NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションは10月26日、循環器系の医薬品を提供する製薬企業15社のNPSベンチマーク調査結果を公表した。15社から情報提供を受けている医師の回答によると、NPSトップ企業とボトム企業では31.7ポイントの開きがあった。医師のロイヤルティを要因分析したところ、MRの「専門知識の高さ」、「親身な対応・役に立ちたいという姿勢」、「期待するスピード感での対応」がロイヤルティ向上につながっていることが分かった。逆にNPS下位企業では、「訪問が多すぎる」、「MRとあまり関わりが少ない」といったＭＲの情報提供の頻度に関してネガティブなコメントも見られた。

今回のNPSベンチマーク調査は、製薬企業から医療用医薬品に関する情報提供を受けている循環器系の医師（主に従事している診療科が循環器内科、循環器外科・心臓血管外科）を対象に行った。有効回答数は1003件。調査期間は2023年9月6日～9月19日。

調査対象企業は、MSD、アステラス製薬、アストラゼネカ、大塚製薬、小野薬品工業、住友ファーマ、第一三共、武田薬品、田辺三菱、日本ベーリンガーインゲルハイム、ノバルティスファーマ、バイエル薬品、ファイザー、ブリストルマイヤーズスクイブ、持田製薬－の15社。

◎推奨度が高いほど継続利用意向が高くなる傾向

調査結果によると、製薬企業15社のうち、NPSのトップは2社同率で1.6ポイント。トップ企業とボトム企業の差は31.7ポイントあった。15社のNPS平均は－14.7ポイントとなった。

NPSの結果と処方意向について見た。今後の薬剤の処方意向を0～10の11段階でたずねたところ、「推奨者」（推奨度が9～10の回答者）は平均9.3ポイント、「中立者」（推奨度が7～8の回答者）は平均7.7ポイント、「批判者」（推奨度が0～6の回答者）は平均5.8ポイントとなり、推奨度が高いほど継続利用意向も高くなる傾向を得た。

◎ロイヤルティの要因分析　ＭＲの「連絡頻度やタイミングの適切さ」は改善への期待も

業界全体におけるロイヤルティの要因を項目別に分析したところ、「医薬品の性能やコストパフォーマンスの良さ」に加え、「製薬企業の信頼性」や「製薬企業の患者視点に立った活動・取り組み」がロイヤルティを醸成する要因となった。また、「製薬企業主催の講演会、勉強会の充実度」や「製薬企業によるWeb講演会の充実度」など講演会に関する項目や、MRの「専門知識の高さ」、「親身な対応・役に立ちたいという姿勢」、「期待するスピード感での対応」もロイヤルティ向上につながっていることが分かった。一方で、一方で、MRの「連絡頻度やタイミングの適切さ」については、今後の改善が期待される結果となった。

医師の自由回答からNPS上位企業の傾向をみると、「即答できない質問は熱心に調べて報告してくれる」、「専門性の高いことを尋ねると、学術部を通してとても参考になる文献や参照出来る動画のアクセスサイトを紹介してくれた」といった、医師の役に立ちたいという姿勢に関するコメントが多くあった。一方でNPS下位企業においては、「訪問が多すぎる」、「MRとあまり関わりが少ない」といったMRの情報提供の頻度に関するネガティブなコメントが散見された。

◎HP、GP別のNPS　病院勤務医の方が高い傾向も

病院勤務医（HP）と開業医（GP・100床未満の勤務医含む）に分けてNPSの結果をみると、HPでは-12.6ポイント、GPは-19.4ポイントとなり、HPのNPSの方が高い傾向を示した。一方でGPについては、MRの「連絡頻度やタイミングの適切さ」に加え、「医療情報メディアでの製薬企業からの適切な情報提供」や「医師以外の医療従事者へのサポートの充実度」においても、今後の改善が期待される結果となった。

◎「患者向けの治療用アプリの開発・提供」は4割程度　ロイヤルティ向上の打ち手に期待

製薬企業が行う患者向けの取り組みをみると、「患者向けの薬剤情報の提供」の回答が63.1%で最も高く、次いで「患者向けの病気・疾患に関する情報提供」が61.5%となった。「患者向けの治療用アプリの開発・提供」は4割程度にとどまった。ただ、NPSの評価でみると、治療用アプリの開発・提供については非常に高く、ロイヤルティの向上にも重要であることが示唆された。