ソフトバンク子会社 個人向けオンライン診療サービスを開始 「HELPO」のサービス拡大
公開日時 2022/12/01 04:51
ソフトバンクの子会社・ヘルステックベンチャーのヘルスケアテクノロジーズは12月1日から、健康医療相談からオンライン診療までを一気通貫で提供するヘルスケアアプリ「HELPO」の個人向けサービスを開始する。同社が11月29日に開いた新規事業発表会で公表した。同社が行った「医療へのアクセスに関する意識調査」の結果から、オンライン診療への認知度は約9割に上ったものの、オンラインによる診療や服薬指導、健康相談のチャットサービスなどを利用したことがある人は非常に少ないことも示された。HELPOがオンラインによる健康医療相談や診療の普及の起爆剤となれるかどうかが、注目される。
◎健康医療相談から行動変容を促し、次のアクションへつなげる
「HELPO」は、チャットによる健康医療相談やオンライン診療の予約や受診、病院検索、一般用医薬品などの購入がワンストップでできるヘルスケアアプリ。2020年7月から法人や自治体向けに提供し、従業員や住民の健康管理などで利用されている。「サービスの提供時点において日本ではまだまだ一般消費者へのリーチは早い。アプローチ方法として法人や自治体のほうから大きな波をつくり、諸外国よりも低い一般の方の健康への意識やリテラシーを上げていくという狙いがあった」と、大石怜史代表取締役社長兼CEOは述べた。
ただ、HELPOの提供が開始されたのは、新型コロナウイルス感染症が拡大したころ。 一般の方の健康意識が大幅に高まる一方、医療リソースのひっ迫や受診控えが起こるなど、コロナ前と比べると医療の環境や医療への考え方も大きく変化した。その中で“非接触”のオンラインを活用した健康相談や診療が注目されるようになり、それが今回の個人向けサービスの開始につながった。
◎同社の医師、看護師、薬剤師の医療チームが24時間、365日健康医療相談に対応
HELPOの個人向けサービスでは、①チャット形式の健康医療相談、②オンライン診療利用支援サービス、③ECサイト「HELPOモール」、④歩数計機能、⑤ポイントプログラム、⑥病院検索──の6つの機能を提供する。
このうちメーンのサービスである健康医療相談では、同社が雇用した医師、看護師、薬剤師などの医療チームは24時間365日、チャット形式で健康や医療に関するさまざまな相談に対応する。初回応答は原則30秒以内としている。
また、オンライン診療利用支援サービスでは、連携する医療機関のオンライン診療の予約や受診、決済までをHELPO上で行えるとし、連携する医療機関は、平日夜間や土日も、予約不要で最短5分後に診療を受けることができるという。
鴻池大介CSOは、「健康医療相談を受けていただいたのち、オンライン診療へつなげるのか、あるいは受診勧奨であれば病院検索、セルフメディケーションならHELPOモールというように、ひとつのサービスにとどまらず、必ず次のアクションを意識したサービスの設計にしている」と、その特徴を説明した。
◎オンライン診療の利用率は低迷 「利用方法のわからなさと不安払しょくがカギ」
新規事業発表会では全国の20代~70代の男女600名を対象にヘルスケアテクノロジーズが実施した「医療へのアクセスに関する意識調査」の結果も発表された。それによると、オンライン診療への認知度は88.9%と約9割を占め、また「コロナ禍以前に比べ、医療にアクセスするための選択肢が増えたと思う人」は53.5%と半数以上に上った。
しかし、「オンライン診療を利用したころがない人」(92%)、「健康相談チャットサービスを利用したことがない人」(95%)、「オンライン服薬指導を利用したことがない人」(94.2%)、「処方箋の配送サービスを利用したことがない人」(95%)と、コロナ禍にもかかわらず、オンラインによる医療サービスなどの利用率は依然、低いことが明らかになった。
HELPOの販売協力を行うソフトバンクサービス企画本部の原田賢悟本部長は、トークセッションで「オンラインサービスの利用方法が分からないことと、サービスの利用に不安を感じる人がいることの2つが利用伸び悩みの原因。ここを突破して、医療分野のデジタル化でどのような世界を築けるかを理解してもらうことで、HELPOを訴求していきたい」と述べた。
一方、前述の調査でオンライン診療経験者からは、「また利用したい」(95%)、「診断結果が信用できる」(92.5%)など、ポジティブな意見が多かった。同じくトークセッションに参加し、医師として自身もオンライン診療を行っている早稲田大学理工学術院(大学院先進理工学研究科)の宮田俊男氏は、「オンライン診療は待ち時間が少なく、通院負担もないため、利用した人たちの満足度は高く、ほぼリピーターになる。一部、オンライン診療に適さないケースもあるが、それも含めてオンライン診療を一次診断として利用し、受診するのかどうかを決めるようなスタイルになればいいと思う」と、HELPOなどオンラインによる健康相談や診療の広がりに期待を示した。