【有識者検討会 10月27日 議論その1 4団体のヒアリングを踏まえたディスカッション】
公開日時 2022/10/28 07:01
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の5回目の会合が10月27日に開催された。この日は、薬価流通政策研究会、新時代戦略研究所、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、日本医療政策機構の4団体からヒアリングを行った後に、構成員のメンバーとのディスカッションが行われた。本誌は、ディスカッションの内容について発言要旨を公開する。
遠藤座長:それでは構成員の皆さま。ご発言をお願いします。
三村構成員:くすり未来塾、デロイトトーマツからカテゴリーベースで詳しい提案を頂いた。大変参考になった。検討を深めたい。少し大きな論点ということで新時代戦略研究所にうかがいたい。私自身はマクロ的なこの分野は専門外だが、問題意識は基本的にはイノベーティブな新薬が足りない、やはり技術革新が不足している、そして何より日本がやはりイノベーティブベースで技術開発のベースのイノベーター立国を目指すべきだという話があり、それをマクロに返るとやはりGDPベースで調整するべきだという論理が作られている。
当然ことながら、財政上の規律が変化するという当然の論理だと思うが、ちょっとこの前提条件でどう考えていらっしゃるのか。23ページに非常に興味深い表がある。この図表を拝見すると当然日本のGDPが1.1で医薬品市場が0.5という話になる。その他のところの言い方をすると、G7諸国あるいはOECD先進諸国を増しても日本のGDPが低めであるということは確実にわかるが、医薬品市場そのものが非常に低い。そして、これが医薬品市場の成長率イコール薬剤費とか、あるいは社会福祉予算という形で置き換えていいのかどうか。つまり、今回の議論のなかで薬価制度そのものを何かと基本的に見直していこうとか、カテゴリーベースで薬価制度の算定仕方を変えていこうではないかと色々な提案がある。この前提条件は、ある意味でこれから日本はやっぱりGDPはここまでやるかという悲観的な見通しがあるかもしれないが、そういうことを前提とした上で、このまま線を引いていいのかどうか。残念ながらこの図表を拝見すると日本は落ちたまま。最初は技術革新立国になるべきだということがあったときに、マクロとミクロでは違うよというふうに言うのか、その辺りどう考えているかについて質問したい。
それと、私も大変賛成なんですが、日本医療政策機構の方からも、やはり基本的にはこれ国家戦略としてやるということ。非常に強いご提案があった。そういう点があるなかで今回の点についてどういうふうに検討されたのか。その前提条件について少しご説明をお願いいたします。以上です。
遠藤座長:ありがとうございます。それでは新時代足新時代戦略研究からご発言をお願いいたします。
INES・梅田氏:新時代戦略研究所の梅田です。すいません。ご質問の趣旨が十分に理解できておりません。この表では代表の朝井がヒアリングで申し上げました通りのことで、GDPの成長率等、医薬品の市場の成長率を比べているわけで、どの国においても、経済成長以上には医薬品市場が伸びているけれどもということでしたけれども…。
三村構成員:両者が現行の薬価制度を前提としてという話が出ていたということ。そして基本的にはいろいろなご提案のあるなかで、それ自身を見直していこうという議論はあるということを前提したとき少し前提条件が違うこともございませんか、ということですね。日本のGDPが低いということや成長が低いということは色々な形で話が出てくるんですけれど。これひょっとしたら私が素人だからそうなのかもしれないのですが、前提条件として好意的に伸ばしていくことを考えたときに、今後の発展考えたとき、過去のことを前提としたうえで、これからどう考えていいのかという、そんな話でございます。
遠藤座長:私の方からもちょっと関連質問したい。例えば23ページの日本の将来の医薬品市場0.5%と推計されているわけですが、これの根拠として何かの計算しているのか。例えば3ページに示した2015年度から2020年度の医療費の推移で特許品では0.1%減少しているというようなことになっているが、その前の5年はむしろ増えているというようなことでありまして、どこからどこまでを推計のための指標にとるかということでかなり違ってくるわけであります。また、一般的に言うと、奇数年は薬剤費は伸びる、改定のあった偶数年は薬剤費が下がる。凸凹になるわけですので、一般的にこの奇数年から始まって偶数年で落とすとですね、大体これはマイナスになってくるっていう傾向はられるところもあるわけなので、要するに、どういうその推計をされているのか。日本だけが非常にこれはそちらが推計したわけじゃないので、わかりませんけれども、そこら辺のところがそれがベースになった議論になっておるものですから、この日本も薬剤費の将来推計、日本はこんな大変なんだっていうことが前提の議論になっていますが、その推計はどういうふうにしてやったのかっていうのを知りたい。一つの前提と先ほどの三村先生がおっしゃった内容もそれに絡む話ですけれども、また三村先生はそれにいまの体制のもとで今後薬剤費がどうなるってのはどういうふうに推計したのかっていうことですよね。
INES・梅田氏:はい。それはおっしゃる通り私どもの推計ではありませんので、その推計の前提について詳細な説明はオープンされておりません。ざっくりと聞いておるところで言いますと、医療用医薬品というのは長い研究開発の年数を経て世の中に出てくる。この研究開発のプロセスに乗っかっている製品というのは、大体もうデータ等で文献等でもって出てきているわけです。ですから、その製品が世の中に出てくるのがいつごろになりそうか。そしてそれがその市場規模的にどれぐらい大きくなりそうか、ということについての予測的なことはIQVIAが持っている。そういうことを全て様々なデータを織り込んでいったものが将来予測だということ。いまここにありますのは、過去ですので、先生がいまおっしゃられました通り、2015年ぐらいまでは2年後、偶数年、奇数年というところで推移しておりますし、そこから先は様々な薬価改定のルールが強化されていく、引き下げを抑えられていくということ。あるいは、生活習慣病等が特許切れを迎えてくるとか様々な理由によって、2015年以降はもう抑えられてしまっている。間の年であってもなかなか伸びられていないと。いうようなことかと思います。
遠藤座長:はい。様々なことを考慮して推計されているというふうに受け止めました。三村構成員、いかがでしょうか。他にいかがでしょうか? それでは小黒構成員どうぞ。
小黒構成員:4つの機関から色々示唆に富む提言をいただきました。ありがとうございます。いくつか質問させていただきたい。くすり未来塾さんに、今回は説明されていませんでしたけども、2022年9月27日に出された医薬品制度改革提言4の資料29ページ目のところと、あと先ほど説明された54ページのところについて、少し質問させていただきたい。
個人的には54ページの制度というのは財源が“いってこい”なので、要するにαのところで取り過ぎた分をβで返すという仕組みになっているので、財源的にはよく配慮された仕組みであるというふうに思うし、あるべき姿なのかなというふうに思う。他方で29ページ目のところでちょっと気になるのが、調整幅のところが2%になっているというのは、これはこの有識者検討会でも堀構成員が「なぜ2%か」とたずねられていた。要は政治決着した結果だということだと思うが、ここの部分について濃淡含めていろいろコントロールしていくということについては賛成だ。これは財源をどういうふうに調達することを考えてらっしゃるのかというのを少しうかがいたい。これがまず、一つです。
同じ議論ですが、デトロイトーマツから出られていた、色々な新薬創出等加算の見直しですよね。これも当然財源が必要になってくると思うので、責任ある立場で議論するということになるとその議論を上げられないと思うのですが、その辺どういうふうに考えていらっしゃるのかうかがいたい。
それから日本医療政策機構の乗竹さんに質問です。私も少し関係しましたけれど、AMRは非常に喫緊の課題で何とかしなければいけないと思うが、私が知る限り、色々な関係機関に持っていっても財源の部分とかでうまくできないということになっていると思う。その辺どう考えているのか。
遠藤座長:よろしいですか。はい。それでは、最初は薬価流通政策研究会へのご質問ですね。よろしくお願いいたします。
くすり未来塾・武田氏:はい、ご質問ありがとうございます。財源の話に入る前に、財政規律という話があり、INESさんの資料のなかで財務省の資料が引用されて財政規律がこれで保たれるという話があると書いてあった。医療に関してあらかじめ決めたその予算の制度内に全ての経費を収めることが財政規律だというふうに書いてあるように見えるが、これ財政規律の言葉の使い方が間違っているのではないかと私は思う。
