カケハシ 総額約76億円を資金調達 薬局DXの既存事業に加えて医薬品の流通最適化や供給安定化に注力
公開日時 2023/01/12 04:52
薬局DXを推進するカケハシ(中尾豊代表取締役社長)は1月11日、総額約76億円の第三者割当増資を実施したと発表した。これまで約55億円の資金調達を実施しており、累計資金調達額は約131億円となる。既存サービスの拡充に加えて、薬局の医薬品在庫情報を起点とした製薬企業、卸事業者、官庁との連携による医薬品の流通最適化や供給安定化に取り組む。加えて、処方情報の活用による服薬アドヒアランスおよび患者アウトカム向上を実現する施策に注力することで、「日本の医療が抱える構造的課題の解決を目指したい」と意気込む。
今回の資金調達は、スタートアップに対する投資ラウンドの1つの段階である「シリーズC」ファーストクローズによるもの。第3社割当増資における新規引受先には、Axiom Asia Private Capital、第一生命保険、あおぞらHYBRID1号投資事業有限責任組合、フォースタートアップス1号投資事業有限責任組合が名を連ねる。また、既存引受先には、グロービス・キャピタル・パートナーズ、DNX Ventures、ジャパン・コインベスト 、Salesforce Venturesがある。資金調達の目的について同社は、「既存事業のさらなる伸長を見据え組織基盤を強化するとともに、新規事業の立ち上げを積極化する」と強調。具体的には、開発体制強化に向けたエンジニアの採用やサービス導入支援、カスタマーサポート体制の強化、新規サービスの立ち上げを含む事業開発を予定する。
◎AIが医薬品の在庫管理を行い、発注を最適化 廃棄ゼロを目指す
同社は2017年に電子薬歴・服薬指導ツールとしてスタートした薬局体験アシスタント「Musubi」の市場シェアが10%を超え、全国7000店舗以上の薬局で採択されている。さらに、薬局向けデータプラットフォーム「Musubi Insight」、患者フォローアップアプリ「Pocket Musubi」、医薬品在庫管理・発注システム「Musubi AI在庫管理」と関連プロダクトを複数展開している。このうち、医薬品在庫管理・発注システムは、患者、医薬品ごとにAIが在庫管理を行い、発注を最適化することで、廃棄ゼロを目指す活動を行っている。さらに、他店舗への在庫融通機能や売却機能などについての開発も手掛けているところだ。
資金調達に伴う新規事業ドメインの立ち上げを睨み、新執行役員に西田庄吾氏が就任した。西田氏は、ボストン コンサルティング グループ(BCG)のManaging Director and Partnerとして、ヘルスケア領域で製薬・医療機器メーカーのグローバル組織・ガバナンス構築、生産・サプライチェーン改革を中心にさまざまな事業・機能・地域の経営課題解決や、官庁や業界団体の政策立案に携わった経験がある、2022年からカケハシに参画していた。日本の医療の構造的課題に強い関心を示しており、患者価値の最大化を目指す「Value Based Healthcare」(VBHC)の実現をカケハシの事業を通じて目指したい考えだ。