小林製薬は7月23日、紅麹原料を使ったサプリメントを巡る健康被害問題を受けて、小林章浩代表取締役社長の辞任を発表した。退任後は取締役として被害補償に専念する。小林一雅代表取締役会長も辞任し、特別顧問に就く。後任の代表取締役社長には、山根聡専務取締役サステナビリティ経営本部長が8月8日付で就任するとしている。

◎報告書「健康食品の安全性に対する意識が不十分」

小林製薬は23日付で、外部弁護士でつくる事実検証委員会の調査報告書も公表した。報告書では、「健康食品の安全性に対する意識が不十分」とし、被害発生時の行政報告や製品回収の判断基準が曖昧で、適切な経営判断や、行政などへの適時適切な報告や相談がなされなかったと指摘。「結果として、消費者への注意喚起や製品回収の判断が遅れた」とまとめた。

一連の問題では、2024年1月15日に医師から腎疾患１件の報告があり、2月１日には別の医師から３件の症例報告があったが「危機意識が不十分なままに、消費者への情報提供を直ちに検討せず、注意喚起も行わなかった」などと問題視。公表は3月22日まで遅れたが、「遅くとも2月上旬以降、全社を挙げて早急に対処すべき緊急事態として、消費者の安全を最優先に考え、健康被害の公表や製品回収という選択肢に力点を置き、行政当局に相談して積極的にその力を借りるという姿勢がより強く求められた」と総括した。

◎新社長には山根専務　小林一雅会長も辞任し特別顧問に

こうした対応をめぐる経営責任を踏まえ、一雅会長と章浩社長が辞任する人事を決定。章浩社長と山根専務は24年１～６月の月額報酬の一部を自主返上する。小林製薬は「取締役人事体制の下で信頼回復に努め、2025 年 3 月に開催する定時株主総会で再建とコーポレートガバナンスの抜本的改革を担う経営体制を諮る」としている。

新たに代表取締役社長に就任する山根専務は1960年生まれの64歳。83年に小林製薬に入社し、取締役会室長兼成長戦略室長やグループ統括本社本部長、常務取締役を経て、2016年6月から専務取締役。24年1月からはサステナビリティ経営本部長も務めている。