財政規律というのは、歳入と歳出のバランスということが念頭に置かれているんだと思うが、当初想定されていなかったことについては補正予算が編成をされるということで、それはその制度上認められた話でもある。医療の財源については必ず補正で手当をするということが制度上認められている。それを当初予算で決めた枠の中に収めることが規律だというのはむしろ我々医療保険財政をやってきた側からすると、私は昔、政管健保の民営化をやったが、あの5年間の財政運営で歳入歳出がバランスするように短期的には医療費というのは変動するということを前提として制度設計し、その制度設計後、少なくとも政管健保については一度も保険料率の引き上げせずにやってきたわけですから、そういう意味において、ちょっとその辺はすごい違和感があったということをまず申しあげる。
そのうえで、財政的な財政規律という意味でいうと、この“α=β”というのは長期的に見ると財政がバランスするということにおいて単年度ではないが、複数年度で見たときに財政にとっては悪影響を与えない制度だ。その最初の年についてはメーカーの希望価格を可能な限り認めるということは、他の方の提言や、業界団体の提言にもあるが、第三者評価として認めたらどうかという話があるが、この第三者評価はきっちりやると時間がかかる。臨床データがないなかで評価することについての限界もある。しかし、それに時間をかけているといつまでたっても日本に新薬が入ってこず、救える患者も救えないということになる。
そういう点も含めて、企業の国際価格ということを前提にある程度のプレミアも認めた上でリアルワールドデータ(RWD)で再評価をかけるということだ。そういう意味で言うと、αβだけではなく、プレミアムの部分の評価についてもバランスをとったらどうかというのが私がきょうお示しをしたものということになる。
それから、調整幅について2%を引き上げていく場合に財源が必要だけれどもどこで、という話になるが、薬剤費全体で見ると毎年5000億円くらい薬価を引き下げているので、それを考えると、そういう財源がないということはないのではないか。医療費のなかの財源の再配分ということで考えていけばいいのではないか。
もう一つ、聞かれていないことを付け加えるが、薬価差の議論は後でやるかもしれないが、何か薬価差はあって当然とか、調整幅のなかで在庫管理コストを見ればいいんだとか、いうのはちょっとすごい異論があるので、またもし後で議論できる機会があれば、と思う。
遠藤座長:はい、ありがとうございました。
デロイト トーマツ:はい、三村先生ご質問ありがとうございます。まず、弊社からの回答としては、今回我々が提言しているなかでその財源を確保する側に働く提言と、その財源を使用する側に働く提言があり、考え方としてはまずそこのなかでバランスをとるというのが基本的な考え方になる。
具体的に申し上げると、提言の中の1-4長期収載品の引き下げの部分、あるいは薬価差の解消、何らかの還元をするというところに関しては財源の確保以外も、新薬創出等加算の部分やイノベーションの評価というところに関しては、財源がかかることになる。もちろん個別の金額としてどうなるのかというところは、今後の検討が必要だという前提ではあるが、トータルとしてはプラスの部分とマイナスの部分で確保していくと、つまり長期収載品の部分から他の必要なところに財源を、回していくというような考え方をとっている。
遠藤座長:ありがとうございます。医療政策機構お願いします。
医療政策機構:はい、ありがとうございます。薬剤耐性菌AMRに関する新規の抗菌薬のプロパティインセンティブに関しては小黒先生にもアドバイザリーボードに入ってくださって意見交換等をさせていただいたが、2021年に政策提言を出させていただいた。
プル型インセンティブを単に薬価引き上げのみならず、いろんな多様なオプションというものが今世界的に議論されていて、そちらを提案させていただいている。一つは、当然薬価に関する補正加算というものがあるが、それ以外にも収益を保証する、例えばマーケットエントリーワードと呼ばれる製造販売承認を取り、取得報酬不要指定制度です。マーケットにエントリーしたときに関してそこに対して、保守額補償額をつけるという、追加でお金を出すというやり方ですとか、独占期間の延長、あと特許的に独占期間延長させること、また他の製品その会社が新規の抗菌薬を作ったときに他の製品に関して承認審査の優先順位を上げるといったいろんなオプションを提示している。
これは財源、確かにいずれのオプションでも、何らかの財源的なインパクトはあるが、多くのいま我々の提言を出すにあたって色々な産業界とのディスカッション、また各当局とのディスカッションをしても、そんなに大きな額のプル型インセンティブにならないので、価格にならないんじゃないか、つまりその国と市の予算ってのはそんなに大きくならないんじゃないかというのは、ちょっと具体的な額は頭にありませんけれども例えば自動車のEVに関する保障だとか色々なことと比べるとかなり少し小さな額で収まるんじゃないかという議論が出ております。
小黒構成員:すいません、ありがとうございます。一つ質問した趣旨は、薬剤費が大体10兆円ぐらいですので、仮に財務省は先ほど武田さんもおっしゃられていましたけれども、財政規律が何かというのはあるが、例えば1%の成長率で薬剤費が伸びることを認めていれば、要は1000億円は新しい財源を捻出できるということになるので、私が知っている限り、プル型インセンティブとかでも数百億円なので十分飲み込める余地があるということではないかという。ただ普通に持っていったときに私も苦い思いをしましたが、全く聞く耳もってもらえないというような状況であったという認識でいる。
遠藤座長:はい、ありがとうございます。香取構成員どうぞ。
香取構成員:ありがとうございます。各団体、大変詳細に示唆に富むご提言をいただいて、とても勉強になりました。ありがとうございました。そのうえでいくつか、我々が検討会で議論してきたこととの関係でいくつかご質問したいと思う。
まず新薬に関しては、イノベーションをきちんと評価する、あるいは新薬創出等加算を含め、様々な制度改革が必要だというご提案は、ほぼ共通していたので、新薬に対する考え方は大体我々のなかでで議論してきたこととほぼ同じ方向性ではないかというふうに思うのでその点については、我々の議論ともずいぶん整合性があったので少し安心した。
それぞれの団体にいくつかご質問したい。まず配布されている方の資料、薬価流通政策研究会の報告の中の28ページに、提案4ということで薬価差と財源確保ということで薬価差の話はきょうあまり踏み込んだ薬価差そのもの、つまりいまの薬価改定方式の問題についてあまり踏み込んだ議論がなかった。ここを拝見すると、この間、類似の薬価決めを行ったということと、医薬分業が進んだことで、いまどこで薬価差が発生しているかというと、大手の病院、大手薬局チェーン店あと薬局の共同購入ということで、どなたかの発言もありましたけれども、薬価差の構造がだいぶ変わってきているということになっている。そのうえで、処方権という薬価差益の関係というのを整理をするという考えに立っていて、基本的に処方権がある人の薬価差益に関しては、薬剤の適正使用の観点から、要するにこれを認めない。基本的には是正するという考えに立つということになっていて、他方で薬局グループについては、特に資料にもありましたけれども、大手チェーンとか薬局、ボランタリーチェーンは8割以上が総価だということからすると、そもそも契約形態自体が薬価差追求になっているということから考えると、この2つは分けて考えるという考えに立っている。
そのうえで、それぞれやり方を片方は基本的には診療報酬を返すといった、片方は基本的にはいわゆるクローバックするという方法を取っているが、これはこれで何て言いますか診療所で薬局の間で議論があるかと思いますが、これ一つの考え方だと思うんですけれども。
病院の薬価差について技術料に振り返ると書いてあるが、いままでずっとこれをやってきたわけだ。やってきて、なおかつ残っているものということになるが、この技術料の返し方というのは、諸外国の例を見ると、病院の入院薬剤費は基本的にはいわゆる包括報酬になっている。診療所はほぼ100%医薬分業になっているので、言ってみれば日本で行っている薬価を決めているような薬価取引というのは、ほぼ薬局のものということになっているので、その意味でいうと、この病院の引き下げというのは返し方って、これ基本的な包括報酬で返すということになると思うが、そこは研究会の所管外かもしれないが、そういうことになるのではないかと思うので、そこの考えを一つお聞きしたい。
INESにいくつか質問がある。15ページとかその前にも出てくるが、ミクロとマクロのバランスというお話があって、ミクロではこういったイノベーションとかをきちんと評価する。他方でマクロでは経済成長との調和をとると書いてある。
ずっとうかがっていると、どうもこの2つの提案は両立しないような気がする。なぜそういうかというと、医療費は日本だけではなく、世界中で対GDP比を一定上回って成長してきているし、これからも成長していく。誰が聞いてもそういうふうにOECDが聞いても、みんなそう言っている。そのなかで、財務省さんは明確にGDPの範囲内に医療費を収めると、いう方針は出しておられるし、先ほどの財政規律でいうと、そういう前提で予算統制を考えておられるということになるので、このミクロのアプローチの政策を積み上げたときに果たして医薬品の総額がGDPの伸びに収まるかどうかというのも若干疑問だし、仮にGDPの枠内に収まったとしても医療費全体を、GDPの範囲内に収めるっていう大方針の財務省の政策がある限りは、先ほど一定その結果で契約で事前合意で成長率を決めるといいますが、この事前合意の成長率がGDP伸び率に+アルファで合意できるということは、ほぼ現実に考えられない。
