小野薬品は1月11日、取締役専務執行役員で研究本部長の滝野十一氏を代表取締役社長COOに昇格させるトップ人事を発表した。現社長の相良暁氏は代表取締役会長CEOに就任する。4月1日付。同社にとって2024年度はグローバル企業を目指すとした第2期中期経営計画（2022～2026年度）の3年目を迎える。大阪本社で記者会見に臨んだ相良社長は、「主力品の特許切れがくる。それを克服してさらに成長するには、国内だけの仕事では追いつかない」と強調。海外キャリアが豊富な滝野氏を社長に昇格させることで、グローバル展開に道筋をつける方針を明示した。次期社長に指名された滝野氏も会見で、「身の引き締まる思い。真のグローバルファーマになっていくという使命に非常に燃えている」と決意を語った。

◎代表取締役は「3人体制」　滝野次期社長はグローバル展開などオペレーションに注力

同社の社長交代は15年半ぶり。社外取締役が入る役員人事案検討会議で1年にわたって人選を進めてきたという。これまで代表取締役は相良氏1人体制だったが、新体制では、滝野氏と新たに副社長執行役員・経営戦略本部長（兼）サステナビリティ推進部長に就任する辻中聡浩氏を加えた３人体制となる。同日の会見で相良現社長は、「滝野氏はグローバル展開や研究開発・自販体制を推進するオペレーションに注力し、辻中氏は国内の経営基盤を支える。そして私が2人を総括的にサポートする3人体制が望ましいと考えた」と説明した。

◎“外を使って内を強くする”　アカデミア、バイオベンチャーとの協業視野に創薬力強化

滝野氏は、研究開発のバックグラウンドを持ちながら、20年以上にわたり化合物をベースにした事業開発、ライセンス、初のアジアの海外展開の立ち上げなどに関わった。さらに英米での駐在経験もあり、現地のバイオベンチャーと仕事する機会もあったという。こうした経験から現職の研究本部においては、「とにかく社外のアカデミア、ベンチャーなどを多く見ながら、自社の創薬力を高めていく。“外を使って内を強くする”という標語のもとで内向きになる研究においても、外を見るっていうような取り組みをやってきた」と振り返り、「研究開発、 事業開発、ライセンス、あるいはM＆Aも視野に含めることで、真のグローバルファーマを目指していく」と力を込めた。

◎外部から化合物ベースでアセットを取り込むことが1番の打ち手

小野薬品にとって今回のトップマネジメントの刷新は新たな経営課題への挑戦でもある。2028年に米国での特許切れを契機とするオプジーボクリフを迎えるほか、複数製品の特許切れやロイヤルティ収入の終了が25～26年度に集中する。滝野氏は、「ポストオプジーボという観点だと、外部から化合物ベースでアセットを取り込んでいくということが１番有効な打ち手になると思う。（その方法は）化合物だけなのか、会社丸ごとM＆Aになるのかわからないが、事業開発ライセンスの重要性は非常に感じている」と指摘。そのうえで米国で最も開発が進んでいる抗がん剤・チラブルチニブ塩酸塩（国内製品名：ベレキシブル）について触れ、「同製品は血液内科と中枢のハイブリットで比較的ニッチな領域のものだ。そこで2品目、3品目がくるとありがたい」と述べた。

滝野氏はまた、「製薬会社なので患者さんの応援団であることに間違いないが、私は社内の社員に対しても応援団でありたいと思っている。仕事の中で失敗や成功をしながら、苦しい難しい、働きにくいような思いをしているかもしれないので、必要な時には自分が前に出て、皆さんを応援していくスタイルでやっていきたい」と抱負を述べた。

滝野氏は1968年１月生まれの55歳。1995年に京都大学大学院薬学研究科を修了し、同年に同社に入社。国際部長（2006年）、事業開発部長（2007年）を経て、2009年には米国子会社のオノ・ファーマ・ユーエスエー・インクの副社長を務めた。その後2011年に執行役員に就任し、事業戦略本部長、研究統括本部長、研究本部長を歴任。2021年から現任の取締役専務執行役員研究本部長を務めていた。