武田薬品・ウェバー社長CEO 利益率改善に向けた「効率化プログラム」に注力 DD&T推進 株主総会で
公開日時 2024/06/27 04:51
武田薬品のクリストフ・ウェバー代表取締役社長CEOは6月26日の「第148回定時株主総会」で、利益率改善に向けた「効率化プログラム」に注力する方針を株主に説明し、理解を求めた。ウェバー社長CEOは、「利益率拡大は、経営陣にとって重要なテーマ。目標は25年度から毎年100~250ベースポイントのコア営業利益率改善を実現すること」と強調。目標に据えるコア営業利益率30%超達成に向け、①組織のアジリティ、②調達コストの削減、③データ・デジタル&テクノロジー(DD&T)-の各分野に取り組む方針を明示した。また、株主還元へのコミットメントとして、年間の配当金を増額または維持する累進配当を堅持する考え改めて説明し、24年度は196円を配当するとした。質疑では累進配当について株主から疑義が示される場面もあった。
◎より生産性を高めるためのDD&Tへの投資を継続する
株主を前にウェバー社長CEOは、「今後数年間でコア営業利益率を改善するために、組織全体でどのように効率性を高めるか」について説明した。ウェバー社長CEOは同社が注力する「効率化プログラム」を示しながら、「まず、責任範囲を拡大し、役割を幅広くし、業務モデルを洗練させることで、企業全体の機動性を高めるとともにビジネスを簡素化していく」と強調。続けて、「外部支出を最適化し、コストを大幅に削減するために、調達主導のコスト削減に着手する。そして、より早く、より生産性を高めるためにDD&Tへの投資を継続していく」と述べ、理解を求めた。
◎R&D部門では大幅なコスト削減と開発期間の短縮化を実現
特にDD&Tについてウェバー社長CEOは、「データ・デジタル&テクノロジーの可能性を最大限に生かし、より効率的な新薬の発見と提供を実現し、企業を変革することに取り組んできた」と紹介。その成果としてR&D部門では、「AI、リアルワールドエビデンス、デジタルツールを活用し、臨床試験の被験者募集や規制当局への申請を加速している。このアプローチで大幅なコスト削減と開発期間の数年単位での短縮を実現できた」と胸を張った。
◎コマーシャル部門ではデジタル患者体験の最適化
一方、コマーシャル部門においても、「予測分析アルゴリズムを使用して、データ主導の個別対応による医療従事者のエンゲージメントを行い、テクノロジー主導のサポートプログラムの改善を通じて、デジタル患者体験の最適化を図るという例がある」と述べ、その成果を強調した。
◎長期的な成長のための投資を行い、競争力のある株主還元を実現する
ウェバー社長CEOは、「売上収益成長への回帰という戦略において私達は大きな進展を遂げた。開発パイプラインには大きな価値を生み出す可能性のある有望な後期開発プログラムが多数含まれる。また、バリューチェーン全体を通じてコスト管理を徹底し、利益率を高めるための包括的な政策も推進している。これらの成長戦略により強力なキャッシュフローを生み出し、株主還元に貢献できると確信している」と強調した。さらに、株主還元については、「当社の目標は強固な投資適格格付けを維持しながら、長期的な成長のための投資を行い、競争力のある株主還元を実現すること」と述べ、「当社は24年度に196円への更なる増額を提案しており、成長への回帰に対する自信を示している」と株主の理解を求めた。
◎古田未来乃CFO「グローバルの同業他社に遜色ない非常に競争力の高いものになる」
株主との質疑では、剰余金配当とEPS(一株あたり純利益)に関するものがあった。フロアからの質問では、「配当は1株利益の範囲内で行うべき。でないと会社の財産自体が目減りし、そのような配当を継続することが長期的に見て難しくなる。役員賞与等も実入りの中で行うべき」という趣旨の質問が複数あった。
ウェバー社長CEOは、「我々は長期的な展望を持って注意深く短期的なものを見ている。10年間の事業展望と3年の展望の両方をみることで、我々の事業がどういう形で進展していくかが分かる」と述べ、「これによって意思決定を配当に関しても行っている」と説明した。
デビュー戦となった古田未来乃CFOは、「配当金額の決定にあたっては、コアベースのEPSも一つ主要な指標として参考としてみている。2期連続で増配をすることで、当社のコアEPSに基づいた配当性向の指標がグローバルの同業他社に遜色ない非常に競争力の高いものになると考えている」と強調。「来年以降の配当額についても、会計上の利益のみならずキャッシュフローシートを総合的に見ながら、長期的な利益の成長と足並みを揃える形で、累進的に増加させることを目標としている」と説明した。
◎ダイバーシティでローレン・デュプレイ氏 女性管理職割合30%まで引き上げを目標に
このほか質疑ではダイバーシティに関する質問があった。女性管理職の登用を含めた人材育成の計画を開示して欲しいというもの。ウェバー社長CEOは、タケダエグゼクティブチーム(TET)では女性比率が53%になっていると紹介。取締役会は50%未達だが、「TETレベルで50%以上が女性なので、こちらは“時間の問題”」と応じた。
チーフHRオフィサーのローレン・デュプレイ氏は、「全体の従業員ベースは男性70%、女性30%。日本では我々のゴールとして女性比率を増やしていくとともに、管理職に占める女性割合を30%まで引き上げることを目標としている」と明かした。