いまもそうだが、医薬品から削った分のお金は医薬品には返ってきていないし、いまや医療費すら返ってきていないわけだ。そういう現実を考えると、GDPの範囲内までであれば薬剤費の成長を認めるので、一定その範囲を認めているというそういう趣旨だというふうに財務省の提案を解釈されているが、私にはとてもそのようだとは思えない。
現にあの前の主計官は何と言っているかというと、「年4回収載は自分たちの手の届かないところで勝手に新薬の値段を決めている」と。収載する薬を決めていると、予算統制外でそういうことをしていることが問題なので、新薬の値段を決めるときは、その分だけ、トータルの医療費を下げてその財源の範囲内でやれと、そこまで明言している。
そうすると、おっしゃるような形で、もちろんこの形でこのZの形がそれなりにリーズナブルなその幅が取れるのであれば成立すると思うが、その意味でも、その前段と後段、ミクロとマクロというのがご提案の中で果たして現実に整合的に作られるということになるのだろうか。つまり成長メカニズム調整までというものが果たして機能するのかどうかということをちょっと私は疑問に思う。
さらに言えば、先ほどの三村先生のご質問ですが、23ページに日本のGDPと医薬品市場の関係がでている。残念ながら日本の成長率はGDPの数値が低いわけですから、仮にGDPの範囲内まで認めると仮にしたとしても、今よりはマシだというご提案だが、世界市場から比べれば明らかに見劣りがするわけだ。もちろん6%とか5%とかは言わないが、グローバルで考えたときに、仮にご提案の形であったとしても、日本の医薬品市場の魅力というものが多少なりとも良くなるかというと、やっぱそこはなかなか良くならない。そう考えると、これは医療政策機構の乗竹さんも話していましたが、薬価の問題を薬価だけで考えるとやっぱり駄目で、医療費全体のパイをどう考えるか、とかさらに言えば、負担の問題をどう考えるか、先ほど日本の医療費が何十兆なるというふうに考えていたが、2.7%成長で検証してるわけなので、逆に言えばGDPの2.7%伸びるっていう計算の下なので金額やGDP比というふうに考えなきゃいけないと考えれば、GDPプラスαってのはある意味、それをGDPに収めるということ自体かなり無理筋なことをやっていて、その無理筋のその最後のつけ回しが薬価にきているという、そういう全体の医療費抑制政策の構造のなかで、この提案をはめたときに、どういうメッセージになるかということがちょっと私は気になる。最後の財務省の表についての解釈とご理解がありましたけども、ちょっと私はそういうふうには、この財務省のご提案を読むことはちょっとできないが、その点についてご意見を聞きたい。
デロイトトーマツさんには、ご提案の意味はよくわかるが、いま現実に過大な薬価差ができているので回収しないといけないということで、その部分は国に還元するという26ページのところの表だが、現行薬価制度、算定方式を前提に、かつ医療機関側あるいは薬局側の強大なバイイングパワーがあるという前提で、これをやると何が起こるかというと、解消された還元分は必ずこの目安の幅を超えて下がっていくという構造が続く。現にそうなっているわけだ。
そうすると、実はそこのところを変えない限り、この形で仮に超過利潤分は国庫に返すということで目安が決まると言っても、この目安以上は薬価差を取るな、みたいな規制をかけるということでもやらない限りは、仕切価、実際の納入価はこれだけまた下がっていく。
それがずっと何十年も続いて今に至っているということを考えると、もしこういう仕組みをするのであれば、基本的に算定の考え方そのものを考えないとおっしゃるような形は作れていかないという気がするんですが。いかがでしょうか? 以上です。
遠藤座長:それでは、順番にお答えいただけますか。薬価流通政策研究会からお願いいたします。
くすり未来塾・武田氏:はい。ご質問ありがとうございます。香取構成員のご質問はかなり本質に関わる部分で、どこまでお答えできるかわからない部分もあるが、少し順序立てて申しあげる。基本的には病院に対する支払いは国際的には包括払いが基本だ。包括払いが基本であるということは、薬代もその他の治療材料も全て含まれたうえでの包括払い、この包括払いをすることで、病院側の医療の効率化、インセンティブが高くなるし、平均在院日数の短縮を評価することによって医療の質を上げることができる。これが日本においてDPCを入れた契機にもなったし、それ以後、急性期の質の向上はずいぶん進んだのではないかと思う。
包括払いにすると、薬価差は問題ない。“なぜ薬価差があるか?”というと、薬価があるからだ。薬価があるから薬価差があるということで、日本は薬価があって薬価差がある仕組みにわざわざしているのかということになる。これは、一つは日本で医薬分業が進んでいなかったという、病院が事実上薬を出していたということと、薬価を設定して薬価差が生じることによって、病院が、あの価格交渉を一生懸命やれば、それによって、その価格の引き下げができるということでやってきたわけだ。
医療機器に関しても、基本的には包括払いのなかに入っていて、特定のものだけ薬価のような仕組みを入れないと価格が高止まりするということで、わざわざ途中から高止まり防止のために価格差が生じるような体系に移行して現在に至っている。薬価差と技術料の引き上げというのを提案させていただいているが、そういう構造から考えると、薬価差をなくすというのは、基本的に薬価をなくして包括払いにしてしまえばイコールだ。けれども、これは基本的にその薬価差部分が経営の原資になっているということを認識しながら、同じ点数同じ治療行為に対して同じ費用を払うということで、医療保険にとっては行ってこいなわけだ。それをやらないのであれば、薬価差を縮小していくのと同時にある程度診療報酬の引き上げをしていかなければ医療機関からすると、何度薬価を下げても引き下げスライドの引き下げを要求するだけだ。医薬品の不採算を増大させるだけだというふうに思う。包括払いを推進する、または、包括にしないのであれば、薬価差を減らしつつ、技術料をどこかの点数で引き上げていくことを同時にやらない限りは、流通改革は進まないだろうと考えている。
遠藤座長:ありがとうございました。それでは、INESさんお願いいたします。
INES・梅田氏:はい。最初にミクロとマクロのお話をしているが、マクロのところでGDPという話をしており、そこについてご質問いただいている。最初に、代表の浅井が申し上げたように、決してこれでなければならない、これだけが正しいということを申し上げているわけではない。GDPだけでなく、他の要素も考えられるかもしれない。
いずれの先進国を見ても、経済成長以上に医療費が伸びているということであり、そこには高齢化ということもあれば技術振興ということもあるということは言われている。しかし、実際のところ、日本はどうかと見てみれば、低い経済成長をさらに下回って医薬品の市場というのは現在ゼロからマイナスになろうとしている。
これから先の見通しも非常に厳しいという状況にある。これは現在、日本において別にマクロ的な薬剤への統制を行っているわけでも何でもなくて、それぞれの新しい薬剤の単価をつけるときにどのレベルにつけるか、あるいは大きくなった製品の薬価をどうするかということとか、あるいは2年に1回の切り下げをさらにもっと進めていくというような個別のプログラムがたくさん積み重なった結果がゼロからマイナスの成長になろうとしているわけだ。本来であればこの個別のプログラムに一つ一つ、これではなかなか厳しいのではないかということが、議論されて押し返されるっていうようなことが、もし中医協でもできれば、それはその結果として医薬品市場全体がどういうふうになっていくかということもあると思う。ただ、いまなかなかそのような状況にない。また薬剤だけで議論することは難しく、医療費全体の効率化というお話もあったが、GDP以上に医療費そのものも本来伸びており、診療報酬でも大変厳しい議論がされている。医療費全体が議論されれば、薬価のここの部分を他のところで抑えられるだろうかと、この議論もなかなか実際には厳しいものがあるのではないかと思う。
そこで、私どもとしては、こうしたイノベーティブな製品が世の中に出てちゃんと評価される、この製品が伸びていける、そうしたことに成功した企業が大きくなっていける。こういうことを担保するためにどうしたらいいか、というときに財政当局としてはどこまで大きくなるかについて一定の予見性が得られるのであれば、その中身については専門のところで議論したらいいというような意見も出ていると我々は理解している。
遠藤座長:はい、ありがとうございます。考えるヒント、アイデアとして提出されているということで、それを材料に色々考えるということだと思いますね。はい、デロイトトーマツさんお願いいたします。
デロイトトーマツ:ご質問いただき、ありがとうございます。香取先生からご指摘をいただいたポイントに関しては、まさにおっしゃる通りかなと思っている。まず前提として、今回、目安幅、あるいは薬価差の解釈をとらせていただいた背景を少しだけ補足させていただく。
