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中医協薬価専門部会 24年度改定に向けて議論開始 支払側・松本委員「薬価制度以外の対応含めた幅広い議論を」

公開日時 2023/06/22 04:52
中医協薬価専門部会は6月21日、2024年度薬価改定に向けて議論を開始した。新薬創出等加算や長期収載品の薬価算定ルール見直しなどが焦点となる。「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が取りまとめた報告書で指摘された事項も論点にあがり、薬事や産業政策を踏まえて薬価制度のあり方を見直す議論が進む方向性が示された。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、イノベーションの評価について“充実”が議論の前提とならないよう釘を刺したうえで、「薬価制度全体のバランス、さらには薬価制度以外の対応も含めて、幅広い視点で議論する必要があるということを強く主張する」と強調した。

◎新薬創出等加算や長期収載品の薬価算定ルールが論点に

厚労省保険局医療課は24年度薬価改定に向けた主な課題を提示した。23年度薬価改定骨子に記載されている、「新薬創出等加算や長期収載品に関する薬価算定ルールの見直し」、「革新的新薬の日本への導入の状況や安定供給上の課題も踏まえた、これまでの薬価制度改革の検証」などが論点となる。長期収載品については、6月16日閣議決定された骨太方針で、「自己負担のあり方の見直し」が盛り込まれており、今後の議論の焦点となる。また、23年度薬価改定の骨子には、有識者検討会が取りまとめた報告書での議論を含めた議論も踏まえて検討を行うとされており、この日の中医協では有識者検討会の報告書をめぐる意見も診療・支払各側から出た。

◎安川薬剤管理官「薬価以外の関連の動きも示しながら議論進める」

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「産業政策全体については有識者検討会が、そして薬価制度については、この中医協が担当するということでよろしいか。すなわち、この検討会の報告書は、中医協で、薬価制度改革の議論する際の参考資料という位置づけでよろしいか」と質した。

これに対し、厚労省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、「有識者検討会の報告書自体は全体的な医薬品に関する課題を取りまとめており、産業構造の変化の必要性あるいは薬事制度の見直し、薬価制度、流通制度も含めた様々な観点が報告書には盛り込まれていると認識している。薬価制度に関しては中医協でご議論いただき、決定いただく事項ということ。今後、課題を提示する際には薬価に関するところも報告書を踏まえて課題を提示し、改めてきちんとこちらの方で議論いただく」と応じた。さらに、有識者検討会の議論について、「様々な課題がある中で課題整理をしているものであり、薬価のご意見をいただく際に、必要に応じて関係の動きが今どうなってるかなどもお示ししながら、議論をまとめていく必要もあると思っている。その辺りは適宜ご報告しながら進めていきたい」と述べた。

◎4大臣合意 支払側「十分に踏まえるべき」 診療側「環境は大きく変化、丁寧な議論を」

薬価改定に際しては、2016年末に4大臣合意された「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に基づいて行うことが基本路線となっている。

支払側の松本委員は、「今後も医療保険財政に大きな影響を及ぼす新薬が出てくることが想定される中で、4大臣合意にある国民皆保険の持続性とイノベーションの推進を両立させることは、引き続き不可欠であるということは十分に踏まえるべき」と念を押した。そのうえで、「特にイノベーションの推進にあたっては、適正化とセットで議論すべきであり、評価の充実を前提とするのではなく、薬価制度全体のバランス、さらには薬価制度以外の対応も含めて、幅広い視点で議論する必要があるということを強く主張する」と述べた。

一方、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「薬価制度抜本改革に向けた基本方針は18年度に示されたものであり、それ以降、新型コロナウイルス感染症の流行、6年連続の薬価改定、医薬品の供給問題、物価や賃金高騰など、ここ数年でめまぐるしく医療現場の環境は変化している。特に薬局において、薬価の中間年改定は、経営に深刻な影響を受けている」と説明。基本方針に、「薬価制度の改革により影響を受ける関係者の経営実態についても機動的に把握し、その結果を踏まえ、必要に応じて対応を検討し、結論を得る」と盛り込まれていることに触れ、「影響を丁寧に見つつ進めていくことが必要ではないか。基本方針が示された18年の状況と現状を照らし合わせて、今の薬価制度が適切な視点になっているのか、この辺りは念頭に置いて議論を進めていくべき」と述べた。

◎医薬品の安定供給 後発品の産業構造見直しの必要性指摘する声相次ぐ

医薬品の安定供給をめぐっては、産業構造を見直す必要性を指摘する声があがった。支払側の松本委員は、「産業構造の見直しと密接に関係しているため、厚生労働省の対応のみならず、業界の取り組みも十分注視しながら、慎重に議論を進めるべき」と述べた。支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)も、「医薬品業界の構造的な課題に端を発するものであり、診療報酬上の評価に対する対応では、問題の根本的な解決にはつながらない。安定供給の実現には、後発品業界全体の再編、すなわち産業構造の見直しが必要だ」と述べ、幅広い視点での議論のために、余裕を持ったスケジュール調整を事務局に要請した。また、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの解消に向けて、「国際共同治験の強化のために、ルール作りを早急にしていただきたい」と指摘した。

◎調整幅で支払側 流通コストの調査求める 過度な薬価差「今後も突っ込んだ議論が必要」

「調整幅のあり方」も主な課題に示されている。支払側の松本委員は、有識者検討会の報告書に「購入主体別やカテゴリー別の取引価格の状況や過度な値引き要求等の詳細を調査する」と盛り込まれたことに触れたうえで、「流通コストについても詳しく調査をしていただき、中医協で議論するデータとして提出いただきたい」と述べた。

支払側の安藤委員は、有識者検討会で“過度な薬価差の偏在”が指摘されたことに触れ、「この薬価差の問題は、社会保障制度の持続性という観点から見て、早急に取り組み、解決に向けた対策が必要ではないかと考えている。また、過度な薬価差が発生する問題と薬価差の偏在の問題につきまして、今後も突っ込んだ議論が必要であるというふうに考えている」と述べた。

今後は、7月に業界ヒアリングを行い、その後各論の議論に入り、年末に向けて検討を進める。なお、同日中医協薬価専門部会の部会長に新たに安川文朗氏(京都女子大データサイエンス学部教授)が就いた。

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