第一三共・17年度第2四半期 国内医療用医薬品売上高7.8%増の2576億円 抗凝固薬・リクシアナ、AGが牽引
公開日時 2017/11/01 03:50
第一三共は10月31日、2018年3月期(17年度)第二四半期(4~9月)の決算を発表し、国内医療用医薬品の売上高は、対前年同期比7.8%増の2576億円だった。同社の根幹を支えてきたARB・オルメテックの特許切れが17年12月に見込まれる中で、9月には第一三共エスファがオーソライズドジェネリック(AG)を発売。オルメテックの落ち込みをAGや主力製品である抗凝固薬・リクシアナなどの伸長でカバーした。一方で、米国での疼痛事業で「CL-108」の権利返還などによる無形資産の減損損失が響き、連結では増収減益となった。同社の眞鍋淳代表取締役社長兼COOは、減損損失を除けば中期経営計画で今期の目標としていた営業利益1000億円に届いたとの見方を示し、「予定通り進捗している」と強調した。
同社の国内医療用医薬品売上高は、抗凝固薬・リクシアナが197億円(前年同期比82億増)と牽引し、抗潰瘍薬・ネキシウムが447億円(同・26億円増)、2017年7月に「関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制」の適応追加があったプラリアが109億円(同・26億円増)と主力製品が伸長。オルメテック(同・30億円減)、合成抗菌剤・クラビット(同・10億円減)、高コレステロール血症治療薬・メバロチン(同・8億円減)など長期収載品の落ち込みを吸収した。
◎抗凝固薬・リクシアナ 日本人データ武器に「早期のシェアナンバーワン目指す」
抗凝固薬・リクシアナについては、現在直接経口抗凝固薬(DOAC)市場で売上収益シェアは23.5%に拡大し、上位2製品に迫っている。新規患者の処方獲得に注力する中で、新規患者のシェアは3月にトップに立ち、9月時点では38.6%まで拡大した。一方で、国内市場では、ワルファリンからの切り替えが進まず、依然としてDOACの市場は抗凝固薬市場全体の31.6%にとどまっているとの統計もある。DOACの浸透が進むドイツでは6割超とのデータを引き合いに、眞鍋社長は「日本市場のポテンシャルはまだまだあると考えている」との考えを表明した。
同剤では、日本人を対象とした大規模臨床研究が進行中で、こうしたリアルワールドデータの蓄積で同剤のポテンシャル最大化を目指す。眞鍋社長は、“東京オリンピック”をひとつの目安とし、「新規患者のみならず、すべての患者でのシェアで1位になれると考えている。できるだけ早くシェアナンバーワンになりたい」と述べた。
◎第一三共エスファ「当面はAGを一番の売り物に」 AG伸長で前年同期比74億円増
さらに、テルミサルタン、オルメサルタン、ロスバスタチンと3剤のAGを含む第一三共エスファ品の売上高が173億円(前年同期比74億円増)と伸長した。AGが大きく貢献したが、眞鍋社長は、「医療の貢献の観点からすれば、後発品についてはまだまだ抵抗を持ってらっしゃる患者さんがいる」と説明し、AGの医療上の意義を強調した。後発医薬品に先行して発売することで、「かなり高いシェアを先に販売することで得られている。当面はAGというものを一番の売り物にして第一三共エスファとしてはビジネスを続けていたい」と述べた。他社品からのAGも「可能性があるものについては、導入する」考えを示した。一方で、低分子のブロックバスターが減少する中で、大型化が期待できるAGも減ることになることから、今後の販売戦略については検討する考えも示した。
◎連結では増収減益 米国・疼痛事業響く
連結での売上高は、前年同期比2.5%増の4693億9700万円、営業利益は前年同期比で33.5%減の487億5800万円で、増収減益となった。国内医療用医薬品は順調に推移したが、米国でのオピオイドを取り巻く環境が変化したことから、導入していた「CL-108」の権利を返還。これによる無形資産の減損損失として278億円計上したことが響き、減益となった。2018年3月期(2017年度)連結業績予想も、減損分の利益をすべて回復することは困難と判断。売上高は9300億円と据え置いたが、営業利益を5月時点から250億円引下げ、750億円に下方修正した。
米国では、オピオイドの乱用防止をめぐる規制も進む中で、モバンティック、モルファボンド、ロキシボンドの3製品については、「注意深く疼痛事業を展開する」としている。眞鍋社長は、疼痛事業については、中期経営計画で見込んだ進捗が難しいとした上で、国内医療用医薬品が堅調であることや、抗凝固薬・リクシアナの日欧での想定以上に浸透が進んでいると説明。米国でのルイトポルド事業とあわせて、落ち込みをカバーしたい考えを示した。
【17年中間期連結業績(前年同期比) 17年度予想(前年同期比)】
売上高 4693億9700万円(2.5%増) 9300億円(2.6%減)
営業利益 487億5800万円(33.5%減) 750億円(15.7%減)(修正前1000億円)
親会社帰属純利益 342億7800万円(30.0%減) 500億円(6.5%減)(修正前660億円)
【17年度中間期グローバル製品全世界売上高(前年同期実績) 17年度予想、億円】
オルメサルタン 828(1154)1340
エドキサバン 329(161)650
プラスグレル 188(202)非開示
【17年度中間期国内売上高(前年同期実績) 17年度予想、億円】
ネキシウム 447(420)920
メマリー 245(234)540
オルメテック 319(349)470
リクシアナ 197(115)390
ロキソニン 189(188)330
テネリア 132(118)300
プラリア 109(83)230
レザルタス 85(88)160
ランマーク 76(68)150
エフィエント 64(49)130
イナビル 11(6)130
クラビット 64(73)130
ユリーフ 56(58)110
オムニパーク 71(72)110
メバロチン 46(55)100
第一三共エスファ品 173(99)非開示
ワクチン事業 161(147)非開示