議論全体を通じてあるように、薬価と流通というところはやはり切り離しが非常に難しいところだと考えている。そうしたときに、流通改善ガイドラインのところで謳われていることとしてはやはりこれは薬価差、あるいはその納入価格だけではなくてこれは仕切りの部分、最終原価のところを含めて、流通に関する価格については全てのプレーヤーの皆さんを含めて透明性を高めていくことが非常に大事だということを我々も強く痛感をしているところだ。そうしたときに、ご説明させていただいたように、流通構造全体を見たときにはこの薬価差というものはどうあるべきかという観点で先ほど説明させていただいたような、流通上のコスト、あるいはリスクというような一貫した考え方をまずご説明させていただいた。
香取先生からいただいたご質問に戻ると、この目安幅というものを設けたときに、結果として改定に反映していく際に薬価が下がってしまう、というご懸念はあると我々も思っている。先ほどのご説明のなかで、割愛したが、資料の49ページに参考資料を1枚入れさせていただいた。ここでご説明しているのは、実勢価格とその薬価改定というものを、そもそも切り離しをするという考え方も一つのアイデアではないかということを説明させていただいた。
これはもちろん全てのカテゴリーではなく、長期収載品あるいはジェネリックに関してはこれまでご議論にありましたように、まず個別単品単価というところが非常に難しいというところがあると思う。結果として、総価で取引をなされているということだと、やはりいまの状態そのものが個別の価格を決めるうえで適切な状況にはないのではないかというふうに捉えた。そうした際に目安幅を設けたときにそれをそのまま何らかの形で改定につなげるということではなく、例えば長期収載品やジェネリックに関してはこちらのスライドの後半に書かせていただいたように、製品の原価に好影響を与えるような、あるいは与えるべき要素が何なのかというところ改めて検討の俎上にあげて、例えばこの競争環境や製造の総量が原価に跳ね返ってくるところだ。こういったポイントで改定と切り離しをしているということも一つのアイデアではないか。当然、この件に関してはフィージビリティを含めてまだ検討の余地があると思うが、一つのアイデアとしては、ご説明させていただければと考えている。以上になります。
遠藤座長:ありがとうございます。ご質問はこれで全て、でよろしかったですか。香取構成員、何かコメントありますか。お願いいたします。
香取構成員:ありがとうございました。実はこの目安幅っていうのは、調整幅とどういう関係なるんだろうか、というのがちょっと気になったが、そこまで詰めたお話ではないということだと思います。私の印象は繰り返しになるが、INESを含めて、新薬に関する議論というのはかなりもうコンセンサスが取れているが、既存医薬品の収載をどうするかという話と、流通との関係で値決め、そこのところがやはりどうしてもなかなか議論が詰まっていかないところ、というかこれからちょっとやらなきゃいけない難しいところかなと思いました。
遠藤座長:で新薬の方で方針が決まったとおっしゃるが、細部になればまだまだ道はいろいろある。
香取構成員:大きい方針で、という意味だ。
遠藤座長:大きい方針としてドラッグラグの縮小とかそういうような議論は当然あるとは思う。ありがとうございます。それでは、坂巻構成員がお手を上げていらっしゃいます。どうぞ。
坂巻構成員:改めて、4団体の方々、非常に勉強になるプレゼンテーションありがとうございました。スライド一つひとつ質問したいことがあるが、時間の関係で3つほど質問していきたい。
まず、INESにマクロキャップ制は、もうやめちゃったのかなと。賛否両論あるということで、このなかではかなり批判的な意見が多いのかなとは思っているが。ただ、諸外国、特に欧州では何らかの形で予算制約をしている国はある。例えば、フランス国会で毎年予算を決めている。実際どれくらい薬剤が規制されているかはわからないが。イタリアが州ごと、ドイツも地域ごとに保険1人1人が予算制という形の仕組みもある。お聞きしたいのは、こういった海外の予算統制の国々を見て、それらが医薬品市場にどういう影響を与えたのか、そこをどう分析した上で取り下げられたのかもしれないが、提案されたのかというのが一つ目の質問だ。
2点目はデロイトトーマツに聞きたいのだが、資料17ページの後発品の安定供給に向けてABCの提案があるが、何というか、非常に統制的で、ありていに言えばここまでやるならば、すべて国営化したらいいのではという提案だ。先週の有識者検討会でも、私はジェネリック医薬品のいまの問題に関してはすべて薬価の問題なのか、ということを申し上げた。いまの状態でもかなり異常な状態だと思う。ただ、いずれは正常な状態になってもらいたい部分があるが、海外のジェネリック医薬品の価格政策の議論のなかでも、そもそもそもそもジェネリック医薬品はどうあるべきなのか、例えばいまの16ページのなかで、解決の方向性の問題点として、例えば製造コスト低減の誘惑だとか希少少量整備とあるが、実は海外を見ると、これはすでに当たり前のことだ。ジェネリック医薬品のコストを低減するために、連続生産の技術を導入したり、あるいは医薬品だけではなく、市場全体が非常に多様化しているなかで、どうしても多品種少量になるわけだ。こういう諸外国の状況のなかで、日本だけがこういった仕組みを導入することで、そもそもこの提案のなかで、日本のジェネリック産業をどのような方向に持っていきたいというふうに考えたうえで提案しているのか、ということを聞きたいと思う。
3つ目は、カテゴリー別の議論というのがあると、特に新薬、イノベーティブな新薬に関してはきちんとイノベーションを評価しましょうというところで皆さん同じ認識なんだろうというふうに思う。そのなかで、若干違うなと思うのは、そのイノベーション評価のプロセスにおいて、くすり未来塾さんは、企業の届け出制度というのが提案されている。デロイトトーマツさんは企業の提案ではあるが、一応評価依頼という形で、どういったものを根拠として出しているかということが示されている。くすり未来塾にお聞きしたいのは、企業はどういう値段をつけたかを示さずに、全く言い値で決めてしまうだろうか。
あるいはその後にもう一度再評価するときでも、そこでまたデータを出すわけだ。結果的に値段が下がるとすれば、現在のその再算定の仕組みとどう違うのか。やはり予見性に不透明性が生まれてしまうのではないか。3つ目は技術的な質問なるが、くすり未来塾さんの方からお答えいただきたい。以上、三つです。
遠藤座長:ありがとうございます。それでは、INESさんからお願いいたします。
INES・梅田氏:はい、ありがとうございました。先生のおかげで私どものお話したことがちょっと誤解されていたかもしれないと気付きました。マクロキャップ制は何か諦められたというふうにおっしゃられましたが、私どもの提案のなかで、ミクロマクロであって、マクロの部分が何か上から押さえつけるようなものとして全体のアイデアとして、そこのところだけ取り上げられて議論されたということについて申し上げた。
私どもは、ミクロのところの改定を進めていかなければいけないけども、全体、市場いくら増えてもいいのか、という議論はある。そのことに対してマクロの提言もしているということだ。そこのところだけ取り上げられたことに対してちょっと反省、というかちょっと誤解を受けたというふうに申し上げた。そのうえで、諸外国においても、予算制約を盛り込んでいるところもあるというお話だったが、そうした状況を踏まえても、現在の日本の医薬品の市場のトータルの状況、過去数年、それからここから先の予測というのを見ると、非常に厳しい状況にある。いままだ日本にそのようなマクロ的なものは何も入っていなくても非常に厳しい状況にあることは事実で、データは様々あると思うが、私も最近見たところでは特に政策研が出されているレポートの中で、日本の医薬品市場が世界の市場トータルのなかのシェアが過去どれぐらい縮まってきたかというもの、あるいは日本の製薬企業もちろん日本だけでなく海外でも活動している、販売されているわけだが、日本の製薬企業の売上を合計したときそれが世界の製薬企業の売上のなかでどういうふうにシェアが縮まってきているかというような報告をされていた。非常に顕著に落ち込んできているところを見ると、昔の10年前、20年前を知る人にとってみると、いまの厳しい状況というのは間違いなくあるというふうに思う。ですので、何とかミクロのところを改革していかなければいけないというところですが。
もう一点、追加で申し上げたいのは、GDPのことだ。GDPに沿わせることがどうかという議論があるが、医薬品市場は完全に公的な市場なので、税がどれだけあるかということ、保険料をどれだけ入れられるかということ等になる。国として様々な用途にお金を使っていかなければいけないなかで、医療や医薬品にたくさん使いたいか、あまり使いたくない。これはある意味、それぞれの国民の選択だと思う。様々にお金を使うべき分野があっても、日本国民、日本政府は、医療や医薬品にもっとお金を使いたいというんだったらそれはそれで一つのアイデアであり、考え方であり、それがGDPを上回っても私はいいと、むしろ私はそういう国であってほしいと思う。現在の日本の高齢化のことであったり、国の財政赤字のことを考えたときに一つのアイデアとして、GDPやそこからで得られる税収ということを考えざるを得ないだろうなっていうのがあって、このような提言になっているということだ。諸外国と全く同じ状況にあるとは言えない。そういう厳しい選択肢の中でいかに新薬を育てていけるかという難しい議論をしなければいけなくなっているということをご理解いただけたらと思う。
