小林化工 福井県に「業務改善計画書」を提出 社長・副社長は速やかに辞任、後任は社外から招聘へ
公開日時 2021/03/10 19:25
過去最長となる116日間の業務停止処分中の小林化工は3月10日、福井県に対し、「業務改善計画書」を提出した。法令遵守を確実に実行するための組織体制の構築として、小林広幸代表取締役兼社長執行役員、小林順子取締役兼副社長執行役員は速やかに辞任し、後任を社外から招聘するなど経営陣を刷新する。現在の総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者も交代する。さらに社内にコンプライアンスの専従組織、内部通報制度の導入、コンプライアンス委員会の設置を盛り込んだ。法令遵守の教育訓練と人材育成のあり方も見直す。また問題の発端になった睡眠導入剤混入など原料の取り間違いを防止するための措置も明記した。
福井県は2月9日付で、睡眠導入剤混入事案を起こした小林化工に対し、116日間の業務停止処分と業務改善命令を通達した。今回の業務改善計画書の提出は、この際の処分を受けて同社が責任の所在を含む社内体制の再構築や業務手順などの見直しなど、取り組むべき業務改善の具体的方策を明記したもの。
「業務改善計画書」では、法令遵守違反に対する対応と、再発防止のための組織体制の構築について示したもの。法令遵守違反への業務改善計画では、①法令遵守を確実に実行するための組織体制の構築、②法令遵守のための教育訓練と人材育成のあり方の見直し、③GMP 管理体制の再構築、④薬事部の新設と信頼性保証部門の機能強化-のそれぞれについて同社が行う改善策を明示した。
◎トップ2と総括製造販売責任者が辞任 総責の後任も外部から招聘へ
組織体制の構築では、小林広幸社長、小林順子副社長というトップ2が辞任し、後任は外部から招聘する方針を示した。総括製造販売責任者も辞任。後任は外部から招聘し、取締役に就任させる。責任者の責任の明確化という観点では、品質保証責任者、安全管理責任者を交代させる。現在の医薬品製造管理者は、交代に向けて後任者の選定を進める。さらに、違反行為に係わった役職員は、社内規程(就業規則、賞罰委員会規程)に基づき厳正に対処するとした。
◎社長直轄でコンプライアンス推進室を新設 全役職員に倫理・遵法意識徹底で教育訓練
社内体制として、コンプライアンスの専従組織、内部通報制度の導入およびコンプライアンス委員会を設置。社長直轄でコンプライアンス推進室を新設する。また取締役会の諮問機関として、医薬専門家や弁護士など外部有識者で構成する「コンプライアンス委員会」を設置。コンプライアンス体制構築や改善計画の実行に関する提言等を行う。さらに、内部通報窓口として、ホットライン(社内コンプライアンスホットライン、社外弁護士ホットライン)を新設する。このほか、全役職員に対して、倫理・遵法意識を徹底する教育訓練を行う。
◎GMP管理体制を再構築 ダブルチェックやバーコードによる確認の徹底
GMP管理体制を再構築する。承認書齟齬の解消と承認書・製造指図記録書に基づく製造管理体制を構築。製造指図記録書を整備した上で、定期的な工場巡視などを行い、製造指図記録書の適切な更新と現場フローを作成できない体制を構築する。さらに、原料の取り間違いを防止するため、製造開始前に使用予定の原料・資材について製造指図記録書において指図する。また、ダブルチェックやバーコードによる確認が徹底されるように作業手順書に記載するほか、全ての試験が実施されていることを品質試験実施責任者が確認できるよう記録用紙及び検体の出納記録の管理方法を見直す。
品質保証部(GMP-QA)の機能強化として、必要な人員を配置する。出荷判定の方法論を身に着けるための社内外で教育訓練を徹底するほか、試験記録を無作為に抽出するなどして、試験の適正さについて定期的に確認することも明記している。逸脱管理の徹底も盛り込んでいる。これまで各部門に分散していた薬事・薬制対応機能を一元化し、薬事部を新設。信頼性保証部は製造所に対して無通告で立ち入り調査を行うなど監査能力を強化するとした。
◎GMP組織上の役職者を会社組織上も整合性の取れたポジションに配置
組織面の業務改善では、医薬品製造管理者、製造部、品質管理部、品質保証部の長が適切に業務を遂行し、部門を管理監督できるよう、GMP組織上の役職者を会社組織上も整合性の取れたポジションに配置する。また、医薬品製造管理者が製造部と品質管理部を管理監督できる組織体制を構築する。さらに、製造販売業者として品質管理(GQP)業務および製造販売後安全管理(GVP)業務が適正に行われる体制を整備するため、信頼性保証部(GQP-QA)の業務遂行能力、製造所に対する監査・監督機能を強化する。特に、GQP-QA として必要な業務遂行能力を有する人員の補強と教育訓練を繰り返し行うことも明記した。
◎小林化工「役職員による法令遵守を徹底し、全社一丸となって再発防止に取り組む」
小林化工は、「この度の事態を極めて重く受け止めており、業務改善計画の確実な実行を通じて役職員による法令遵守を徹底し、全社一丸となって再発防止に取り組む」とコメントした。一方、福井県健康福祉部は、小林化工から提出された業務改善計画書について、「改善命令に示した内容が計画書に盛り込まれているかどうかについて確認する」とし、その上で実際の状況を踏まえて改善状況などについても確認する方針を示している。