Meiji Seikaファルマ・小林社長 コロナを成長機会に転換 一気通貫の国内生産体制へ AMRはOP0595で
公開日時 2022/07/07 04:52
Meiji Seikaファルマの小林大吉郎社長(KMバイオロジクス会長)は7月6日、医薬セグメントの事業運営に関する記者説明会に臨み、「コロナパンデミックがもたらした業界環境の激変、技術基盤、創薬基盤のパラダイムシフトを成長機会に転換させる」と意欲を示した。具体的な成長戦略では、新型コロナの不活化ワクチンKD-414の早期承認を目指す。また、mRNAなど新規モダリティ技術を近く獲得すると明かし、KMバイオと一気通貫となる国内唯一のワクチン生産体制を構築する方針を示した。一方、薬剤耐性(AMR)対策では、新規β-ラクタマーゼ阻害剤OP0595(Nacubactam)の第3相試験が始まるとし、国の緊急承認制度などを活用することで当初予定した2025年中の承認時期を前倒したい考えを強調した。
◎「デュアルユース設備」の整備事業に申請 「国の支援を受けながら中長期の成長にもっていく」
小林社長は、この2年間の新型コロナに伴う業界環境の変化や、欧米系企業によるmRNAワクチンの開発競争など、「最初は脅威に思った」と吐露。ただ一方で、「mRNAワクチンは全量輸入となっている。国内で生産されているものはない」と述べ、「我々の持っている開発生産設備を受けて成長機会に転換させる。国家支援を受けながら中長期の成長にもっていく」と意欲を示した。すでに経産省から、平時はバイオ医薬品を製造し、感染症パンデミック発生時にはワクチン製造へ切り替えられる「デュアルユース設備」の整備事業の公募に申請したことを明らかにした。
◎mRNAに関する技術「新規のモダリティを近く獲得する。すでにいくつか話がある」
また、mRNAに関する技術についても、「こういった新規のモダリティを近く獲得する。すでにいくつか話を頂いているので、これを具現化することが中長期的戦略の要になると考えている」と指摘。KMバイオと一気通貫の国内バリューチェーン体制を構築し、国家的な要請にも応えたいと強調した。このほかインフルエンザと新型コロナが同時流行する「ツインデミック」に警戒感を示しながら、「我々ここ2年間、業界トップの生産数量と早期出荷を達成している。2社の生産技術者のなせる技だと思っており、これを強めたい」と述べた。
◎新規β-ラクタマーゼ阻害剤OP0595(Nacubactam)「世界的にも需要がある」
小林社長はまた、抗菌薬トップメーカーとしての成長戦略として、①薬剤耐性(AMR)対応、②抗菌薬サプライチェーンの強靭化-への取り組みを説明した。新規β-ラクタマーゼ阻害剤OP0595(Nacubactam)は、国内外で分離されるカルバペネマーゼ産生菌に対応できるよう、酵素型に応じて各βラクタム薬と組み合わせて使用可能な単味剤として開発が進んでいる。小林社長は、「2つの薬剤の組み合わせで全てのクラスに対応できる。中間解析で性能が証明されている。すでに承認されている薬剤とNacubactamを組み合わせると全てのクラスの耐性菌に対応できる」と述べ、「世界的にも需要があるのではないかと思う」と強調した。
◎「G7で我が国のAMR対策の具体的なプロダクトとして推奨してもらいたい」
また2023年に広島で開催されるG7サミットにおいても薬剤耐性の問題が議題にあがると見通し、「国家安全保障で重要なものについては、諸外国では国が買上げ、備蓄するようにしている。我々としてNacubactamはプル型インセンティブに合致する薬剤だと思っている。G7で我が国のAMR対策の具体的なプロダクトとして国際会議の場で推奨してもらいたい」と強調した。また、「アジア、欧州での開発計画もAMEDと協議しながら検討している。国内承認は2025年といっているが、今回緊急承認制度ができたので、承認をなるべく早めたい」と意欲を示した。
◎岐阜工場をペニシリン生産拠点に 「順調にいけば25年に商業生産を開始」
このほか抗菌薬サプライチェーンの強靭化として、岐阜工場で取り組んでいるペニシリン生産拠点構想を説明。政府の医薬品安定供給支援事業に応募し、21年に採択されたもので、これまでに実験棟を1年かけて作り、内製化のフィージビリティを実施。22年には実証プラントの工事が始まった。小林社長は、「順調にいけば25年に商業生産を開始できる」と強調した。