遠藤座長:はい、ありがとうございます。ではデロイトさん、お願いします。
デロイトトーマツ:はい。坂巻先生ご質問ありがとうございます。最初にご質問いただきました今後ジェネリック業界がどういう形になることを想定しているかというところに関して、量的な観点と質的な観点から、ご説明させていただく。まずその量的な観点では、企業数も含めた観点というか、数としては少なくなる方向。海外でも同様の状況だと思うが、少なくなっていくというところが一つの方向性だと理解をしている。
質的な観点で言うところに関しては、これまでも議論があった。業界ビジョンというところでも語られているような、ある種大手の多品目を製造しているようなメーカーを中心として加えて、それに専業メーカーと呼ばれる特殊な抗生剤技術が必要になってくる製品ですとか、そういったものを作るような企業をそういったその役割分担のなかで全体としての後発品の提供が行われていくというようなところが将来的に目指していく方向だというふうに考えている。
そこに至る背景として、先生たちには釈迦に説法となってしまうが、ジェネリックの促進をしていく過程のなかで、できる限り多くのプレーヤーを後押ししつつ、かつその先発品、新薬メーカーも含めてジェネリックに参入していただいて、後発品の業界自体、後発品の使用促進自体を進めてきたというところの背景が質的、もしくは量的にこういった状況の背景になっていると理解をしている。
ですので、今後ある種ジェネリックとしてステージが変わってきているなかで、今後はより先ほど申し上げたように、数としては集約していく方向、役割分担としては明確にしていく方向、というのが我々がご提言させていただいている前提の業界に対する見通しになっている。
遠藤座長:はい。坂巻構成員、でよろしいですか。
坂巻構成員:個人的な見解の相違もあるかと思うが、半国営的なこういった政策で果たしてジェネリック産業が競争力を高めることができるのか、競争力とは別に値段だけの競争ではなく、製造能力とかも含めてだ。ちょっと私は異論を感じるところだ。
遠藤座長:はい、他によろしいでしょうか。初めての方をちょっと優先します。それじゃ武田さんどうぞ。
くすり未来塾・武田氏:失礼しました。坂巻さんからくすり未来塾に対してのご質問がありまして、届け出価格と言うけれども、企業はどうやってやるのかとか勝手につけるのかというような話と、そのかえって不透明性が高まるんじゃないかというご指摘がありましたけれども、基本的には企業に設計説明責任を求める仕組みだと私は理解をしておりまして、その企業に説明を求める場としてはやはり厚生労働省の中医協がずっと薬価をやっていますので少なくとも中医協に対してこの価格の根拠は会社が説明すべきだと思う。
そのうえで、最初の話に戻るが、日本の市場が国際的にオープンにするものと考え、それから各社の企業戦略を考えると、日本だけ高い値段を付けるというのは企業は説明はおそらくできないと思うので、国際的な平均価格、アメリカを除くが、それを選択する企業が多いのではないかと想定をされる。それがいまは、移転価格が不透明だとか言って叩かれているんですけれども国際価格という観点からはそんなに企業的におかしな価格にならないだろうし、それをちゃんと説明してもらえばいいんじゃないかと思う。それからリアルワールドデータで再評価をかけるというのは治験の段階でやったもの、プラスアルファーで臨床の評価を説明してもらえば、制度的には何年間か経ったら自動的に下がるということを見込んだうえで、下がるときに下げ幅を圧縮するためにデータを使ってもらうということが考えられるし、これまでの薬価制度でもそういうことが議論されてきたことではないかと思う。
それから追加で申し訳ないが、ジェネリックの話ですね。民間シンクタンクの方から国管理的な提案が出てくるのは非常に面白いなと思っているが、民間の側から見ると、やっぱり再編が進んで企業が大規模化していくというのが望ましいが、そのときにファンドなど資本が入って再編をして企業価値を上げるというのが必須になってくる。いまのジェネリック産業はいくら企業を大きくしても、何をやってもその薬価はひたすら下がるばかりだし、新製品を作っても上がらないのである意味、企業が再編して大規模化して質を上げたときに、その企業が後発品であっても自由に価格をつけることができるようにするとか、そういうことを考えないと、民間の発想としては再編が進まない。そういうことがあるんじゃないかと思いました。付け加えさせていただきました。
遠藤座長:はい、追加でありがとうございました。では先ほどお手を挙げていた順番で菅原構成員どうぞ。
菅原構成員:ありがとうございました。4社の方にご説明いただきまして、大変いろいろ新たに参考になるような資料がたくさん出てまいりまして、ありがとうございました。
まず一つ目だが、私の個人的な意見だが、これから先の見通し、医薬品市場の見通しというものについていくつか懸念が出ていたと思う。やはり医療費の中での薬剤費というのがあって薬剤費の割合が割と一定になっているから、これから先も高齢化が高進んでいくなかで医療費は当然増えるだろうという話があって、そのなかで言えば当然それをGDPを上回るような割合で医療費も、あるいは薬剤費も増えるのでは、という当然の前提のような話があるかと思う。一方で、他の国に比べて我が国は世界の中でも高齢化のフロントランナーで、すでに我々の高齢化要因と人口減少要因を複合して考えると、これはもう経済財政諮問会議で厚労省の資料として出されているが、すでに2030年から35年には医療費の増加要因として人口構造の変化は医療・介護に及ぼす影響要因がゼロになると予想が出されている。要するに、医療費の増加が止まるような要因がかなり大きくなってくる。日本医師会自身が将来的な医療事業・介護事業というデータベースを作って出していて、実際に見ていただけるが、日本医師会の地域医療情報システムを見ていただくと、もうすでに医師会自身、サプライヤー自身の推計として2025年推計、30年推計とほとんど横ばいからダウンに入っている。すなわちコストの話とは違うが、医療事業そのものが既にダウントレンドに入り始めているという現状を考えると、これまでのように一律に医療費がこれから伸びていってさらにその中での薬剤費も伸び続けるという前提も少し怪しい。
だから、私が委員を務める社会保障審議会医療保険部会でいま医療費適正化計画の次期計画を議論しているが、過去5年間の医療費の伸びは、そもそも想定している範囲に到達していない。大体予想というのは、医療費では高めに付いていて、昔よりはだいぶ予想が適正化されているが、それでもほとんど適正化計画が進まないなかでも十分達成されるような医療費の水準にしか、いまなってない。ある意味では、本当にこれから先の日本の医療の姿、あるいは薬剤費の姿をきちんと共通見解として持たなければいけない。本当にこれから先、どういった割合で薬剤費が伸びていくのかについては、きちんと事務局を含めて、皆さんとコンセンサスを得た方がいいのではないか、というのがまず第一点目だ。
個別によろしいでしょうか。まず、くすり未来塾さんに資料についてお聞きしたい。説明のなかに入っていなかったので、大変申し訳ない。流通における不採算の状況が資料の中に含まれていたと思う。これを見ると、簡単に言うと、医薬品のなかにも基礎的医薬品や安定確保医薬品、非常に多くの不採算品目があったりだとか、あるいは地域によってかなり不採算の状況にバラツキがあるというのが、明確になっていたかと思う。大変非常に貴重な、実態を示す素晴らしい資料だと思う。それを踏まえてこのような状況を改善する方策として、全体として2%の調整幅が、総額としてはまっているわけだが、これをだからどうするかという議論があるわけだが、一方で、このように不採算の状況がバラツクなかで、これに対する手当て、例えば、公定マージンのやり方とか、要するに特定品目に対して手当てをするとかというやり方があり得るものなのか。そういうことを考えられないというのか、全くそういうことは想定内に全体として?の中で調整すべきというお考えなのか、そのあたりについて、安定確保に関する考え方についてのお考えをうかがえればと思います。
それから、デロイトトーマツさんに関してだが、先ほど坂巻先生のご質問にもかかわるところだが、イノベーション評価で収載後、例えば医療機器で入っているチャレンジ申請に近いような形で薬価の再評価をしては、というようなご提案だったと思う。また、くすり未来塾さんは入れたものを事後に再評価するという形で、これはどちらかというと書きぶりからすると入ったものは全て再評価をするデフォルトで、再評価するやり方なのかなと読めたが、これデロイトトーマツさんは、基本的には希望すれば再評価ができるという仕組みを入れたい、ということなのか。まず、どういうお考えなのかという確認と、さらに再評価をした場合に当然下げるという可能性も当然考慮したうえでの制度設計なのか。これを両者に確認をさせてください。
日本医療政策機構の発表に関しては、資料の12枚目のこれからの制度を考えるにあたっては、国民や患者当事者の意識はどのような考え方か。非常に大事な話、視点だと思っていて、意識調査のなかで非常に面白いなと思ったのは4番目のイノベーションについて患者数は少ないが、重症な疾患の治療に供する医薬品医療機器の開発より、患者数が多い疾患の治療の全体的な質を向上させる医薬品医療機器の開発に期待が表明されたということだった。我が国のいまの医薬品の開発に関するインセンティブの付け方に関しまして当然、治療の選択肢がない、あるいは希少疾患やオーファンなどに開発を促すようなインセンティブをつけるような要望を出されている。
