2022年度の国内医療用医薬品市場は、10兆9688億円(薬価ベース、1億円未満切捨て)と過去最高となった。前年度から2.6%成長した。IQVIAが6月1日に発表した2022年度(22年4月~23年3月、会計年度)のデータからわかった。新型コロナの診断薬に加え、一般流通に移行した治療薬のベクルリーやラゲブリオが市場拡大に寄与。製品売上1位のがん免疫療法薬・オプジーボが前年度比26.7%増の1588億円を売り上げたことも市場をけん引した。
文末の「関連ファイル」に、22年度の市場規模や売上上位10製品の売上データなどをまとめた資料を掲載誌しました(ミクスOnlineの有料会員のみ閲覧できます。
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IQVIAの市場データは、医薬品卸と医療機関との間で発生する売上データがソースとなっている。このため、同データには政府一括購入対象の新型コロナのワクチンや治療薬は含まれない。
◎国内市場約2800億円拡大
22年4月に薬価通常改定が行われ、薬剤費ベースで6.69%引き下げられたが、国内市場は約2800億円拡大した。市場別にみると、100床以上の病院市場は5兆938億円(前年度比2.5%増)、100床未満の開業医市場は2兆735億円(3.7%増)、主に調剤薬局で構成する「薬局その他」市場は3兆8014億円(2.2%増)――で、3市場とも前年度に引き続きプラス成長となった。新型コロナによる受診控えの影響が特に大きく出た開業医市場は、21年度の伸び率が0.4%増だったことから、22年度の復調度合いの大きさがわかる。
◎新型コロナ治療薬 ベクルリーは1077億円 ラゲブリオは727億円
22年度は、新型コロナの感染拡大により、診断用検査試薬市場が前年度比45.8%増の4508億円、全身性抗ウイルス薬市場が同77.6%増の3571億円となった。これが市場拡大の主因のひとつとなる。全身性抗ウイルス薬市場を詳細に見ると、21年10月から一般流通を開始した新型コロナ治療薬・ベクルリーの22年度売上は1077億円、22年9月16日から一般流通を開始した経口新型コロナ治療薬・ラゲブリオは727億円(ミクスが四半期売上を集計)で、両剤が市場全体を押し上げた。
◎新型コロナの検査薬・治療薬の四半期推移 23年1~3月の減少顕著
ただ、四半期ごとの売上推移をみると、診断用検査試薬市場は22年4~6月869億円、7~9月1457億円、10~12月1309億円、23年1~3月871億円――と推移しており、コロナ禍の鎮静化と並行するように市場縮小している。
全身性抗ウイルス薬市場も22年7~9月886億円、10~12月1342億円、23年1~3月846億円――と推移。さらにIQVIAの開示情報をもとにラゲブリオの売上推移をみると、7~9月61億円、10~12月478億円、23年1~3月188億円――となっている。1日の新規感染者数が20万人を超えた日もあった“第8波”の期間にあたる10~12月をピークに、新型コロナ治療薬も縮小局面に入ったことがデータからも読み取れる。
◎売上1000億円超はオプジーボ、キイトルーダ、リクシアナ、タグリッソ、タケキャブ、ベクルリー
22年度の製品売上上位10製品をみると、1位はオプジーボ(1588億円、26.7%増)、2位はがん免疫療法薬・キイトルーダ(1346億円、12.6%増)、3位は抗凝固薬・リクシアナ(1202億円、15.2%増)、4位は抗がん剤・タグリッソ(1111億円、7.1%増)、5位は抗潰瘍薬・タケキャブ(1110億円、2.6%減)、6位はベクルリー(1077億円、408.2%増)――で、これら6製品が売上1000億円超製品となった。
オプジーボは2年連続の首位。新薬創出等加算品として22年4月改定では薬価は据え置かれたが、21年8月に市場拡大再算定類似品として11.5%の薬価引下げを受けている。それでも胃がん1次治療や、食道がん1次治療及び術後補助療法といった消化器がんでの使用が進み大幅増とした。
キイトルーダは2年連続の2位。3位のリクシアナと4位のタグリッソはともに順位を1つ上げた。両剤とも処方が伸びたことに加え、前年度3位のタケキャブが特例拡大再算定により薬価が15.8%引き下げられて5位に後退したことも、今回の順位の変動につながった。ベクルリーは一気にトップ10入りした。
売上7位は降圧剤・アジルバ(888億円、2.1%増)、8位は加齢黄斑変性症治療薬・アイリーア(872億円、0.6%増)、9位は抗がん剤・アバスチン(808億円、17.8%減)、10位は抗凝固薬・イグザレルト(801億円、1.2%減)――だった。
◎企業別売上 中外製薬が2年連続の首位
企業売上ランキングを見てみる。「販促会社ベース」(販促会社が2社以上の場合、製造承認を持っているなどオリジネーターにより近い製薬企業に売上を計上して集計したもの)では、上位5社のランキングは前年度と変わらず、1位は中外製薬(売上5323億円、前年度比1.4%増)、2位は武田薬品(4976億円、1.5%減)、3位はアストラゼネカ(4544億円、4.6%増)、4位は第一三共(4288億円、6.3%増)、5位はヤンセンファーマ(4020億円、7.7%増)――だった。
中外製薬は2年連続の首位となる。なお、政府が購入している新型コロナ治療薬・ロナプリーブはIQVIAの売上データには含まれない。
◎企業別売上 2ケタ増収は3社 2ケタ減収は2社
上位20社のうち前年度比10%超の伸び率を示したのは、ラゲブリオやキイトルーダを手掛けるMSD(3954億円、24.7%増、6位)、オプジーボが好調な小野薬品(2528億円、13.5%増、11位)、ベクルリーを手掛けるギリアド・サイエンシズ(1866億円、108.3%増、20位)の3社だった。
一方、前年度比10%超のマイナス成長となったのは12位のファイザー(2375億円、18.9%減)と13位の日本イーライリリー(2366億円、13.4%減)の2社だった。ファイザーは21年9月にリリカやバイアグラなど14製品の製造販売承認及び販売権をヴィアトリス製薬に承継・移管したほか、22年4月改定でビンダケルが用法用量再算定により薬価が75%引き下げられた影響も大きかったとみられる。
日本イーライリリーは21年に登場したサインバルタやアリムタの後発品影響に加え、22年4月改定で両剤とも新薬創出等加算の累積下げがあり、サインバルタは薬価が24.8%引下げ、アリムタは34.5%引下げられた影響も大きかったとみられる。主力のトルリシティも市場拡大再算定で薬価が11.1%引き下げられたことも響いた。