秋田県 ニプロファーマに業務改善命令 大館工場で承認書と異なる製造・試験実施 虚偽の記録作成など
公開日時 2023/02/24 13:20
秋田県は2月24日、ニプロファーマの大館工場(大館市)の製造品について、承認書と異なる方法により製造および試験を行っていたとして医薬品製造業の業務改善命令を下した。主な違反内容は、①承認書と異なる方法で試験を行っていた、②一部の試験を実施せずに、虚偽の記録を作成した、③規格に適合しない試験結果となった場合において、原因を究明して所要の是正措置をとらず、虚偽の記録を作成した―というもの。秋田県健康福祉部医務薬事課は、概ね1か月以内に同社に業務改善計画等の提出を求めた。これに対し、ニプロファーマは同日、秋田県からの行政処分を受け、「患者さまとそのご家族、医療関係者の皆さま、その他のステークホルダーの皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪した。
秋田県によると、ニプロファーマ大館工場の違反内容は、承認書と異なる方法により製造および試験を行っていたことに加えて、製造・品質関連業務を適正かつ円滑に実施しうる能力を有する責任者を適切に置かなかったことおよび製造・品質関連業務を適切に実施しうる能力を有する人員を十分に確保しなかったことをあげた。さらに、試験検査を行うのに必要な検体の採取、試験検査用の標準品の管理及び製品等のロットごとの試験検査に係る業務を適切に行わず、試験検査について規格に適合しない結果となった場合において、原因を究明して所要の是正措置をとらず、虚偽の記録を作成したことを明らかにした。また、製造手順等について製品品質又は承認事項に影響を及ぼすおそれのある変更を行う場合において、必要な変更管理を行わず、必要なバリデーションも適切に実施しなかったことについても指摘した。
さらに、製造手順等からの逸脱が生じた場合において、その内容の記録、逸脱したことによる製品品質への影響の評価・調査等、所要の措置をとらなかったことや、製造・品質関連業務に従事する職員に対し、製造管理及び品質管理に関する必要な教育訓練を計画的に実施しなかったことなども明らかにしている。
このほかニプロファーマに対しては、医薬品製造管理者について、その業務を遂行するために必要な能力及び経験を有する者を配置しなかったことに加えて、大館工場の医薬品製造管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その製造所に勤務する従業者を適切に監督せず、必要な注意を怠ったことを指摘。同社は、製造業者の業務の適正を確保するために必要な体制の整備、並びに医薬品製造管理者に製造管理又は品質管理を行わせるために必要な権限の付与および医薬品製造管理者の業務の監督等、所要の措置を十分に講じなかったことを明らかにした。
◎法令遵守体制の抜本的改革・組織体制の再構築、再発防止策に係る改善計画策定など概ね1か月以内の提出求める
秋田県の下した業務改善命令は、①違反事項の原因究明、改善及び関係法令の遵守、②法令遵守体制の抜本的改革及び組織体制の再構築、③是正措置及び再発防止策に係る改善計画の策定-。秋田県健康福祉部医務薬事課は、ニプロファーマ大館工場に定期的な調査を行ったほか、同社から提出された書類を確認した上で、業務改善命令が必要と判断し、今回の行政処分に至ったとしている。
また、秋田県健康福祉部医務薬事課は今回の行政処分を業務停止命令としなかった理由について、成分・分量が異なるものでないことや、製品の品質に重大な影響を与えていなかったこと、さらに健康被害の報告はなく、自主回収まで至らなかったことを重視。一方で、法令が遵守されていなかったことを重くみて業務改善命令を判断したとした。また、今回の行政処分に際し、違反した製品は12品目、軽微なものは42品目に及ぶことを明らかにした。いずれも流通在庫の品質について再検査を行い、問題が無かったとしている。(一部追記しました。2月24日・18時30分)
◎ニプロファーマ 「信頼回復に向け、全力を挙げて是正措置を講じ、再発防止に努める」と謝罪
ニプロファーマは同日の行政処分を受けコメントを発表した。コメントでは、「当社グループ全体で本命令を厳粛に受け止め、患者さまとそのご家族、医療関係者の皆さま、その他のステークホルダーの皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げますとともに、関係者の皆さまの信頼回復に向け、全力を挙げて是正措置を講じ、再発防止に努めてまいります」と謝罪した。なお、本事案に関連して品質に影響があると考えられる製品は確認されていないとし、製品の自主回収は行っていないと説明。本事案による健康被害が発生するおそれはなく、これまでに健康被害の報告もないとした。