MRフォーラム2022 MRと医療者の会話のキャッチボールこそが醍醐味だ 価値向上は「対面」にあり
公開日時 2022/08/25 04:52
MR認定センター主催の「MRフォーラム2022―MRの存在価値を高めるために」が8月24日に開催され、医師、薬剤師と2人の現役MRを交えてディスカッションを行った。MR実態調査から「MR面会に明確な価値あり」との結果が示されたことに、現役MRとして登壇した武田薬品の重政仁美(神経精神疾患事業部 営業本部九州沖縄リージョン佐賀長崎エリア精神担当)さんは、「素直に仕事に対するやりがいを感じた。先生方に価値ある情報が届くことで、その先の患者さんに貢献できている結果だと実感した」と強調した。住友ファーマのMRである佐々木茜(横浜CNS第1営業所主事補)さんは、「率直に嬉しい。日ごろの情報提供の中で会話のキャッチボールができるように情報共有できる活動をこれからも継続する必要があると感じた」と語ってくれた。
◎東京医大病院・平山教授「会話のキャッチボールで認識が深まることが醍醐味だ」
この日は、MR認定センターが行ったMR実態調査の結果を踏まえて、医療者と現役MRとの間でディスカッションが行われた。医師の立場で登壇した東京医科大学病院総合診療科の平山陽示臨床教授は、MRとの「価値ある面会」について、「会話のキャッチボールで認識が深まることが醍醐味だ」と強調した。コロナ禍でインターネットを活用した医薬品情報の収集が拡大していると見通しながらも、「ネット情報は一方的」と指摘。「実際にMRとの面会の醍醐味は短時間で為になったと感じること。逆に、醍醐味を感じないのは、とかく一方的に(MRが)話すこと。新しいエビデンスについて時間が短いからといって一方的に話をされると“分かった!分かった!”ということになってしまう」との見解を示した。
◎帝京大・安野主任教授「対面で情報共有した方が(情報の)価値が上がる」
薬剤師の立場で登壇した帝京大学薬学部病院薬学研究室の安野伸浩主任教授は、「薬学教育の場においても同じような結果が出ている。コロナ禍でのWeb授業は一方的で、あまり理解度が良くないということもある」と指摘する。その上で、「MRとは対面で細かいことまで教えてもらう方がいい。対面で情報共有した方が(情報の)価値が上がると思っている」と語ってくれた。
安野主任教授はまた、「他剤との差別化や“+α”の情報がはいっているからこそ価値のある情報提供になるのだと思う」と述べ、「例えば粉砕情報など添付文書に載っていない情報など細かな情報の起点としてMRとの対面での価値があるのではないかと思っている」と強調した。
◎武田薬品・重政さん「それぞれの価値観など、必要とされる情報は一人ひとり違う」
こうした医療者側からの発言に対し、武田薬品のMRである重政さんは、「医師それぞれの価値観など、必要とされている情報は一人ひとり違うと思う。これまでどんな面談をして、その先生がどんなことを考えているのかを過去からずっと考えながら情報提供していく流れが大切になるのではないか」と発言。住友ファーマの佐々木さんは、「先生が大事と思う情報提供と、知りたいと思う情報提供は違うと思う。いきなり情報提供に入るのではなく、医師が直前に診ていた患者さんの状態や診療の状況など、まずどの情報を知りたいのかを対話の中で探り、お伝えすることが大切ではないかと考えている」と語った。
◎住友ファーマ・佐々木さん「処方にあたっての懸念点、背景などを理解して提案する」
MR実態調査では、処方未経験の薬剤について医師や薬剤師が「MRから得たい情報」の第1位が製品の基本情報に関するものだった。このテーマについて武田薬品の重政さんは、「製品の基本情報でも医療関係者が添付文書をみて分かることも適切だが、やはりその情報を深く理解いただくことが大切。深く理解いただくことで、先生方の中に残っていくと感じている」と発言。「例えば用法用量を設定した試験の根拠が資材になっていることもあるので、それを紹介して理解を深めることもできる。副作用も一覧をただ紹介するだけでなく、市販後調査の結果が公開された時には、それを多用して掲載されている症例情報なども参考にして頂きながら安全性に関する注意喚起も行うように心掛けている」と語ってくれた。
住友ファーマの佐々木さんは、「処方経験が無い薬剤ということで、処方するにあたって何かしらの懸念点が医師、薬剤師にあると思う。このため、何を処方時に注意されているかなど背景をお聞きするなかで、副作用の経験によって患者さんが困られたケースがあったかどうかのエピソードをお聞きしながら副作用について、発現頻度をお伝えするように心がけている」と話した。
◎医師や薬剤師など医療者とパートナーになるための心構え
医師や薬剤師など医療者とパートナーになるための心構えについても話題が及んだ。武田薬品の重政さんは、「他社製品の情報にMRが触れることはできないが、1人の患者さんの背景を聞きながら自社製品の情報を提供することはできると考えている。MRが存在価値を高めるためにはRMPを含めて、様々な状況に対応できるように自社製品の知識を高めることが必要になるのではないか」と述べた。
住友ファーマの佐々木さんは、「自社医薬品の情報提供しかできないが、もし患者さんに副作用を含めて何かあれば、別の薬剤を推奨することはできるのではないか。他社製品の情報など足りない情報もあるが、訪問する病院に応じ、そこにどんな患者がいて、どんな情報を望んでいるかを事前に把握しておきながら、訪問時には迅速に正確にお伝えするようにしたいと思う」と語った。