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8割超「医師の働き方改革」による教育・研究への影響懸念 ICT導入加速要望も 全国医学部長病院長会議

公開日時 2023/04/19 04:52
医師の時間外・休日労働の上限規制により、教育・研究に与える影響が大きいと回答した大学病院は8割超-。原則として時間外・休日労働が原則960時間までに規制される医師の働き方改革が24年度からスタートすることを踏まえ、全国医学部長病院長会議は4月18日、全国の大学病院を対象に実施したアンケート調査結果を公表した。24年度に上限規制を超え、特例申請を行う見通しである大学病院の医師数が約3割に当たる約1万5000人に上るとの推計も公表した。全国医学部長病院長会議では、医師の増員に加え、教育・研究の効率化を図るためのICT化の推進など、医師の働き方改革と、大学病院の機能維持・発展を両立させる対策の必要性を強調している。

調査は、文部科学省の委託事業として、昨年7~12月に実施。全国81大学(国立:42 大学、公立:8大学、私立:31大学)、981人の医師から回答を得た。

調査結果によると、労働時間の短縮により予想される影響として、「研究時間の確保ができなくなり、研究成果が減少する」(90.1%)が最多。「臨床実習で必要な時間の確保が出来なくなり、臨床教育の質の低下が生じる」(88.9%)、「授業の準備に必要な時間の確保が出来なくなり、教育の質の低下が生じる」(84.0%)などが続いた。

◎「我が国の医学・医療と日本の将来に重大な影響を及ぼしかねない」

日本の大学病院は、臨床だけでなく、研究、教育も一体的に担うことが機能とされているが、現段階でも診療に従事する時間が最も長い。同調査でも、診療比率は6割を超える。教育、研究の主力を担う助教では、診療比率が7割を超えており、15%は全く研究を行っておらず、約50%は週当たりの研究時間が5時間以下にとどまっているなど、深刻な状況であることが浮き彫りとなった。全国医学部長病院長会議は、「日本の研究力低下が深刻視されるなか、医師の時間外・休日労働時間の上限規制に伴い、研究にさらなる打撃が加わることは、我が国の医学・医療と日本の将来に重大な影響を及ぼしかねない」と懸念を露わにした。

◎教育・研究の効率化を図るICT導入で財源措置を

このため、医師の増員に加え、教育・研究の効率化を図るためのICT化の推進が必要として、このための財源措置の必要性も指摘した。調査では、ICT化の推進は業務効率化に寄与するとの回答が「感じる」(28.4%)、「やや感じる」(37.3%)をあわせた65.7%に上った。具体例としては、臨床研究支援のためのEDCの導入や分散型臨床試験の導入など、ICT化の推進の必要性を指摘。「IT環境整備、バーチャルリアリティを活用する実践的な実習機器や研究を効率的に進めるシステムの開発環境と言った教育・研究の実施のためのサポートは不可欠」とした。

具体的な事例として、東京大学医学部付属病院では、20台のAR/VRゴーグルを活用し、作業工程を表示させてトレーニング。皮下注射に関するコンテンツを学生に使用させ、アンケートを取ったところ、非常に好評だったことも紹介。「何度でも自主練習が可能であり、指導員が不在でも手軽に行え、失敗しても苦痛を与えず医療資源を必要としないメリットがある」などとしている。

◎「B水準、連携B水準」の医師数は約3割、1万5000人の見通し

調査では、地域医療確保の観点から暫定的な特例として設けられた、「地域医療確保暫定特例水準(B水準、連携B水準、960~1860時間以下)に申請予定の医師数は約3割に当たる1万5070人との見通しも公表。特例申請を必要としない(A水準、960時間以下)医師数は47.9%(2万1179人)だった。専門業務型裁量労働制は17.9%(7934人)。暫定特例水準は35年度末の解消が目標とされていることから、「大学病院の機能を維持していくことが困難となることが想定される」として危機感を示している。


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