日本では20代の若者の死亡原因のトップは自殺だが、米国CDCが発表した統計によれば、アメリカでは、自殺は若者の死亡原因の第3位（11％）、2位が事件・事故（31％：半数以上が殺人や傷害致死）、トップは交通事故（35％）となっていた。そのほとんどが運転中の携帯電話での会話やテキストメッセージの送受信が原因とあって、「携帯端末に起因する死亡事故は公衆衛生上の重要課題」というのがCDCの認識となっている。（医療ジャーナリスト　西村由美子）

交通事故はコストも高い。米国では、年間35万人前後にのぼると言われるティーンエイジャーの交通事故に起因する治療などに1.4ビリオンドル程度の費用がかかっていると推計されているからだ。

近年の脳科学の研究が明らかにしているのは、携帯電話などの使用が脳に引き起こす変化だ。ゲームで特定の画面に反応するときなどと同様に、携帯電話のテキストメッセージの到着を告げる音を聞くと、脳内にドーパミンがどっと分泌され、そのため「すぐにテキストを見ずにはいられない」気分に駆り立てられるというのである。

問題は携帯画面を見るために運転から注意がそれるというだけではなく、そもそもそういう機器が手の届くところにある状態で運転することへの対処をどうするかということになる。だが、妙案は見いだされていない。

もちろん、問題は必ずしもティーンエイジャーに限られない。オバマ大統領は2009年に国家公務員の運転中のテキスト送受信を禁止する通達を出した。もちろん違反した場合は、即刻クビである。