日薬連保険薬価研究委員会の石牟禮武志委員長（塩野義製薬）は4月9日、薬粧連合政策シンポジウムで講演し、24年度薬価制度改革の「効果検証」について業界団体として検証方法等を含めて検討していることを明らかにした。石牟禮委員長は、「短期的、中長期的なものを一度整理してどこかの場に示したい」と述べた。薬価中間年改定については、「当初から状況が大きく変わっている」と指摘し、「廃止を含めて見直し」を求めた。続けて、「薬価差そのものが生じない仕組みを含めて、薬価改定のあり方について検討すべき」との見解を示した。

石牟禮委員長は講演で、24年度薬価制度改革で革新的新薬の特許期間中の薬価維持が実現したことに「大きな転換だと思う」と強調。医薬品の安定供給の確保についても、「基礎的医薬品」の対象拡大や、不採算品再算定の特例的な適用で、「中には50%を超える引上げがあった」と述べ、「薬価を維持もしくは引き上げる改革が実施された」と評価した。

◎「特にドラッグ・ラグ／ロスの解消等に向けて、業界団体において検証方法を検討中」

一方で、「よかったでは済まされると思っていない」とも述べ、「特にドラッグ・ラグ／ロスの解消等に向けて、業界団体において検証方法を検討中だ」と明かした。効果検証について石牟禮委員長は、「スナップショットだけではなくて、継続的に持っていける指標、あるいは客観的に確認いただける指標とは何か。短期的に出せるもの、中長期的に見ていけるものを一度整理した形でどこかの場に出したいというふうに考えている」と述べ、慎重に検討を進めていると報告した。

◎状況変化を踏まえ、中間年改定の「廃止を含めた見直し」をぜひお願いしたい

今後の薬価改定のあり方にも言及した。石牟禮委員長は、「16年度の薬価制度改革抜本改革では“価格乖離の大きな品目”について行うとあったが、結果的には7割の品目が対象になった」と指摘。「21年度薬価改定では新型コロナウイルス特例で引き下げ幅を0.8％分緩和したほか、今改定でもイノベーション評価や安定供給のところに対応してもらった」と述べながらも、「（薬価を）下げて手当するという手間のかかることを何度もやるのは本当にいろんなコストがかかる。そういった意味で見直しが必要ではないか」と指摘した。その上で、6年連続の薬価改定により薬価の下落スピードが早まったことに加えて、経済情勢に伴う賃上げや働き方改革への対応といった「状況変化を踏まえ、中間年改定の廃止を含めた見直しをぜひお願いしたいと考えている」と強調した。

◎短絡的な考え方でなく、薬価差が果たす役割、薬価差が生じる要因をきちんと議論すべき

その上で、薬価差の問題に触れ、薬価差を生じさせる要因として、「医薬品特性による要因は当然あるが、医薬品特性によらない要因も影響としては最近大きくなってきているのでは」と問題提起。「短絡的な考え方でなく、薬価差が果たしている役割、薬価差が生じる要因をきちんと議論し、その対策ということであれば、もっといろんな方々の納得感を得る議論ができるのではないか」と提案。「これは時間のかかる議論だが、まずは一旦立ち止まって、本当に中間年改定のやり方が良かったのかどうか議論する場があると良い」と述べた。

◎内閣官房・武田政策参与　マクロレベルでこれ以上薬価差を縮めるのは非常に困難

政策シンポジウムで基調講演した内閣官房 健康・医療戦略室の武田俊彦政策参与は、「これからニーズが多様化していく、そして医療保険というのは全てを適用対象にするのは難しい状況にますます入っていく」と指摘。「国民のアクセスと医療保険の財政との調和を図っていく時に“民間保険”というのは議論の対象としてあってもいいことだと思う」と主張した。

同氏は、「民間保険であろうとも、医療上の必要性があって、ベースのあるものを捨ててはいけない。それは結構手間がかかることではあるが、こうやってフォローアップしていくことはできる」との認識を示した。

講演の中で同氏は薬価差の問題に触れ、「薬価差は過去最低となっている。マクロレベルでこれ以上薬価差を縮めるというのは非常に困難なところがある」と指摘。「そうなるとマクロより今後はどこで薬価差がどのくらい出ているのかというレベルの議論をしないと、単純な薬価差があるから切り下げるというわけにいかないだろう」との見解を述べた。