このご意見で言うと、多くの国民はそういうものもちろん大事ではあるけれども、もう少し患者数が多くて、治療の全体的な質の向上を目指すようなものを評価すべきだというものを表明されているという意見があるというなかで、これから例えば、医薬品の開発のインセンティブのつけ方について、もう少し別のやり方があるのかどうか。そのあたり、もしお考えがあれば、お聞かせいただければと思う。以上でございます。
遠藤座長:はい、ありがとうございます。それでは薬価流通政策研究所からお願いいたします。
くすり未来塾・武田氏:はい、ご質問ありがとうございます。まず、流通で不採算になっているものについての扱いということで、いままでの考え方は特定のものについてはメーカーからヒアリングを行って、引き上げの措置を講じるということだ。これが不徹底かつ不十分ということを申し上げた。それでおそらく、本当に安定供給が必要だということであれば、まずその企業の不採算品目だけではなく、それに上乗せして流通の不採算分というのをまずあげなければいけない。そのうえで、流通改革をセットで行い、国が定めた採算割れしない価格水準を下回るような品目については、基本的には受注しないということを国のガイドライン上から決める必要があると思う。
なぜそれができるのかと言われるかもしれないが、入札の場合も最低落札価格が設定をされるので、似たような構造ではないか、そこを変えないといくら下げてもまた来年から下がり始めるという、これまで何度もそういうことをやってきたので、そういうことが必要ではないか。これこそが、薬価と流通をセットで考えるということではないかと思っている。
それからもう一つ、私どもも、チャレンジ申請もちょっと念頭に置きながら考えた。基本的には企業が申請するプレミアム加算を最初の段階で認め、本当に臨床上評価されるものであったかどうかを事後的に評価をするという形が一つは考えられると思う。これは制度設計の段階でご議論していただければいいのではないかと思います。
それから聞かれていないことで、ちょっと一点だけ申し訳ございません。長期収載品を財源にできるんじゃないか、みたいな話がちょっとあったと思うが、価格で全てを調整するというのは、とても副作用が大きいので、価格を大事にしながら本当に医療保険上出せないということであれば保険から外すとか、患者負担をどうするか、とかそういう議論に踏み込まざるを得ないというふうに思っているので付け加えさせていただく。
遠藤座長:ありがとうございます。それではデロイトトーマツさんお願いいたします。
デロイトトーマツ:はい、菅原先生ご質問ありがとうございます。まず、ご質問いただいた全ての品目の薬価、希望する品目なのか、というところは今もうすでにあったかと思いますが、希望する一部の品目という形を想定している。いま現状でも、真の有用性加算というような形で上市後のエビデンスに基づいた評価というようなところは仕組みとして入っているが、その予見性をより高めていくというような部分もこの定義のなかには含まれている。
ある程度、上市の時点で今後こういうエビデンスの収集を予定していると、仮にそれがエビデンスが想定通りに取られた場合、どれぐらいの効果が見込めるのかというところ。ある程度、事前に認識を共有しておく、それによって予見性を高めるということが我々がご提案している趣旨の一つだ。
もう一点、減算もあるのかどうかというところだが、こちらも減算はあるというふうに考えている。資料10ページにも書かせていただいたが、エビデンスが予定した通りの安全性・有効性が出られるかどうかというところは結果を見てみないとわからない部分がある。その結果を踏まえて、例えば、当初何らかの形がついていた加算の部分や、キーエビデンスの提出によって付与されていた部分が減算されるということも結果によってはあり得るという考えでいる。
遠藤座長:はい、ありがとうございます。では日本医療機能政策機構、お願いいたします。
日本医療機能政策機構:はい、ありがとうございます。これは、定量的な調査と私的な調査の組み合わせの結果だが、我々、このデータを出すかどうか、非常に苦慮した。つまり、当然のことながら、ボリュームが大きい人たちに対する返答という意味では、自分がもしかしたら病気になるかもしれないような、そういうところに手厚く、これからイノベーションを起こしてほしいという答えが出てくるのも当たり前といえば当たり前で、一方で重症、もしくは重篤な疾患を経験された患者さんへのフォーカスグループインタビューを追加的に実施したところ、やはり彼らにしてみればそういった本当に命を救うようなイノベーションに寄与するものを提供してほしいというような答えがあった。我々がずっと言っている国民・患者目線での医療政策の実現というところの根本的な課題だが、国民の代表性の問題だと思っていて、ついつい我々は色々なディスカッションなかで、かなりイノベーティブな薬剤によって命を救われたそういう当事者、リーダーの方のお話を聞きがちだと思う。これ自体別に間違ったことではないと思うが、一方でその国民全体としてどういう声があるかというところも出した方がいいという下に基づいて出させていただいた。この解釈は、非常に意見が分かれるところではないかなと思っている。
遠藤座長:はい、どうもありがとうございます。それでは産業構造関係を聞きしたいと思います。では井上構成員、それから芦田構成員の順番で、またこちらに戻ってきたいと思う。
井上構成員:はい、どうもありがとうございました。大変4社の方のご報告、大変参考になりまして、勉強になりました。テーマは産業構造ということなので、2点産業構造についてご質問したいと思う。
一点目、デロイトトーマツさんへの質問だが、3つの産業構造を変えるABCというのがそのAが費目別、供給指定Bがアライアンス加算がCが安定供給支援みたいな形だと思うが、たぶん一般的に企業が統合するとが多くて自動車産業とか見ていてもやっぱり、ただこの産業で先ほどもお話があって、全部が小さくて細かく分別化していると誰かがリーダーシップを図って一定の供給要件を求めてそこで集合してくることはないのではないか、という気がしている。なかなかAの実現可能性は難しいのではないか。また、Bのアライアンス加算は企業のトランザクションコストを変えるものではないので、一般的にはあまりそうしたものがMAのインセンティブにならないのではないかという感じがしている。Cの安定供給支援をすればこれは必ず、もはや産業構造変えようなんてインセンティブがなくなる。どれを聞いても、あまり動かないんじゃないかという印象があるなかで、先ほどのAところを自然に政府が行政的に指定するのではなくて、もう少しインセンティブを与えるような施策があるのではないかと思うが、その辺はいかがか。例えば安定供給問題であれば、安定供給に向けたリクワイアメントを少し行政的に高めていくみたいな形にすると、供給できない業者は、自らそれを得るために統合相手を探すというようなことがあるのではないかと思うので、よりその方がインセンティブづけにもなるし、企業の取引コストを変えることで、統合運動が起きるような方向になるんじゃないかと思うが、その辺はいかがか。これが一つ目の質問だ。
2点目が、日本医療政策機構さんへの質問だ。14ページのバイオベンチャー育成に向けた国家戦略ということだ。バイオベンチャーはいかに生かしていくか、というのは有識者検討会でも何度か出てきているが、1番目と3番目はどちらも国を横断的な話ということで3番目の国内の製薬メーカー等の参加ということだが、2番目は海外とのアライアンス。海外を呼び、織り込んで、ということで我々も私も理工系大学でイノベーションをどう考えていくのかということを考えていくと、クラスターがあるのかどうか、ベンチャーの業界において非常に重要で、我々も何かそこでイノベーション入ろうとするとき、入ってからインサイドサークルに入らないとそもそも厳しい。特にベンチャーのところは自分たちが失敗したときに再度挑戦できるという。隣にいっぱい魅力的なベンチャーがあってそこに再就職できるような、仕組みがあるから失敗できる。失敗したら大企業にもう1回受け入れてもらいましょう、というのはなかなか夢がない。そういう意味では、ベンチャーのネットワーク、それからクラスターを作っていくというのは非常に重要で、その意味ではこうした海外を見込んできた非常に重要だと思うが、一方で海外企業にとって日本に入ってくるときのベネフィットは何なのか。「来てください」というだけで入ってきてくれるほど甘くはない。やはりそこのベネフィットはどうお考えになっているのか。バイオベンチャーを育成していく上での私の方からの質問です。やはりある程度医療、製薬そうしたところへのアクセスをかなり本格的に認めていて、そういう期待感を上げていかないと、到底少子高齢化が進んでいて一番魅力的な国と言っても、閉じていれば、入ってくるインセンティブはないと思う。その辺がどうかというのが、2つ目の質問だ。よろしくお願いいたします。
遠藤座長:はい、それではデロイトトーマツさんからお願いいたします。はい、井上先生、ご質問ありがとうございます。そうですねABCの施策が統合をより促進させるような形になっているのかどうかというところに関するご質問だというふうに理解している。おっしゃる通り、これだけで必ずしも統合が進むのかというところに関しては追加的な秘策も必要だというふうに考えている。
