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岡山大・中山教授 70歳以上高齢者の「1割」新型コロナワクチン接種後に抗体価上がらず 第7波に警鐘

公開日時 2022/08/01 04:51
岡山大学は7月29日、新型コロナワクチンを追加接種しても中和抗体の産生が全く誘導されない、あるいは殆ど誘導されない70歳以上高齢者が1割程度存在するとの研究結果を発表した。岡山大学研究推進機構医療系本部の中山雅敬教授は本誌取材に応じ、「高齢者施設でのクラスターは、今後コロナ対策を考えた上で極めて重要」と指摘し、「第7波」で急増するコロナ感染者への対応に警鐘を鳴らした。また、「ワクチン接種後に抗体価の上がらない入所者をクラスター発生時の際の積極的治療対象者としてトリアージしておくことが必要だ」と強調した。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)総合内科学講座の大塚文男教授、萩谷英大准教授、岡山大学研究推進機構医療系本部の中山雅敬教授らのグループは、医療従事者、特養・老健施設入所者、職域接種対象者の合計約1900人の抗体価を測定したもの。抗体価測定には免疫蛍光測定装置Mokosensor Q100を利用し、指先穿刺による全血で抗体価を評価した。

◎抗体価のレスポンスのない被験者が高齢者施設入所者で「1割程度」いる

その結果、大半の被験者の抗体価がワクチン3回目の接種後直ちに上昇したが、70歳以上高齢者には抗体価のレスポンスのない被験者が高齢者施設入所者で1割程度いることが明らかになった。一方、医療従事者にはレスポンスが弱い人は確認されなかった。さらにワクチン3回目の接種前後でクラスターが起きた施設(入所者100人、感染者80人、入院20人、死亡10人)について、クラスター発生およそ1カ月後に抗体価を測定したところ、中等症・重症化を免れた高齢者の中に、抗体価のレスポンスがない方は一人も確認されなかった。

◎クラスター発生時の積極的治療対象者としてトリアージしておくことが可能に


中山教授は、ワクチン接種2か月後を目安に抗体価を測定すると、ワクチンにレスポンスのない高齢者を炙り出すことが可能になると指摘。抗体価のあがらない高齢者をクラスター発生時の積極的治療対象者としてトリアージしておくことが可能になると強調した。また、こうした対応で、「早期の治療を行い、長期入院や死亡者数の増加を防ぎ、医療資源の有効活用につなげることができるとの見解を示した。さらに、今回の研究で、抗体価測定に指先穿刺を用いたことに触れ、「認知の下がっている高齢者が多い施設においては、静脈血を採血しての抗体価測定は現実的ではない」とも述べ、「微量の指先全血から抗体価を測定することによって比較的簡便に入所者の抗体価測定が可能なことを示した」と強調した。

◎今後は糖尿病やリウマチ患者の抗体価の測定を進める


今後の研究について中山教授は、糖尿病やリウマチ患者の抗体価の測定を進めるほか、ワクチン接種後のノンレスポンダーの血液検査や尿検査の結果を収集し、mRNAワクチンに対するレスポンスを妨げるファクターの同定を行う考えを明らかにした。

なお、同研究は三菱総合研究所による内閣官房「ポストコロナ時代の実現に向けた主要技術の実証・導入に向けた調査研究業務」の一環として行われた「ポストコロナ時代の実現に向けた主要技術の実証・導入に係る事業企画」のサポートを得て実施した。研究成果は英国感染症協会の学術雑誌「Journal of Infection」(7月11日)に掲載されている。
 
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