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ALS適応のラジカット内用懸濁液など7製品承認へ 薬食審・第一部会で了承

公開日時 2022/11/28 04:50
厚労省の薬食審・医薬品第一部会は11月25日、田辺三菱製薬の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を対象疾患とするラジカット内用懸濁液など7製品の承認可否を審議し、承認することを了承した。ラジカット内用懸濁液は、ALS治療薬のラジカット注や同点滴静注バッグといった静脈内投与製剤と同一成分を含む液剤で、経口投与のほか、経口投与が困難な場合は経鼻や胃婁チューブを用いて経管投与することもできる。このほか、帝國製薬のドネペジルを有効成分とする国内初の経皮吸収型製剤・アリドネパッチや、科研製薬の熱傷焼痂除去剤・ネキソブリッド外用ゲルなどの承認も了承された。

【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
ラジカット内用懸濁液2.1%(エダラボン、田辺三菱製薬):「筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制」を効能・効果とする新投与経路医薬品。再審査期間は6年。

日本で15年6月に承認されたALS治療薬のエダラボン点滴静注製剤(製品名:ラジカット注、同点滴静注バッグ)と同一成分の経口薬。用法・用量は、「通常、成人に1回5mL(エダラボンとして105mg)を空腹時に1日1回経口投与する。投与後1時間は水以外の飲食は避ける。通常、本剤投与期と休薬期を組み合わせた28日間を1クールとし、これを繰り返す。第1クールは14日間連日投与する投与期の後14日間休薬し、第2クール以降は14日間のうち10日間投与する投与期の後14 日間休薬する」。

厚労省によると、経口投与が困難な場合は、経鼻や胃婁チューブを用いて経管投与することもできる。

既承認のエダラボン点滴静注製剤の投与方法は、▽通院での投与▽医療従事者の訪問による在宅投与――となっており、今回の経口薬が承認されると、通院負担の軽減などが期待できる。

ALSは、脳及び脊髄の運動ニューロンが選択的に変性・消失していく進行性の神経変性疾患。全身の筋萎縮と筋力低下を生じ、発症から死亡又は侵襲的換気が必要となるまでの期間の中央値は20~48カ月と報告されている。国内のALSの1年当たりの発病率は10万人当たり1.1~2.5 人、有病率は10万人当たり7~11人と推定されている。

ネキソブリッド外用ゲル5g(なし、科研製薬):「深達性II度又はIII度熱傷における壊死組織の除去」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

パイナップル茎由来のタンパク質分解酵素を有効成分とする外用の酵素製剤。入院が必要な重症熱傷を指す深達性II度又はIII度熱傷を対象とした外用薬で、用法・用量は「本剤を熱傷創に適量塗布し、4時間後に除去する」となる。

熱傷部位に塗布して4時間後に除去することで、健常な組織を温存したまま、焼痂と呼ばれる壊死組織を選択的に簡便かつ速やかに除去できる。

ガラフォルドカプセル123mg(ミガーラスタット塩酸塩、アミカス・セラピューティクス):「ミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異を伴うファブリー病」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は6年1日。

現在の投与対象年齢は16歳以上だが、これを12歳以上に引き下げる。具体的には用法・用量について、現在の「16歳以上の患者」を削除し、「成人及び12歳以上の小児」とする。

同剤はα-ガラクトシダーゼ(α-GalA)の基質であるスフィンゴ糖脂質の末端ガラクトースの類似体。薬理学的シャペロンとして変異型α-GalAに結合することで、α-GalAのリソソームへの輸送を促進し、リソソームにおけるα-GalA活性を上昇させると考えられている。

アリドネパッチ27.5mg、同パッチ55mg(ドネペジル、帝國製薬):「アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

ドネペジルを有効成分とする国内初の経皮吸収型製剤。経口投与のアリセプトの有効成分は「ドネペジル塩酸塩」であり、アリドネとは異なる。

アリドネは背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付し、24時間毎に貼り替えて使用する。軽度~中等度のアルツハイマー型認知症患者にはドネペジルとして1日1回27.5mgを貼付。高度のアルツハイマー型認知症患者にはドネペジルとして、27.5mgで4週間以上経過後、55mgに増量する。なお、症状により1日1回27.5 mgに減量できる。

