フィリップス・ジャパン 「Future Health Index 2024」日本版公表 DX推進で政策転換の必要性強調
公開日時 2024/10/03 04:50
フィリップス・ジャパンは10月2日、駐日オランダ王国大使館大使公邸でヘルスケアリーダーを対象とした意識調査レポート「Future Health Index 2024」の日本版に関する記者発表会を開催した。レポートは、日本のヘルスケアリーダーの90%が医療データの利活用こそが医療を改善すると期待感を抱いていると強調。ただ一方で、テレメディスンやオンライン診療をポジティブに受け止めているとの回答が、世界平均72%に対し、日本は医療従事者16%、患者15%と極めて低調な結果を得た。記者発表会で発言した慶応義塾大学医学部の宮田裕章教授は、「いろんなステークホルダーが活用できる共通基盤を作るべき」と強調。国際医療福祉大学の鈴木康裕学長は、「(データ利活用の環境整備など)政治的な改善が一気に解決をもたらす」と期待を込め、医療DX推進を目的とした政策転換の必要性を強調した。
◎医師の労働負荷の改善にデジタルやAIの活用が進んでいないと警鐘
調査レポートは、①日本の医療システムが抱えるスタッフ不足、②医療データ統合の難しさ、③病院経営における財務的課題-に焦点を当て、これら課題に対応できるデジタルテクノロジーやパートナーシップのあり方などを提言したもの。4月実施の「医師の働き方改革」に絡めながら、「80%のヘルスケアリーダーが、医療従事者の燃え尽き症候群やメンタルヘルスの問題が増加していると回答した」と問題提起した。また、テレメディスンやオンライン診療など“バーチャルケア”の受け止め方について世界各国の調査結果を交えて紹介。ポジティブに感じている医療従事者の割合は、オランダ92%、シンガポール91%だったのに対し、日本は16%と極めて低率になるなど、医療DXの進捗の遅れと相まって、医師の労働負荷の改善にデジタルやAIの活用が他国ほど進んでいないことに警鐘を鳴らしている。
◎医療データの利活用 期待感と裏腹に相互運用性の改善など課題に
医療データの利活用については、「治療計画の最適化(53%)」や「エビデンスに基づくベストプラクティスの特定(43%)」に役立つと考えられる一方で、「データセキュリティとプライバシーの改善(48%)」、「患者データの正確性(45%)」、「異なるプラットフォームや医療環境における相互運用性の改善(41%)」などが課題に挙げられていることも分かった。
◎慶応大・宮田裕章教授「“代替”の発想でなくデジタルやAIで新しいことを実現する」
調査結果を踏まえてトークセッションが行われた。慶応義塾大学医学部の宮田裕章教授は、「日本はケアが広く行き渡っているという便利さがゆえに、わざわざテレメディスンを使わなくてもすぐそこに医療機関があるじゃないと言われてきた」と指摘。加えて、「デジタルリテラシーの低さ、これはユーザー側も提供者側も両方あったと思う」と述べ、デジタルを活用する発想が、「今までは医療のバリュー置き換えという認識があったためだ」と分析。その上で、医師の働き方改革の問題に絡めながら、「労働負荷の軽減を含めて、今までと同じことをする“代替”の発想でなく、デジタルやAIによって世界全体が変わる中で、新しいことを次に実現するために何ができるかを考えるべきだ」と述べ、「新しい医療の姿を(国民やステークホルダーに)見せていく必要があるのではないかと思う」との見解を強調した。
◎国際医療福祉大・鈴木康裕学長「政治的な改善が一気に解決させる」に期待
一方、国際医療福祉大の鈴木康裕学長は、「医師の働き方改革について私は3つの大きな原因があると思う」と前置きした上で、「1つ目は、日本の医療があまりにもフィジシャンセントリックになっている。2つ目は、病床に対する医師の数が日本は明らかに少なく、米国の5倍くらい忙しい。3つ目は、医療DXが進んでいないこと」と説明した。さらに医療DXの遅れについては、「問題は2つある」と指摘。「1つは、病院の電子カルテがオンプレミスでネットワーク繋がっていないこと。もう1つは各医療職種の中で、理由なく診療で知り得た情報を第3者に漏らしてはいけないということがある」と述べ、「例えば、医薬品の開発のためにデータ利用する場合、患者の名前を隠した上で提供することについて未だよくわからない」と述べ、「そのための政治的な改善が一気に解決することになるのではないか」との見解を示した。