流通させること。地域ごとに担当卸を1社決めて流通させているケースも該当する」と提示している。原氏は、薬局の立場から見たときに、「製品を買おうと思ったときに一次卸が一つしかないこと」と話す。
“一社流通”と一口に言っても様々なケースがある。例えば、日本で最初の製品を販売するメーカーが選択するケースもあれば、特定の製品について複数卸を通じた流通をやめて一社流通に変更するケースもある。最近では、販売移管により、複数卸を通じて流通していた製品が一社流通となるケースも多いという。長期収載品にもかかわらず、一社流通へと変更になり、薬局が混乱するケースも少なからず起きているという。
◎「最低でも発注から4日以内に納品を」
こうした中で、課題としてクローズアップされるのが、「安定供給」だ。原氏は、処方箋の使用期限が発行日も含めて4日以内であることを引き合いに、「発注後、最低でも4日以内に納品されなければ、医薬品が安定供給されたとは言わないのではないか」と強調する。
特に、製薬企業の安定供給への責任感の薄さを指摘する。安定供給を前提に一社流通を選択しているとして、製薬企業の責任ではないとの声も一部にはある。原氏は、「安定供給を卸に丸投げするのではなく、メーカーにも監督責任があるのではないか」と強調する。“安定供給の責務は卸”との見方は、「価格代行業者が単品単価を行っていると認識して薬局が委託しているのだから私は関係ありません、と言っているのと同じだ」と指摘する。
◎卸は「毛細血管型流通の矜持を」 製薬企業は「届く仕組みにするのが責務」
原氏は、「我々、NPhAとしては、これからも患者さんに薬が届くように努力する。ぜひ流通関係者のプレーヤーである卸さんやメーカーさんにもご協力いただきたい」と強調。「卸にはメーカーの言いなりになるのではなく、卸としての矜持を持ってほしい。“毛細血管型”という自負があるのであれば、ちゃんとした供給をしてほしい」と話す。
一方、製薬企業に対しては、「“卸に任せて終わり”、ではなく最後まで見届ける必要がある。良い医薬品を開発しても、患者の手に届かなかったら意味がない。届けるところまでがメーカーの責任だ」と話す。次期薬機法改正では、医療用医薬品の製造販売業者の法令遵守体制として「安定供給体制管理責任者」(仮称)を義務付ける方向であることを引き合いに、「物は卸の在庫にある、というのではなく、届く仕組みにするのがメーカーの責務だ」と語った。