正式承認後は、興和が独占的に販売する。

トレプロスト吸入液1.74mg(トレプロスチニル、持田製薬):「肺動脈性肺高血圧症」を効能・効果とする新投与経路医薬品。再審査期間は6年。

プロスタグランジンI2誘導体製剤。既承認の製剤は注射剤だが、今回、ネプライザを用いた吸入剤を追加する。現在は医療機関で投与されており、吸入剤が承認されれば通院負担の軽減につながる。

ヴィアレブ配合持続皮下注(ホスレボドパ/ホスカルビドパ水和物、アッヴィ):「レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の症状の日内変動(wearing-off現象)の改善」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品及び新医療用配合剤。再審査期間は8年。

レボドパ/カルビドパの分子構造を改良したプロドラック溶液で、レボドパ含有製剤として初の皮下投与製剤。24時間持続皮下注入(CSCI)により投与することで血中濃度を一定に保ち、効果を持続させる特長がある。

パーキンソン病では、疾患の進行に伴い脳内のドパミン濃度が不安定になり、経口のレボドパ/カルビドパ薬の頻回な服用が必要となる。一部の患者では1日平均10-11錠の経口投与により、患者や介護者の負担が大きくなっている。また、経口薬や貼布剤などの治療では症状コントロールが難しい進行期パーキンソン病患者に対する治療選択肢は現在、手術を必要とするデバイス補助治療が主であり、侵襲性が低く、入院や術後管理などの患者への負担が少ない新たな治療選択肢が求められている。

タバリス錠100mg、同150mg(ホスタマチニブナトリウム水和物、キッセイ薬品):「慢性特発性血小板減少性紫斑病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

チロシンキナーゼを阻害し、マクロファージによる血小板の破壊を抑制することで、血小板の減少を抑制し、慢性特発性血小板減少性紫斑病(慢性ITP)の出血症状を改善することが期待されている。用法・用量は、「通常、成人には、ホスタマチニブとして初回投与量100mgを1日2回、経口投与する。投与開始4週後以降に血小板数の増加が認められず、安全性に問題がない場合は150mgを1日2回に増量する。なお、血小板数、症状に応じて適宜増減するが、最高投与量は1回150mgを1日2回とする」。

ITPの原因は未だ明確ではないが、血小板に対する自己抗体が産生され、この自己抗体に結合することによって取り込まれやすくなった血小板が脾臓でマクロファージに破壊されるために、血小板数が減少すると考えられている。ITPの治療として、副腎皮質ステロイドやTPO(トロンボポエチン)受容体作動薬の投与、手術による脾臓の摘出などが行われている。

【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

マイトマイシン眼科外用液用2mg(マイトマイシンC、協和キリン):「緑内障観血的手術における補助」を効能・効果とする新投与経路医薬品。厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。再審査期間なし。

協和キリンが国内販売している抗がん剤・マイトマイシン注用2mg、同10mgに対し、日本眼科学会から「緑内障、高眼圧症に対する手術時の使用」について要望がなされ、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の議論を経て、厚労省から協和キリンに開発要請された。そして協和キリンは公知申請の妥当性に係る見解を提出していた。こうした経緯の一方で、両剤の原薬製造過程での無菌性の確保に影響しうる事実が判明したため、協和キリンは19年10月から両剤を自主回収。その後、両剤の製造再開に相当な時間を要することも判明し、供給再開のメドがたたなかった。

そこで協和キリンは、眼科用外用剤としてのマイトマイシンC製剤をインドのIntas社から導入。この導入品が今回の部会で報告された。

イーケプラ点滴静注500mg(レベチラセタム、ユーシービージャパン):「てんかん重積状態」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。事前評価済公知申請。再審査期間なし。

用法・用量は、「成人の場合1回1000~3000mgを静脈内投与(投与速度は2~5mg/kg/分で静脈内投与する)するが、1日最大投与量は3000mgとする」。

日本救急医学会から開発要望が出されたもの。てんかん重積状態は、神経細胞の異常興奮により海馬(記憶を司る脳の部位)を中心に不可逆な障害を起こすことが知られており、繰り返すことで海馬が著明に萎縮し機能障害を残す。さらに呼吸循環に影響するため、時に致命的となり、早急な救急対応とその後の集中治療を必要とする。

スキャンドネストカートリッジ3%(メピバカイン塩酸塩、日本歯科薬品):「歯科・口腔外科領域における伝達麻酔」を効能・効果とする新効能医薬品。厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。事前評価済公知申請。再審査期間なし。

歯科用局所麻酔剤。浸潤麻酔で使われているところに今回、伝達麻酔を追加する。
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