科研製薬 米国自販第1号目指す「KP-001」 FDAと第3相試験に向け相談開始 29年度の承認取得に期待
公開日時 2024/11/12 04:48
科研製薬は11月11日の2024年度第2四半期決算説明会で、米国自社販売品の第1号を目指し、難治性脈管奇形の適応で開発中のKP-001について、米国における第1相試験が終了し、FDAと第3相試験に向けた相談を開始したことを明らかにした。29年度の承認取得・上市を想定している。鈴土雅常務取締役は、米国販売拠点を自社またはM&Aにより構築する方針を説明し、「今の基本シナリオとしては何とか自社で単独で販売していきたい」と述べた。日本ではKP-001の第3相試験を実施中で、26年度の承認取得を目指している。
同社が22年5月に発表した長期経営計画2031では、「皮膚科、整形外科領域を中心にグローバルに展開する創薬企業」をビジョンの一つに掲げ、その戦略として海外自社展開(開発・販売)による製品の価値最大化をあげた。今回、その具体策として、「米国自社販売に向けた体制構築(拠点の自社構築もしくはM&A)の促進」を明記した。
また、長期経営計画2031では当初、22~31年度の10年間の戦略投資額として2000億円以上(研究開発費1200億円、M&A・導入費等800億円)と明記していたが、研究開発費用の高騰といった事業環境の変化を踏まえ、この金額の見直しを含む長期計画の一部見直しについて25年3月下旬にも開示予定とした。
◎24年度第2四半期業績 売上高42.0%増の514億円、営業利益255.2%増の196億円
24年度第2四半期の業績は、アトピー性皮膚炎の適応で第1相試験段階にあった、IL-4/IL-13及びIL-31を阻害する二重特異性抗体・NM26のJ&Jグループへの知的財産譲渡に係る契約一時金受領を要因に、売上高が42.0%増の514億円、営業利益が255.2%増の196億円と大幅な増収・増益となった。第2相試験によるPOC取得以降と見込んでいたNM26の導出時期が早まった理由について、綿貫充取締役研究開発本部長は、「デュピクセントの抗炎症作用はそのままに、デュピクセントでは不十分な痒みを抑えることが可能となる抗体医薬品を目指して開発してきた。ポストデュピクセントとして現在最も進んでいて、その効果が期待できるNM26に注目が集まったため」と説明した。
鈴土常務取締役はまた、NM26の導出が当初想定より早期に実現したことで、J&Jグループによる開発加速が見込めると説明。「開発が成功した際にはアジアでの売上に応じたロイヤリティの受領、日本においては当社が販売する予定であり、NM26の価値最大化に向けた施策であると判断し契約した」と述べた。
◎国内業績 アルツは競合品スベニールの終売による切り替えで9.8%増の98.04億円
第2四半期の国内医療用医薬品・医療機器の売上実績は3.7%増の315億円。主力品では、関節機能改善薬・アルツは、競合品スベニールの終売による切り替えが進み、9.8%増の98.04億円となった。通期予想は前期比5.3%増の190億円から変更していない。堀内裕之代表取締役社長は「スベニール終売による切り替えがほぼ完了しているので、さらなる市場拡大に向けて取り組みを進め、計画の売上を達成する」と述べた。なお、24年10月から長期収載品の選定療養制度が始まったが、外来における注射剤は選定療養の対象外とするとの厚労省通知が24年9月末に出されており、アルツ売上への制度の影響は軽微にとどまる見通しだ。
原発性腋窩多汗症治療薬・エクロックの売上は、前期に新容器のツイストボトルの新発売による初期納入に伴う在庫積み増しの影響があり、1.9%減の13.60億円となった。通期予想は前期比21.4%増の22億円から変更していない。堀内社長は「競合品とのシェア争いがあるが、患者・医師への疾患認知を今以上に努め、市場拡大により増収での着地を見込む」と述べた。
通期業績予想は、NM26の導出契約締結を反映して8月の第1四半期決算発表時に上方修正しており、今回、それから変更はない。
【連結業績 (前年同期比)通期予想(前期比)】
売上高 513億7200万円(42.0%増)885億円(22.8%増)←期初予想751億円
営業利益 195億7900万円(255.2%増)208億円(118.6%増)←期初予想74億円
親会社株主帰属純利益 142億8600万円(251.2%増)142億円(76.9%増)←期初予想56億円
【国内主要製品売上高(前年同期実績)通期予想、億円】
クレナフィン 91.72(91.99)172
アルツ 98.04(89.29)190
セプラフィルム 35.67(35.44)68
フィブラスト 12.49(13.21)26
エクロック 13.60(13.87)22
リグロス 4.63(4.42)9
ヘルニコア 2.05(1.88)4
後発医薬品計 42.79(40.24)81