中外製薬 「中外版ChatGPT」全社利用を開始 初期は論文要約 社内データ分析から”打ち手“立案に期待
公開日時 2023/10/02 04:52
中外製薬は、生成AI「中外版ChatGPT」の全社利用を8月から開始した。9月29日に開催したDX説明会で明らかにした。初期のユースケースでは論文のアブストラクトの要約に生成AIを活用し、R&Dの業務効率や社員の生産性向上に活かす取り組みを開始した。金谷和充デジタル戦略推進部長は今後の展開について、「社内に埋もれている様々な情報から新たなクリニカルクエスチョンを見つけ、医療者とのディスカッションを通じて新たなアンメットメディカルニーズを見つけるといった活動につなげていきたい」と強調。営業部門、メディカル部門などを含めたユースケースの全社的な拡がりに期待感を表明した。
同社は「中外版ChatGPT」をAzure上に構築し、5月から限定的メンバーによるユースケースとリスクの洗い出しを目的としたPoC(Proof of Concept)を行った。その結果、リスク対応については、①知財・著作権侵害、②個人情報・機密データの漏洩、③信憑性の欠如、④偏ったアウトプット、⑤目的外利用、⑥シャドーAI-の6項目を特定。生成AIを活用する社員のリテラシー向上を目的とした社内ガイドラインを策定した。一方、活用事例については、議事録・アクションリスト作成、各種情報収集・要約、各種データ分析など複数の項目を洗い出した。
◎初期のユースケース 論文取得とアブストラクトの要約 研究者の業務効率向上に一役
初期のユースケースでは、論文取得とアブストラクトの要約、プログラミング効率化、社内にあるテキストデータの分析などがあがったという。中でも論文要約については生成AIを活用して論文サイトから自動検索を行い、それを要約し、その内容を研究者にフィードバックするモデルを想定している。「これによりかなりの業務効率が上がる」(金谷部長)として随時進めるとした。
◎アンケート集計や定性的評価「ヒトの眼で行っていた作業を言語モデルで分析」
一方、社内にあるテキストデータの分析では、アンケート集計や定性的評価など、「これまでヒトの眼で行っていた作業を言語モデルで分析し、その後の“打ち手”の立案までを行うことが可能となる」(中谷部長)とし、社内の全バリューチェーンについてのユースケースを検討し、どれから始めるかの順位づけを行っているとした。なお、同社が公表した「既に実現可能」なものは、メールドラフト作成、会議議事録ドラフト作成、コードドラフト作成、翻訳・校正、論文要約など。また、同社の「DXユニットと各部門が対応」には、SOP検索・文書作成の簡易化、システム・機器・ソフトウェア等の利用方法確認、各種問い合わせへの対応(Chatbot)、社内外説明資料・教育資料ドラフト作成などがあがっている。
◎営業部門、メディカル部門などのユースケース拡大に期待
金谷部長は、「MR、メディカル・インフォメーション、メディカル、MSLの活動を通じて日々情報が生まれ、社内に埋もれている。(生成AIを活用することで)新たなリニカルクエスチョンを見つけ、それに基づいた医療者とのディスカッションを行い、アンメットメディカルニーズをしっかり見つけていく。そういった活動につなげていきたい」と語った。
また、医薬品などの提供価値向上を目的としたソリューションを開発し、患者等にサービス提供する「インサイトビジネス」に絡めながら、「新たなソリューションを直接顧客に提供するようなことが始まれば、生成AIも活用の余地がある」との認識を表明。ただ、現時点では「議論の段階には至っていない」としながらも、今後の可能性に期待を寄せた。