バイタルケーエスケーHD・村井社長 貢献利益に基づく価格交渉で「利益増」 データで得意先と話し込み
公開日時 2023/11/13 04:48
バイタルケーエスケー・ホールディングスの村井泰介代表取締役社長は11月10日の2023年度第2四半期決算説明会で、同社が推進する「貢献利益(得意先別営業利益)」に基づく価格交渉などの取り組みが利益増につながったと強調した。個々の医薬品の価値を踏まえた適切な取引を徹底し、流通コストを考慮しない過剰な値引きを要求するような得意先との取引を優先的に見直したという。この結果、上期の医薬品卸売事業の売上総利益は前年同期比3.3%増の197億6000万円となり、営業利益は前年同期に計上した一部大口得意先債権に係る貸倒引当金の反動もあり89.6%増の26億4000万円と大幅な増益となった。
◎燃料価格・物価高騰、CO2削減など社会課題解決で至急配送を有料化 至急回数も76%減少
村井社長は、人手不足や働き方改革、燃料価格や物価の高騰、CO2削減といった共通の社会課題の解決に向け、一部得意先との協働を開始したことを明らかにした。具体的には、あるチェーン薬局と至急配送の有料化で合意したことにより、至急配送回数が76%減少したという。また、あるエリアで得意先と効果的・効率的な配送タイミングを見いだしたことで、配送回数が33%削減され、商品受け渡しにかかる得意先の作業中断が改善し、同社の物流人員の超過勤務時間も50%減少したという。
村井社長は「貢献利益に関するデータがだいぶ集まってきており、エビデンスをもとに得意先と話せるようになったことが最大の強みと感じている。今後2024年問題を考えると、こうした活動は全社的にもっともっと広げていきたい」と語った。
◎GSKとの取引停止による上期影響は△68億円 ただ外資系トータル実績で減少分を吸収
GSKとの取引停止による上期売上への影響はマイナス68億円だったが、岡本総一郎代表取締役副社長は「当社グループを応援していただいた外資系企業も多く、その中には緊密な連携により大きな伸長を示した企業もあり、第2四半期の外資系製薬企業トータルの実績では、68億円の減少分を吸収し、前同101%となった」と指摘した。
同社が23年5月に発表した「長期ビジョン2035」では、医薬品卸売事業に過度に依存した事業モデルからの脱却を掲げている。一つの柱となる「メディカル関連商材の拡販」の取り組みとして、病院市場での営業体制を強化するため、病院の治療や医薬品、医療機器、診断薬等に精通したMAPs(メディカル・アシスト・パートナーズ)を22年7月に導入した。一條武代表取締役副社長は「MAPsの約1年間の活動を通して、新たに訪問できた診療科が85件、新たに接点が生まれたドクターが112人と着実に進化している。医療機器や検査薬等のメディカル関連商品でこれまでになかった取引が増えており、医療用医薬品以外の売り上げ増にも努めていく」と述べた。
◎上期業績 売上高は前年同期比1.4%増、営業利益は88.6%増
上期業績は、売上高が前年同期比1.4%増の2942億1300万円、営業利益が88.6%増の28億6800万円、経常利益が43.5%増の34億7800万円、親会社株主帰属純利益が63.3%増の23億4700万円の増収・大幅増益だった。医薬品卸売事業の売上高は、一部外資系製薬企業(GSK)との取引停止や新型コロナ関連検査試薬・機器等の販売の落ち込みがあったものの、新型コロナ治療薬の販売が大きく伸長したことにより1.2%増の2772億100万円となった。
通期業績予想は変更していない。通期計画に対する上期営業利益の進捗率は61%、経常利益は58%に達しているが、10月から患者自己負担が発生することで、新型コロナ治療薬販売の大幅減を見込んでいるとした。