石川県は9月２日、辰巳化学（石川県金沢市）に対し、承認書と異なる製造を行ったとして薬機法に基づく業務改善命令を下した。処分内容は医薬品製造業（松任第一工場）、第一種医薬品製造販売業、第二種医薬品製造販売業の許可に係る製造業務及び製造販売業務に対する業務改善を命ずるもの。同社に対し、法令遵守体制の抜本的な改革、組織体制の構築、是正措置および再発防止策に係る改善計画の策定などを1か月以内に提出するよう求めた。辰巳化学は同日、「本行政処分を重く受け止め、法令遵守、是正措置の徹底、再発防止策を含めた改善計画の策定・実施を通じ、皆様からの信頼回復に誠心誠意努めて参ります」とのコメントを発表した。

◎辰巳化学が製造受託する製品で品質問題が発生　その後の立ち入り調査で問題発覚

処分までの経緯は、辰巳化学が製造受託する製品で品質問題が発生し、その調査の過程で一部試験手順について製造販売承認書に記載のある試験手順との相違が判明する。同社は2022年1月11日に石川県に報告。これを受け石川県は1月14日、20日、27日、2月16日、3月31日に立入り検査を実施した。この立入り検査で石川県は同社の全製造品について製造方法、試験手順が製造販売承認書記載と相違がないかを再度確認し、その全容を明らかにするよう指導。その後、複数製品で製造方法や試験手順の一部が製造販売承認書に記載のある手順と異なることが確認され、今回の処分に至った。

◎製造手順等からの逸脱が生じた場合に所用の措置を講じず

今回の処分理由は、同社製造所で承認書と異なる方法により製造および試験を行っていたほか、製品等のロットごとの試験検査に係る業務を適切に実施しなかったこと。さらに、製造・品質関連業務を適正・円滑に実施するための能力を持った責任者を適切に置いておらず、製造手順等について製品の品質または承認事項に影響を及ぼす恐れのある変更を行う場合において、必要な取り組みを適切に実施しなかったことも問題視され、結果的に製造手順等からの逸脱が生じた場合において、所用の措置を講じていなかったことも判明した。

第一種・第二種医薬品製造販売業についても、同社が製造販売する医薬品について、承認事項と製造実態が異なるにもかかわらず、必要な薬事手続きを行わなかったことも処分理由にあげている。

◎辰巳化学「信頼回復に向けて誠心誠意努めて参ります」とコメント　流通製品は自主回収せず

辰巳化学は今回の行政処分を受け、「二度と同様の事態を引き起こさぬよう関連法令の遵守を徹底し、当局の指示に従い相違の解消に向けて適切な対応を進め、確かな品質の製品を供給することで、患者様とそのご家族様ひいては社会からの信頼回復に向けて誠心誠意努めて参ります」とコメントした。なお、すでに流通している製品については、違反内容が有効性・安全性に対して影響を及ぼさないと考えており、現時点で自主回収等の実施予定はないとした。