いまおっしゃったようなところをみますと、よりそれを促進するための施策というところで先生から例としてあげていただいた安定供給上の何らかの制限をかけるというところも一つおっしゃる通りかなと思いますが、それ以外に検討しているところとしましては、いわゆる品質面の部分で、薬事承認上、品質が満たされているということは大前提だが、GMPの適合検査等々をより厳しく行っていくというところで、そこから逸脱している企業はもはや営業を継続するができないというような部分等々によって、より統合するインセンティブを高めていくというようなところもあわせて必要になるというふうに考えている。
遠藤座長:はい、ありがとうございました。では、医療政策機構、お願いいたします。
日本医療政策機構:ありがとうございます。この点、我々ヒアリング調査を中心にフェーズを0から5に分けて検討をしている。フェーズ0ところは国等による公的な育成支援施策の状況というところでここも遅れをとっている。フェーズ1はいわゆる生態系というか、エコシステムの構築や体制整備に関する課題で、これは何か。例えば、大学間同士の連携で、例えば不動産業者同士の連携だとか、そういう同業者の連携というものがなかなか進んでいないのではないかという点。フェーズ2としては事業化前における課題として、グローバル企業が求めるニーズの把握が不足している、もしくは新規モデルへの必要性を理解しきれていないといった点も指摘をしている。フェーズ3が事業化初期VCに関する課題として、人材不足、経営人材の不足や先ほどご指摘の通り、失敗したもう1回そこにチャレンジできるとは環境整備というところが沿っていないんじゃないか。フェーズ4がVCから機関投資家に関連する課題でこれは、治験フェーズの、例えばCRO前のパフォーマンスがどういうふうにデータ集約されていくか、それをもとにCROが品質管理の取り組みができる環境を整備していくところも欠けているのではないか。最後、フェーズ5。これもご指摘の通りだが、M&Aや上場に関する課題としてマーケットの小ささ、およびそのバリエーションの小ささが非常に課題になっているのではないか、という課題もあげられています。これは、またお送りさせていただけばと思っている。
遠藤座長:井上構成員、よろしいでしょうか、いかがでしょう。
井上構成員:いまのベンチャーの育成の件だが、全部不足しているということだと、提言のどこが重要か?もう一つ定まっていないのかなというところで受け止めさせていただきます。ありがとうございます。
遠藤座長:ありがとうございました。お待たせいたしました、芦田構成員をお願いいたします。
芦田構成員:はい、ありがとうございます。4団体様、大変示唆に富むご提言、またお話いただき、ありがとうございました。新薬の導入について質問がある。くすり未来塾さんにご質問させていただく。
きょうの発表資料10ページのなかに、新薬創出等加算に関連して、と思うが、スターアップ企業を評価する仕組みに転換というお話があった。これは、ご説明の中にもあったが、海外のスタートアップが、例えばアメリカのスタートアップがアメリカで開発し承認を取得するけれども日本では開発承認を取得するということをしない。その原因の大きな要因の一つとして、日本の新薬創出等加算の企業要件があるのではないかというご説明だったと理解をしている。
私も新薬創出等加算の導入の経緯については少なからず存じ上げているので、企業要件が入っていることは理解をしているが、そもそも新薬の加算をするときに、なぜ企業要件が必要なのかというところは、違和感を覚える。むしろそういったものがない方がいいのではないか、と思っているぐらいだ。むしろ海外のスタートアップが日本で開発を促進するには、薬価で何か仕組みをつくるよりも、むしろ治験環境の整備や、薬事申請上の環境整備とか、そういったようなことも必要なのではないかと思っていたところだ。
質問だが、ここに書かれているようなスタートアップ企業を評価する仕組みに転換であるとか、ドラッグラグ解消の努力を評価すべき、というのは具体的にどのような仕組みへの転換とをお考えか?お願いします。
くすり未来塾・武田氏:ご質問、ありがとうございます。スタートアップ企業のなかでも、製品についてドラッグロス、ドラッグラグ解消に資するような製品については、この企業要件を課さないというのが一つあると思うが、そもそもおっしゃるように、一つひとつの製品について行政が判断するというのを要件化させていいのかどうか、というのがある。くすり未来塾の基本的スタンスとしては、企業要件はない方がいい、というようなスタンスだ。
遠藤座長:芦田構成員、どうぞ。よろしいですか。それでは先ほどこちら、お手あげた三浦構成員、お願いいたします。
三浦構成員:4団体の皆さん、本当にタイムリーな資料をお作りいただき、ご説明ありがとうございました。一点だけ、薬価差についてお聞きしたい。薬価差については、デロイトトーマツさんがうまくまとめていただいたように、私は基本的に小売りマージンと思っており、プロモーション費はないが、ただ在庫費用はちょっと課題かもしれないので、どうするかという話で、目安幅というのをお作りいただき、それ以外は還元というお話がありました。香取先生おっしゃるように目安幅みたいなものが残ると、現在の薬価算定方式でたぶん毎年下がるわけですから、やっぱその辺どうするかって話に関してはもう一つのご意見として、アイデアとしてありがとうございました。それで、くすり未来塾さんにお聞きしたいが、先ほど病院の話は聞いたが、薬局に関しては余剰成果に関しては大部分を国に還元という話があり、大部分と書いてあるのでちょっとは残るのか、みたいなところもある。薬価差については議論がございますという話もお話されていたので、薬局が目安幅みたいなのがあるのか、ただほとんどそうじゃなくしてやるのか、そのあたりの何かご意見をちょっとお聞かせいただけれと思います。よろしくお願いいたします。
遠藤座長:はい。では未来塾さん、お願いします。
くすり未来塾・武田氏:ありがとうございます。薬局の評価と医療機関の評価をなぜ変えるのか、と考えられる方もいらっしゃると思うが、そもそも医療機関への報酬は、治療を価値と考えて相対的に包括で払うというふうにさっき申し上げた。そのなかから薬を外出しして、単価を作っていくかというのはまた保険として制度設計的な問題としてある。薬局に関して、薬剤費を包括して薬局に払うということがあり得るかというと、やっぱりそれはちょっと考えにくいし、そんな国はない。
そうすると、どうなっているかというと、物の価格とそれから薬剤師の技術料を合わせて考える。患者に対する請求額をフリーにして安く買ったら安く患者に売る、というようなことで一物一価ではないということを認めるというパターンと、それから公定マージンを認めるけれども、交渉力で差が出るので余剰分は医療保険に返してもらうというようなクローバック方式というのが世界にはあるということだと理解をしている。
最初、くすり未来塾は、どれくらい返してもらうかということについて、実は一貫した表現を使っておりません。最初は“河畔”と書いたが、次は“大部分”と書いた。皆さんの意見がどの辺にあるのか、というのをこれから議論していただければよろしいかと思っている。
遠藤座長:はい。ありがとうございます。はい、小黒構成員、失礼しました。成川構成員が初めてなので成川構成員、お願いいたします。
成川構成員:ありがとうございます。時間が押しているので、簡単に一つだけ質問させてください。4団体の皆さん、種々の分析、ご提言ありがとうございました。大変参考なりました。あまり議論になっていなかった、新薬の値付けのところで、特に薬価流通政策研究会、INESの方々に質問を一つだけしたい。要するに第3のルールをご提案いただいたと理解している。ふわっとだが僕も理解できたが、そこの理解を深めたいと思っていて、ひとつは内部的にこういう検討されたときに要するにどういう品目を念頭に議論をされたのか。言い方を変えると、数年に一回くらい出てくればいい品目なのか、あるいは1年に数品目とか、もっと出てくるようなものなのか。その辺の感覚を教えていただきたいのが一つだ。
もう一つは、色々な薬の持つ価値を価格に反映すべき、というのは私も同感だ。色々な方法を考えていきたいと思っているが、その価値をどう量るかというところだ。たとえ量れたとしても、量った価値をどう金銭に換算するか。そう容易ではないという感覚を持っていて、しかもそれを企業に立証責任を負わせるとなると、一体どうしたらいいんだろう、というのが質問だ。ある薬が出て医療費と介護費が下がるとか、あるいは労働生産性が上がるとかというのはすごく良いことで、それを何かしら価格に反映したいという気持ちはあるが、実際そういうことがわかるのは、世に出てからだいぶ経ってから後の話で、最初の値付けにそれをやろうと思うとおそらくモデルに基づいてシミュレーションするとか、それぐらいしか想定できないというのが一つだ。
