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限定出荷 「他社品の影響」と報告も薬価削除、不採算など自社事情の品目が 安定確保会議

公開日時 2024/08/09 06:00
「他社品の影響」として限定出荷の解除に踏み切れないと報告されている品目の中に、不採算による薬価削除や販売中止を予定するなど、自社事情を理由とした限定出荷が含まれていることが浮かび上がってきた。厚生労働省は8月8日の医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議に、限定出荷の解除を妨げている要因を調査・分析した結果を示した。宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、「意図的限定出荷に当たるのではないか。企業のご事情もあるかと思うが、できる限り慎んでいただきたい」と指摘した。厚労省は、薬価削除願が受理されるまでは安定供給の責務があるため、単に不採算であることをもって限定出荷とすることは適切ではないことを周知。日本製薬団体連合会(日薬連)も全製造販売業者を対象にウエブ会議を開くなど、対応を進める方針。

供給不安が続く中で、限定出荷・供給停止の品目は22%(2024年6月時点)で、依然として4分の1程度を占めている。限定出荷の要因としては、「他社品の影響」が最多であるものの、詳細な要因分析が行われていなかった。

そこで、厚労省は限定出荷の解除を妨げている要因を調査・分析した。まず、試行的調査として、日薬連の協力の下、需要量の季節変動が少ないと考えられる慢性疾患治療薬で、規格内の限定出荷品目数が比較的少ない68品目31社を対象に実施した。

◎限定出荷を続ける理由が曖昧、薬価削除、不採算を理由に限定出荷も

限定出荷の要因として、原材料調達の問題など解除が難しいケースがある一方で、企業努力で限定出荷が解除できる品目が22 品目(約32%)を占めた。具体的には、問い合わせをきっかけに解除が可能と判断されるケースや、限定出荷を続ける理由が曖昧なケースがあった。また、薬価削除願提出前であるにもかかわらず、薬価削除に向けて対応中であることを理由に限定出荷としている製品や、不採算を理由に、限定出荷又は供給停止を続けている製品もあった。

このため、厚労省は、企業に対応を促すことで限定出荷の解除が可能と考えられる事例の改めて自社製品の供給状況を確認し、限定出荷の解除が可能となる具体的要件を明確にするよう働きかけているという。また、薬価削除願が受理されるまでは安定供給の責務があるため、単に不採算であることをもって限定出荷とすることは適切ではないことを周知しているという。

◎限定出荷(他社品の影響)と報告373品目 解除は73品目、実際は自社事情が59品目

厚労省は日薬連の協力の下、さらなる調査を実施。全ての医療用医薬品に範囲を拡大し、「通常出荷品目の割合が数量ベースで多い成分規格」で、限定出荷(他社品の影響)となっている373品目について、厚労省が解除するよう働きかけを行った。

その結果、「解除につながった又は解除時期が明確になった」品目が73品目(約23%、解除可能:23品目、条件付きで解除可能:50品目)あった。他社事情と報告されていたが、自社事情に報告の変更を求められた品目が59品目。このうち、薬価削除を予定している品目が32品目、販売中止を検討するなどしている品目が27品目だった。

◎企業だけの対応では難しい品目も 独禁法等の競争政策上の観点にも留意しつつ検討

一方で、同成分規格の限定出荷品目が全て一斉に解除されることが条件とされた42品目については、単に企業に対応を促すだけでは解消できないとして、「成分規格単位で限定出荷品目の製造販売業者が、限定出荷解除の可否をより具体的に検討するための方策について、独禁法等の競争政策上の観点にも留意しつつ検討する」姿勢を示した。

◎宮川構成員「国民に対する裏切りでは」 國廣参考人「全製販対象の会議で周知」

宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、薬価削除や不採算を理由とした限定出荷(他社品の影響)について、「企業のご事情もあるかと思うが、できる限り慎んでいただきたい。企業のホームページには、“患者さん中心”、“サービス・テクノロジーで患者さんに貢献”、“常に人々の健康を守るために薬を提供する”と書いてある。社是も含めて企業が表明している。企業には利潤を追求するという形もあるが、薬価削除や不採算を理由とした限定出荷は本来から見れば、国民に対する裏切りではないか」と厳しく指摘した。「国民は、医薬品企業にあるべき姿を期待している。医師も薬剤師も、薬がなければ困窮する。企業にはしっかり情報公開していただき、理由が詳らかになっているところで是正していただきたい。できる限りの対応をお願いしたい」と述べた。

これに対し、國廣吉臣参考人(日本製薬団体連合会 安定確保委員会供給不安解消タスクフォースリーダー)は、「薬価削除プロセスが完了し、承認が得られるまでの間は通常出荷を続けるべきだ。徹底してきたが、十分ではなかった点もあると思う。その点も理解していただく機会を設けるためにも、全製造販売業者を対象にウエブ会議を開かなければいけないと思っている。担当者が変わることもあり、ぜひそういう機会を作りたい」と応じた。

宮川構成員は、「1年半の間に、そんなに担当者はコロコロ変わるのか。記録もあるだろうし、しっかり対応していただくのが企業だと思うので、ぜひよろしくお願いしたい」と述べた。

厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課 ベンチャー等支援戦略室の藤井大資室長は、「薬価削除願提出前の自発的な供給停止・限定出荷についての話があったが、我々としても業界としてもよく連携を進めていきたいと思っている。行政からの周知が不十分という面もあると思うので、我々も協会のウエブ会議などに参加し、より強く周知していきたい」と述べた。

◎市場実勢価主義の薬価 「誰が薬価を下げているのか?容認しているのか?」と指摘も

同日の検討会では、医薬品の供給不安の観点から薬価についても議論が及んだ。宮川構成員が、「卸の方も色々困窮する状況はあるかと思っているが、誰が薬価を下げているのか。誰が容認しているのか」と指摘。「薬価を下げている人が困窮している、困っていると自ら言うが実際に下げなければいいのではないかということになってしまうのが原則だ」と続けた。

さらに、「実際にそう売っている企業があるからだ。自ら薬価を下げる。私も聞いているが、“大変ご迷惑をおかけしました。これだけ下げます”と言ってかなりの下げ幅を提示していく。自らで自らの首を絞めて、被害者のごとくお話をされる。私も企業としてはわかるが、これが安定供給の根源になっている」と強調。「企業も医療関係者も卸も含めて、しっかり対応していかないといけないはずだが、そういう企業が足を引っ張っているという事実はあると思う。それは問題視し、きちんとした対応をしっかり立てていただきたい」と述べた。
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