協和キリン 糖尿病性腎臓病治療薬候補・RTA402の開発中止 国内P3で末期腎不全の抑制効果得られず
公開日時 2023/05/11 04:49
協和キリンは5月10日、糖尿病性腎臓病治療薬候補・バルドキソロンメチル(開発番号:RTA402)の開発を中止すると発表した。国内第3相臨床試験で、eGFRの改善を認めたものの、ESRD(末期腎不全)の発現を抑制する結果が得られなかったため。あわせて、2021年7月に国内申請したアルポート症候群を対象とした申請も取下げ、開発を中止した。
RTA402はリアタファーマシューティカルズ(米国テキサス州)から導入した低分子化合物。糖尿病性腎臓病を対象に厚生労働省の「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されていた。同社は2018年5月から糖尿病性腎臓病を対象に、RTA 402もしくはプラセボを1 日1回反復経口投与し、RTA402 の有効性および安全性を評価する多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験とする国内第3相臨床試験(AYAME 試験)を行った。その際のPMDAとの協議では、製造販売承認申請を行うに際しては、主要評価項目、重要な副次評価項目のほかに、ESRD(末期腎不全)が最初に発現するまでの期間に関する結果等も踏まえて議論するとしていた。
◎主要評価項目、重要な副次評価項目は達成も「ESRD が最初に発現する期間」は差が認められず
同社の発表によると、プラセボ投与群とRTA402投与群を比較したところ、「ベースラインから30%以上のeGFR低下またはESRD」、「ベースラインから40%以上のeGFR低下またはESRD」に対し、RTA402投与群で統計学的に有意な改善が認められ、主要評価項目および重要な副次評価項目を達成した。一方で、「ESRD が最初に発現するまでの期間」については、両群間で差は認められなかった。安全性については両群間で大きな問題は見られていない。この結果を踏まえ、医療専門家やPMDAと協議し、「RTA 402 の糖尿病性腎臓病に係る製造販売承認申請を行うことは困難」と判断し、開発中止の決定に至った。
◎アルポート症候群を対象の申請も取下げ、開発中止
今回の判断を受け、2021年7月に行ったアルポート症候群を対象としたRTA402の製造販売承認申請を取り下げるとともに、当該効能についての開発も中止した。
なお、同社は2009年12月24日にリアタ社との間で、RTA402の日本、中国、台湾、韓国、東南アジア諸国における腎疾患などを対象とした独占的開発・販売権を取得するライセンス契約を締結している。今回の判断を受け、現在アルポート症候群及び常染色体優性多発性嚢胞腎を対象に実施している臨床試験への治験国内管理人としての参加終了に向け、リアタ社との協議を開始したことも明らかにした。