もう一つは、アメリカは知らないが、特にヨーロッパの国々で一体どうやって価格をつけているかというと、僕の理解ではほとんどのものが類似の薬とかあるいはそれもっと広げて類似の治療法とか、あるいはそれを組み合わせたりして、それを積み上げて、あとは外国の価格を参考にしてベースの価格を作り、そこに多面的な評価の指標を入れて少し上げ下げをするとか、そんな理解をしている。そもそも例えばQOLの向上とか、介護費が減るとかそういったものを積み上げて本当に価格のベースが積み上がるのかどうかというのが、ちょっとまだわかっていない。そのあたり少し何か具体的なお考えを教えていただけないかというのが質問だ。
遠藤座長:2つの組織、両方にお聞きします。まず、未来塾からお願いいたします。
くすり未来塾・武田氏:はい、ありがとうございます。第3のルールを作って、企業から提案してもらう、企業の説明責任というのを今まで一切なかったので、企業がちゃんと価格を説明するという仕組みに転換したらいいだろう、ということで、そこから先の細かい制度設計をしているわけではありませんが、基本的な考え方としては、今おっしゃったような、欧米、特にヨーロッパにおける価格の値づけがそうやってなされているということが実態であろうと思うし、日本においてもそういう説明がされるんだろうということが一番想定をされる。
そのうえで、どう計算するのかがわからないという話があったが、どっちが先かという話でもあるが、医療経済評価を中医協で議論したときに、企業が要求した価値のうち、いくつかは採用されていない。いまおっしゃったような介護や労働生産性とか計算が難しいという話だが、入り口で否定すると、それにチャレンジする人も出てこないし、学者も育たないということで、日本はずっと経済性、バリューを採用してこなかったので、日本では決定的に研究者が少ないということがあると思う。私は、そこに突破口を開けるべきだと思っているので、先ほどの加算の話もあったが、“国が決めてあんたがこの品目作くれたらいくら加算する”という不健全なルールではなく、チャレンジする人に対して公平なルールを提供して成功した人にはリワードを上げるというのが本来の産業政策だと思う。
後発品企業についても、チャレンジして新しい品目を作ったならば、いまのルールのように全ての後発品を並べて一番安い値段しか認めないというのではなく、ある程度自由薬価を認めていく余地を認めないと、チャレンジする人間が出てこない。チャレンジする人間が出てこないと、投資する人が出てこない。産業の再編も進まないということだと思う。私はそうやって広い意味で、民間がうまく回るような産業政策を念頭に置きながら、薬価政策を議論してほしいと思っている。
INES・梅田氏:はい。ありがとうございます。どのような細かいルールなり、あるいは要素を並べても、このやり方でやればどれでもうまくつくということはなかなか難しいと思う。当然、ヨーロッパ等でも色々と苦労された結果、先生のおっしゃるようなことに実はなっているのではないかというところもあると思う。
日本では類似の製品があるにはあるが、それはずいぶん古い製品で十分安くなっていると、抗生物質なんかではそういうことがあってなかなか開発もしないということにもなる。今度、画期的なものとなると一体何と何を比べますか、と。それに代わる薬剤がなければ、それに代わるその治療法案、どのようなものがあってというようなこととか、そういったことになる。これならば、という考え方が数式的なものができて、それでもって色々な過去のものをいくつか評価してみた、ということにはなっていない。
まずは、要素としてあげられるようなところはリストして、企業が自主的に価格をこれぐらいの価格であるということを主張する際にどういった要素を入れていったらいいだろうというようなことっていうのをやっている。これまでの大きな製品について、もし実際に色々な要素、他の要素、いまの薬価ルールにない要素でやった場合にどうなるかということはアカデミアの専門の先生方が研究なさっていると思うが、そこでも必ずしも一方的にこのやり方であればいい値段が付く、とかこのやり方であれば厳しい値段が付く、とかどれをやっても一方的な向きが定まってくるものでもないと思う。一番大事なことは、やはり企業が責任を持って、そのバリューを証明・説明をし、価格が当局との議論のなかでもちろん決まる。そのときに海外の価格等はもちろん参考にする。ただし、当然ながら治験期間中の限られた症例から今度実際に使われてみて、一定の期間を経て臨床の場で使われたなかでの評価が定まってくれば、そこで一回見直しをするというのは当然あるんだろうなというようなこと等は、内輪で議論をしておりました。
遠藤座長:よろしいですか。それでは、だいぶ時間も押しております。小黒構成員、お願い致します。
小黒構成員:すいません、時間がだいぶ迫っていまので、簡潔に。一つコメントと、あと一つ質問を新時代戦略研究所の梅田理事長にしたいと思う。最初にコメントだが、GDPが今後あんまり伸びていかないだろうという風なあれがあったが、アメリカの金利と日本の金利、アメリカは11月の選挙が終わった後に、いまかなり利上げしているが、その関係で少し景気が落ち込んだとしても金利差が残る。そう考えると、足下で介入の動きがあり、相当安定化しているが、円安はあまり楽観視しない方がいいだろうというふうに思う。その場合、いままではあまり名目GDPに対しての影響はなかったが、CPI(消費者物価指数)とGDPデフレーターはあり変わらない動きをするので、これを取り込んだときにどういうふうになるのかとよく考えた方がいい。薬価は下がっていくだけなので、その関係で新時代戦略研究所の31ページの資料は、私はやはりすごく重要だと思っている。
私が元々財務省にいたから、というのもあるが、財務省は非常に厳しい役所なので、そう簡単には何でも認めるものでもない。そのなかで、例えばこの新時代戦略研究所の提案を述べているということは、それなりの覚悟のなかで意思決定して出しているということにたぶんなるだろうと思う。ただちょっと若干気になるのが、やはり先ほど議論に出てこなかったが、下側のところに下線部で「事前の財政規律の導入とその実効性を担保する具体的な仕組み作りが実現しない場合には市場拡大再算定をはじめする現行の薬価改定ルールに基づき、適正化の徹底を図っていくしかない」とはっきり書いてあるわけだ。先ほどの物価の上昇も関係するが、もしその日銀のYCC(長短金利操作、イールドカーブコントロール)が突破されれば、明らかにその国債のコストに跳ね返ってくる。その状況下では、おそらく社会保障ももはや聖域ではない形になる可能性は、これは脅しではないですが、可能性はあると思う。そういうことを考えて、財務省が相当厳しい形で今後臨んでくるというようなスタンスを出しているんだと思う。
他方、そうではなくてその上の上段の方ではスライドになっているが、ある程度経済成長率に沿って伸ばすということについてはある程度理解を示している。下の方にも、「安定的に保障された医薬品市場の伸びのなかでこそ」とはっきり書いてあるわけだ。私はこれ非常に重要と思っている。私も財務省にいたが、別に何でもかんでもカットすればいいと思っているわけではない。一定程度、投資とみなして予算を投下していくことも重要だと思っている。ただ、現下の厳しい財政状況のなかで下みたいな話が出ているわけだ。今我々は色々議論しているが、いまの状況の現状が進んだ果て、一度製薬協の方にも来ていただいて話を聞いたが、非常に厳しい状態になるのではないか。ファイザーの社長もされていたので、簡潔にご意見をいただけないか。
遠藤座長:どなたに、ですか?
小黒構成員:梅田理事長。
INES・梅田氏:はい、ありがとうございます。ここに書かれていることは、この検討会を通じて、私の耳に伝わってくるのは、やはり医薬品市場は大事であって、一定程度の成長というのはやはりあるべきであるということについて、あまり否定的な意見はないように思う。それをどう実現していくのか、どの程度のレベルであったらいいのか、ということだと思うが、ここに書かれていることは、そのことについて一定程度成長するのはいいが、どのくらいなんだということの予見性がなかったら、いままでの厳しいミクロ的な絞り込みのルールというのは、さらに実行していくしかないというのは非常に厳しい決意だと感じる。
一方で、この議論をきちっとして、先ほど坂巻先生がおっしゃられたように、フランスでもヨーロッパのどの国でも予算統制的な全体的な議論はあると。日本において、ミクロのところのこれをやめてください、これをもっとやるぞ、という議論でも、全体感はどれぐらいの規模感なのか、という議論なしに来ていることが、予見性がないと言われているということに対して、企業側も、あるいは業界団体も受け止めて、自分たちの提言を出していく必要があると思っている。その規模がどれぐらいか、ということは、INESの提言的には何度も何度もGDPと言っているが、あくまで“鍋に蓋をする”ということではなくて、鍋を何とか支えたい、と。鍋の若干の成長を担保したいというのが提言の趣旨であるということ最後にちょっと申し述べさせていただきたいと思う。
遠藤座長:はい、ありがとうございます。大体、よろしゅうございますか。だいぶ時間もオーバーしておりますので。では、本日はこのぐらいにさせていただきたいと思います。4団体の皆さん、本当にありがとうございました。大変これからの議論に参考になるお話を承りました。皆様にしてみれば、頼まれて発表したら、やたらと厳しい集中砲火を受けて、何しろこちらが論客多いものですから、大変勉強になりました。少なくとも私はコメントするのをやめようというスタンスでやりましたので、今後ともよろしくお願いいたします。それではこれをもちまして終了したいと思います。